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卯月、うそつき、魂の疼き ロシア昔話 04月02日 ()
三澤制作所のラボ・カレンダーをめくる。
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卯月に入った。
1年の4分の1、第1クォーター終了だ。

歳月が人を待たぬことを嘆く前に
時間に追われることを恨む前に
いざ季節を迎えにいかめやも
時を忘れて遊びやせん

31日の夜に、大かたづけ中の事務所で、
防塵用の帽子とマスクをしながら
カレンダーをめくったら、
この鮮やかなイエローが強烈に飛び込んできて
屈託してかたづかない心が
ホコリごと吹き飛ばされていった。

作品はロシアの昔話に題材を求めた
ラボ・ライブラリー『わらじをひろったきつね』。
描いてくれたのは竹本さくらさん(小5/玉野市・坊寺P)。
いやあ新しい季節、第2クォーターを
元気よく始められそうだ。ありがたや。

その元気の源はなんといっても、
先ほど書いたスコーンと抜けてクリアで明るいイエローだ。
スズキ・コージ先生の絵の色調には
まったくとらわれていない。
そして、ガチョウをまんまとだましとり、
トンズラする女狐を右はじに描いたこともすごい。
とにかく爽やかなくらいに「思い切りかた」が大胆だ。

もうすこし細かく見よう。
このクリアなイエローは実に気持ちがいいが、
少しでも黄色とそれに混ぜた白のバランスが変わると
これだけ広い面積に使用するにはなかなか難しい色になってしまう。
おそらくさくらさんは、色を作りながら
ある瞬間に「これっ!」と思ったのだろう。

それから右に向かって走る
すなわち舞台でいえば下手から動いて
上手に消えようとする女狐を
上手いっぱいに配置するのも大技だ。

これは1枚の絵画作品だが、
絵本では動きの方向とページめくりの関係重要だから
ふつうはこうした場面では左寄りに女狐を置き、
右側に空間を作って動きを出す。
そういう視点、ページめくりと運動の方向という関係で
絵本を見るのもおもしろい。

それを、さくらさんは思い切って女狐を右端にした。
もう今にも画面から飛び出していきそうだ。
これだけ右端にメインのものを置くと
絵の右側に重量がかかりすぎて
右に傾いた感じになるのだが、
女狐の黄色が抜けて軽いことと、
左側のスペースに細かい描き混みが、
しかもやつつけではなくかなりていねいにされているため、
むしろ女狐のうごきをアクセラレイトしている。
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また女狐の背後の家や人物も重要で、
これらもていねいに、
そしてちゃんと意味や遊び心を持って描かれている。
また、空(そら)に当たるスペースはわずかだが
きちんと塗られていて隙がない。
こうした背景のおかげで
奥行きが生まれている。
この奥行きがなかったら、
平面的な作品にんってしまったかもしれない。

スピード感と奥行きがこの作品のもうひとつの命だね。

で、この絵を見れば見るほど、
ディテールの描き混みがすばらしい。
ラボ・ライブラリーのように
なんども出会うことでそのたびに発見がある。
3月31日にめくっておきながら
今まで感想を書かなかったのは、
スケジュールの問題もあるが、
草や樹木の皮やウロ、葉っぱなどを
じつに根気よく色を変えいることとか
ガチョウの目とか、
女狐の服の見頃と袖の色の違いとか、
全然見つけられていなかったからだ。

いつも書くことだが
なんどでも出会う、
なんどでもインプットすることは
アウトプッター、表現者のお約束だ。
ともあれこの絵は4月いっぱい楽しめる。
いや賞味期限はもっと長い。

そう思うと竹本さんと
この物語の関係を知りたくなる。
パーティて活動としてとりあげたのか。
それともとら書く好きなだけなのか
気になる。

ただ、これだけの集中力と持久力(これは時に矛盾する)を
持っているさくらさんのテーマ活動に興味がある。
なぜなら、しつこくいうが
テーマ活動は教育プログラムだからだ。

ラボ・ライブラリーの絵を担当された
スズキ・コージ先生は
今や大御所(本人は怒るかな)の売れっ子だが
ぼくは先生のぶっ飛んだ絵本が大好きだ。
じつはスズキ先生は
若き日にロシア各地を長期間旅行されていて、
ロシア、スラブ圏の文化・風俗に詳しく
帝政時代の面影を残す城や
ペチカ、イコン(ロシア正教礼拝用の聖像)の写真、
木製のオモチャや民具(とにかくロシアは木の文化!)
などの資料たくさんお持ちである。
このライブラリーの刊行前には「ことばの宇宙」で
大いに活用させていただいた。

だからスズキ先生の描くペチカや
わらじ(ロシア語でラーポチ)や
女狐の衣裳などのデザインは
ロシア人もびっくりの正確さである。
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さて、ロシアの昔話といえば
アレクサンドル・アファナーシエフ(1826-71)にふれざるを得ない。
ロシアのグリムといわれるこの人は、
結核のため46歳という若さで世を去ったが、
600編におよぶ民話・伝承を編纂した。
その数はグリムをしのいで世界でいちばん多く、
また、民俗研究の資料としても価値が高い。
『まほうの馬シフカ・ブールカ』『かぶ』
わらじをひろったきつね』『森の魔女バーバ・ヤガー』は、
彼が編纂した昔話集をもとにしている。
それともう一人、ウラディーミル・プロップ(1895-1970)も
ロシア昔話では重要。
この人は民話を分析・分類した人で(1928年、そんなことする人はいなかった)、
後に多方面に影響をあたえた。
プロップの『魔法昔話の起源』
(せりか・斎藤君子訳=斎藤先生はラボ・ライブラリーでも
日本語を担当されている)はとんでもなく厚い難解本だが名著。

ロシアのみならず、どの国の昔話もそれぞれ特徴があっておもしろい。
それは、人びとの生活感、知恵、愛情、血、悲哀、喜び、
そしてその地域の風、光、歴史などが
ぎっしりエッセンスとなってつまっているからだ。
昔話や神話こそ最高の学びのもとといいきれる。
だから、ラボ・ライブラリーに昔話が多いのも当然。

昔話も神話も民族が若いとき、いや赤ちゃんのときに生まれている。
だから鳴き声のように心に響く。
神話なき時代にそう思う。
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