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『ハムレット』
“Hamlet”



《あらすじ》

 先王が死に、その死後まもなく弟のクローディアスが先王の王妃を娶り、王として治めるデンマーク。そのデンマーク、エルシノア城に先王の亡霊が現れ、王子ハムレットに自らはクローディアスの謀略によって毒殺された旨をつげ、復讐を誓わせる。
 それを受け、ハムレットは狂気を装い、ことの正否を見定めにかかる。旅芸人に先王暗殺に酷似する戯曲「ゴーサンゴー殺し」の芝居を演じさせ、それを見たクローディアスの様子から、その犯行を確信する。ただしそこにいたるハムレットの狂気(あるいは狂気の装い)は、後に恋人オフィーリアを罪深い自殺に追い込む。
 犯行が明るみに出始めた王は、ハムレットを亡き者にすべく、ハムレットを殺す依頼を記した親書をハムレットに持たせて、イングランドに向かわせる。途中、海賊に襲来させて拉致されるも、ハムレットの境遇に同情した海賊により、デンマーク再上陸。
 それを知ったクローディアスは、自殺したオフィーリアの兄レアティーズの復讐心を利用して、剣の試合と見せかけて再びハムレット殺害を計画。その最中、毒の剣でハムレットもレアティーズも傷つき、王妃が自殺する中ですべてが明らかになり、ハムレットの手でクローディアスは殺される。そして、直後、ハムレットも毒により息絶える。


《感想》

「近代」の物語ですね。
 これはまさに、人類がはじめて生み出した、近代的自我の物語でしょう。
 それは、ハムレットの自我肥大であるいう側面もあるのでしょうが、その反面、近代個人主義社会に生きる我々は、好むと好まざるとにかかわらず、自我肥大を構造的に余儀なくされているのも事実です。そういう時代の人々にとって、ハムレットの存在は他人事ではないでしょう。むしろ、だからこそハムレットが名作として燦然と輝いているということでしょうが。
 自我と世界との関係をめぐる不機嫌な関係。このハムレットの煩悶と潔癖は、思春期の潔癖のようでもあり、われわれが日常の中で目をつぶっている本質でもあるような気がします。
 自分自身の存在を、自分自身で保障しなければならない過酷な現代社会において、ハムレットの物語を知っているというのは、生きる力になると思います。ハムレットの自我と世界をめぐる煩悶は、子どもたちにしても、いずれ直面する問題なのですから。

 ストーリー自体は、確かな骨太さがあります。幕が上がれば物語の力が見るもの聞くものをストーリーの最後まで連れて行ってくれるでしょう。
 さらに、多様な登場人物、はりめぐらされた複線、名ゼリフの数々、魅力的な登場人物、すばらしいと思います。個人的には、シェイクスピアの作品の中で一番好きです。というか、私が好きな戯曲ベスト3に入ります(ちなみに残りの2つは、「ファウスト」と「ゴドーを待ちながら」)。
 子どもたちに言わせて見たいセリフも満載です。
 例えば・・・・・・
「デンマークは牢獄だ」
「おれはたとえクルミの殻に閉じ込められようと、無限の宇宙を支配できる王者だと思い込める男だ」
 そして有名すぎる「To be, or not to be, that is the question.」
 特にこの「To be, or not to be, that is the question.」については、どうとらえるかは考えどころだと思います。ちなみに個人的には、このセリフの解釈としては、トム・ストッパードの「ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ(映画版)」の解釈が一番しっくりきます。どんな感じかというと、ハムレットが霊廟にひざまずき、ほとんど音にならないような声で口が動く。
 他にも、墓場のシーンで道化の頭蓋骨に話しかける「哀れなものだなヨリック! ・・・・・・」で始まるセリフもなかなか味があります。道化の表情も死ねば消えてしまう。世界を畏怖せしめたシーザーも、死ねば土にかえって壁土や酒樽の栓になりかねない、という無常観はたまりません。
そして、この有名なセリフ「A little more than kin, and less than kind!」も、ハムレットですね。

 劇中劇、心理劇、アクション、すべてがきわどく配置されたハムレットは、名作です。
私は、大好き。


《こぼればなし》

 ポローニアス(内大臣)のセリフで、大学の頃に芝居をやっていてシーザーの役を演じたと、いうくだりがあります。これ、おそらく楽屋オチですね。
 シェイクスピアの劇団が前年に上演した芝居が「ジュリアス・シーザー」であり、そのときシーザーを演じた俳優が、ポローニアスを演じたのでしょう。まさに、ポローニアスはシーザーの役を演じたことがあるのです。
 さらにおそらく、ハムレット役の俳優は「ジュリアス・シーザー」では、ブルータスを演じたのでしょう。ポローニアスはハムレットによって剣で殺されます。つまり、シーザー=ポローニアス役の俳優は、2作品連続でブルータス=ハムレット役の俳優に殺されるという繰り返しがおこるという寸法。
 客は、ウケたんじゃないかと思います。


《勝手に参考作品》

『ローゼンクランツとギルデンスターンは死んだ』トム・ストッパード(舞台・戯曲・映画)
 これは、ハムレットの端役のローゼンクランツとギルデンスターンを主人公にした不条理劇。映画では、ゲイリー・オールドマンとティム・ロスが主演。自我と世界の関係をはかり続けるハムレットに対し、世界の中で自我をつかむことの不可能性を主題にしているような気がします。定まった運命の中で、その運命すらつかむことはできない……。いずれにしても、ハムレットを知らないと何一つ理解できないお話なので、ご注意を。
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