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追悼 マーシャ・ブラウン We still LOVE YOU. かくも永き子どもたちへの誠実 05月15日 (金)
追悼 マーシャ・ブラウン
We do still Love You, Marcia.
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ぼくたちが愛し続けてきたすばらしい絵本の作り手、
マーシャ・ブラウンが亡くなってはや2週間が経った。

彼女の年齢を考えると、いつかはその日が、
しかもそう遠くない時期に来るとわかっていたつもりだ。
だが、彼女の絵本が時を超えて常に瑞々しく力強いように、
その作者もまた永遠の命をもっていると、ぼくたちは錯覚していた。

以下にアメリカでのブラウンの訃報の冒頭を引用する。
Author-illustrator Marcia Brown, the much-lauded recipient of three Caldecott Medals and six Caldecott Honors, among other accolades, died on April 28 at her home in Laguna Hills, Calif., following complications of congestive heart failure. She was 96.

She wasという過去形がかなしい。

なお、出典のURLも掲載しておく。
http://www.publishersweekly.com/pw/by-topic/childrens/childrens-authors/article/66540-obituary-marcia-brown.html

ブラウンはかなり最近まで、絵本の読みがたりを図書館などで行なっていた。
ブラウンの原点は、若き日に勤務したニューヨーク公共図書館で、
絵本に目を輝かせて夢中になる子どもたちとの触れ合いであり、
その感動を彼女は終生たいせつにしたのだ。

ブラウンの絵本のすばらしさは、ぼくなどが語るのはおこがましいが、
なによりrespectされるべきは、彼女が常に子どもたちに対して誠実であり、
作品を通して子ども一人ひとりを
個々に尊厳をもつ人格と捉えて向き合ったことと、
彼女自身がそうした作品を絵本という媒体によって
多くの子どもたちに届けられることを無上の喜びとしており、
その喜びがどの作品からも溢れてくることだ。

ブラウンはアメリカの年間最優秀絵本に贈られるコールデコット賞を3度、
さらに同賞次点にあたるオーナーブック賞を6度受賞している。
それだけ永年にわたりクオリティの高い絵本を生み出してきた
情熱と体力と精神力は、
綺羅、星のごとく(綺羅星のごとくは誤り)ならぶ
世界のすぐれた絵本作家のなかでも飛び抜けている。

しかも彼女の絵本は、より多くの子どもたちが手に入れられるように、
4色や6色印刷によるフルカラー作品よりも、
2色印刷によるsoftcoverでコストを抑えたものが多い。
それが貧弱さやチープさにはならず、
豊かで深い作品となっているのもすごい。

ケーキでいえば有名なpâtissierがこさえたワンカット500円や600円以上もする
セブ御用達のようなものではなく、
おやつを待ちかねた子どもが日本的にいえば100円玉ひとつ握りしめて、
おばちゃんちょうだいと駆けてくる店んある、
スポンジに生クリームと小さなイチゴだけが乗った、
でも健康な材料と豊かな栄養のある(もちろん美味な)ケーキを作ることに
ブラウンは全ての技術と魂をこめたのだ。
なぜなら、
絵本が子どもたちにとってなくてはならない心の栄養分であることを、
図書館での体験から信念としていたからだ。

ブラウンはまた作品制作にあたっては入念な調査と研究を行っている。
"Stone Soup"では実際にフランスでスケッチ旅行をしているし、
『3びきのやぎのがらがらどん』では、
表紙にクレジットされているアスビヨルンセンとモーの
民話をはじめとする北欧の神話や伝説をかなり学んだ。
ブラウンはそうした下地の上に
彼女自身のメッセージやファンタジィをこめたのだ。

ブラウンの絵はまた、入念なスケッチやデッサンに裏打ちされた
揺るぎない造形の確かさがあり、
躍動感と強さに保証されたみせかけではないやさしさがある。
それは子どもの心に届くための本質的要件に他ならない。
ブラウンの絵はさらに音楽的であり、
またときとしてことばよりも雄弁である。
字がまだ十分に読めない年代や状況の子どもでも、
音声言語を理解あるいは聴くことができない子どもにも
彼女の絵本は届く。

一例をあげると、『3びきのやぎのがらがらどん』を訳した
故瀬田貞二先生は、この絵本を構成する3色について、
「茶はトロルや崖などの脅威を、コバルトブルーは勇気や挑戦、
そして黄色は平和とやすらぎを高らかに歌っている」と、
その色彩による表現性と音楽性について書かれている。

ブラウンの絵本は、絵もさることながら文、
すなわちテキストも魅力である。
平明でリズムがあり、そして美しく、
もちろん「子どもむけ」というおもねたところがない。
こうしたテキストからもブラウンの姿勢が伝わってくる。
前述のアメリカでの訃報が告げているように
ブラウンはAuthor-illustratorなのだ。
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最後に、ブラウンのデビュー作『The Little Carousel』(1946)が
この6月に、こみやゆう訳で『ちいさなメリーゴーランド』(瑞雲舎 2015/6/20)として発行される。
この出版社宛にブラウンが亡くなる数日前に、
ブラウン自身から手紙が届き、
それにははじめて自分の作品が出版されたときの
喜びの想い出が書かれていたという。

ブラウンとあえて敬称をつけずに書いたが、
ラストは図々しく親しみをこめていおう。
ありがとうマーシャ!
あなたの絵本はやっぱり不滅です。
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