幼児教育・英語教室のラボ・パーティ
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はげしい葉月に/やさしくたくましい人になるために夏はある 07月31日 (金)
ghko
先週の日曜日、7月26日にひさしぶりにICUにいった。
春の桜隧道は緑のトンネルにかわり
まぶしい光の奥で教会がゆれているようだった。
この日は一橋大学(1部校!)との練習試合で
激しい運動にには不適切でもあったが
十分な水分補給のタイムアウトをとること
ハーフタイムをたっぷりとり、
試合自体も短めにすることで無事にゲームができた。
10時試合開始なので9時10分には到着したのだが
その20分後にすぐ近くの調布飛行場ら飛び立った小型機が
離陸直後に民家に墜落するという痛ましい事故があった。
ぼく自身も2013年にこの飛行場から飛び
空撮をしたのでひとごとではない。

謹んで事故で亡くなられた3名の方のご冥福を祈念する。

三澤制作所のラボ・カレンダーをめくる。

はげしくも葉月である。
燃えるような暑さはなかなか堪え難いが
この季節は若い命が大きく力をつけ
全方向に成長する。
そのエネルギーの輻射熱で高温なのだと思いたい。
キャンプ、国際交流、受け入れ。
それぞれは今はまだ小さな物語かもしれない。
だが、やがては世界へとつながっていく。

世界のあらゆるできごとに興味と愛情をもち、
自分と異なるものに耳を傾け
まなざしをむけ、心をよせ
掌(たなごころ)をあわせることができる
やさしくてたくましい人になって
諍いなき世界を築く力を身につけていくはずだ。
夏はそのための心の筋トレシーズンだ。

昨夜、帰宅するとエアコンがタイマー作動しておらず
(単に設定し忘れただけ)
どっと汗を吹きつつ、カレンダーがかけてある
三澤制作所事務室のあかりをつけた。
この部屋はもともと空調がないので
大急ぎで写真を撮り、
予備のカレンダーをもって
涼しい部屋に移動してから
じっくりと眺めた。
momo
絵はインドの民話、”Rum Pum Pum”に
題材をもとめたもの。
描いてくれのは藤・惺也くん(小4/八千代市・角P)だ。

なんといっても、もろにガンをとばしている
クロドリ(クロウタドリ)の目つきの迫力がすごい。
それはだれしも気がつくことだと思う。

配偶者を権力者に誤解で拉致されるという
不条理のきわみに
怒りにもえて武装したクロドリ。
この目つきの鋭さは尋常ではない。
もちろん、そういっては失礼だが
偶然こう見える結果になったのかもしれない。
子どもたちの絵には
そうした「たくまずしてそうなる要素」が常にある。

だが、やはりこの物語を聴いて聴いて聴いて
クロドリに心を寄せていなければ
この目にはならないと思う。
惺也くんと、”Rum Pum Pum”の関係をうかがってみだい。

目の話はまた後でするとして、
ぼくはこの絵の色みがものすごく気に入った。
クロドリの深いセピア、
クルミのからのかぶとと嘴の「いい感じで抜けたオレンジ」。
また”Rum Pum Pum”の音源でもあるカエルの皮の
あざやかなきみどり。

どれも濁らずすっきりしていておしゃれだ。
原作絵本の鮮やかな色みとは別の個性が出ている。
すごいなあ。

ふつうこれだけ濃いセピアを、これだけ広く使うと
絵はどうしても暗く沈んでしまうのだが
以下に列記するすんばらしい技術で
この絵をすんばらしいものにしている。

・前述したように色がスカッと抜けていること
・クロドリのフォルムが力強くかつ意志が漲り、動きがあること
・背景の水も外側にむかって
 明るくグラデーションのように諧調をつけていること
・水の流れや魚たちの動きもリズムをつくっていること

で、いま気づいたのだが、
尻尾や翼の先のパープルもかなりおしゃれで、
クロドリの身体、太鼓やかぶとなどと
とてもいい関係をつくっている。

穿った見方かもしれないが
惺也くんのなかでこの物語が単なる復讐譚におわらす
もう少し深いものにふくらんでいるために
おしゃれでかつ力強い作品になっている気がしてならない。
だから、よけいこの目が迫力がある。
暴力性、復讐心だけを描いたらこうはならないはずだ。

もう少し細かく見ていこう。
魚たちの大きさに変化をつけているのもすごい。
なかなでかできそうでできない。
単にまねするだけなら、体力や根気が続かないからだ。
カレンダー入選作品にほぼ共通する必要条件は
徹底的に細部まで描き込んでいることだ。

これは技術の問題ではなく、その物語に対する
思いの深さがなければできない。
It’s a matter of your HEART. なのだ。

ディテールのひとつひとつにいろいろな描き込みがあり
見るたびに発見がある。
「いつまでもみていられるわあ」というやつだ。
さらっと見ただたけではもったいない。
8月の間、毎日1回は見よう。
賞味期限の長い作品てあるぞよ。

蛇足のようだが、クロドリの目は画面のどまんなかで
身体全体はやや左においているのもうまい。
これで奥行きとスピード感がグッと増している。
これはとてもだいじな点だな。

クロドリは基本的には「歌うたい」だ。
表現者、表現芸術者だ。
だから本来、こんな武装ともいえない武装をして
権力者に無謀ともいうる戦いをいどむなど
まったくの想定外だ。

クロドリがにらんでいるのは
配偶者をうばった権力者であることはまちがいない。
だが、同時に、

無茶でもなんでも、
相手がどんな強大でも
たちむかわねばならいときがあるんだと
ぼくたちに発する警告でもあると思う。

諾々として大きなものに巻かれるな
日常の慰安に流されるなと
クロドリはおそろしい目でいう
「きみのたいせつなものをまもれるのか」
「きみのまもらねばならぬものはなんだ」
ccuyv
子どもたちは常に時代の先端を生きている。
いや、先端に立たされている。
惺也くんが昨年この絵を描いているころから

社会状況は一気に閉塞に向かっている。
勘違いでクロドリをの妻をうばった権力者と
現在の為政者が、ぼくには重なってみえる。

子どもたちの絵にそうした社会的、政治的な話をもちこむのは
不適切かもしれない。
でも、先端を生きる子どもたちは
ぼくらよりもよほど敏感に時代を感じとっている。

だから、クロドリの目は
こんなにもおそろしいのだ。
fgd
ぼくが毎日勤務している武蔵学園記念室には
白雉の剥製が展示してある。
白い雉が武蔵のアイコンであるのは、
『続日本紀』「称徳記」の
「神護景雲二(768)年、武蔵の国より白雉が献上された」
という記述に基づいている。
称徳天皇(第48代)は第46代の孝謙天皇の重祚(ちょうそ)で
史上6人目の女性天皇だ。

創立時の徽章を定めた記録にも、その理由として
「雉は吉瑞(よいことの前兆)の鳥であり、
さらにめずらしい白雉が武蔵の国からでたことは
学校・国に貢献する人材を多数輩出することにもつながる」とある。

この白雉の剥製は、1972年、
武蔵50周年の折に秋田県本庄市の野鳥研究家、
繁殖家である佐藤栄一氏から寄贈されたものだ。
佐藤氏は剥製を寄贈した後、武蔵に招待され、
正田建次郎学長・校長(数学者、美智子皇后の叔父)と対談しており、
そのときの録音カセットテープが先日見つかった。
ラジカセの内臓マイクで録音したもので
ノイズが厳しかったが、 PCに抜いて加工して聴きとることができた。

佐藤氏は当時39歳。すでに著名な鳥の繁殖家で、
神奈川県のこどもの国に200羽の鳥を放鳥したりしている。
また、日本野鳥の会の発足に関わった中西悟堂氏とも交流があった。
氏によるとこの白い雉はアルビノではなく、
5年くらいかけて体色の薄い雉を交配させた結果だという。
しかし、佐藤氏は、けして自分が「作った」のではなく、
あくまで生まれたのだと正田先生に熱弁をふるっている。

さらにテープを聴くと、
佐藤氏は当時武蔵で美術教師をされていた洋画家の伊能洋先生と
懇意にされていて、武蔵のシンボルである白雉をぜひ描きたい、
そして白雉など想像上の鳥と思っている生徒たちに
本物を見せたいという伊能先生の熱意に共感して
寄贈を決めたということが判明した。

なお、伊能先生の兄上の敬先生も武蔵の教員をされていて、
伊能忠敬の七代目の子孫にあたる。残念ながらお二人とも故人である。
佐藤氏は、子どもたちに本物をという伊能先生のことばに
とにかく感動したようだ。
対談後半で氏は、
「鳥の写真をきれいに撮影したり、
分類や生物学的知識で立派な先生や専門家はたくさんいるけれど、
わたしのように何千羽の鳥を育て、
直接触れ合うことで鳥を学んだ人間はそうはいません」と自負された。

すると。それまで静かに佐藤氏の熱弁を聴かれていた
正田先生はおだやかに笑いながらこういわれた。
「いやあ、われわれ教員には耳の痛いお話です。
子どもに教えたいという先生はたくさんいますが、
子どもとこころから触れ合いたいという先生はなかなかいないのですよ」。
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