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物語永久よみがえりの法則 風光る皐月に思う 05月01日 ()
三澤制作所のラボ・カレンダーをめくる。
皐月朔。
風はまぶしく、緑は息苦しいほどに濃度を増している。

世は連休だが、熊本、大分ではまだ地震が続き、
心穏やかならぬ日々が継続している。
被災地の皆様方に
衷心よりお見舞いを申しあげるとともに、
1日も早い復興を祈念する。
そして、日本のみならず世界の
火山学者、地震学者が指摘するように
九州全域いや日本全国の原発を即時停止することを要望する。

さらに、今なお深い傷が癒えない東日本大震災被災地域の
完全復興への作業の加速化と、
福島原発の現状と
過酷事故の影響についての虚偽なき情報公開を強く求める。

エンブレムもいいけれど、
湯河原の別荘もどうでもいいけれど、
そんな場合ではない。
『たろうのおでかけ』のたろう少年のように、
「アイスクリームが溶けちゃうんだ!」
と叫ばねばならない。
シャレではないが福島原発はメルトしちゃったんだからね。

たろうは急いでいる。
日はすでに高い。
ゆきちゃんの待つ草原はまだ遠いかもしれない。
だけど走らねばなるまい。
jgbg
さて、珍しく力んだが、
それほど日本は災害リスクを抱えるているということだ。

で、今月の絵は『グルンパのようちえん』。
『たろうのおでかけ』と同じ
堀内誠一先生による絵本に題材をもとめた作品だ。
※いやあ話がつながった。

描いてくれたのは東村咲甫さん(5歳/練馬区・浦野P)。
なんか練馬区と聞いただで親近感があるぞ。

おとといからずっとこの絵を観ているが
カレンダーは寝室にも仕事部屋にも掛けているから
とにかくよく目につく。

何より色味がさわやかだ。
濁りがほとんどなく、すべての色が
スカッときれいに抜けている。
画材はクレパスと不透明水彩だと思うが。
ほとんどの彩色は水彩だから、
色を変えるたびにていねいに筆洗して、
布で軸の部分も拭いているのではないか。
そうしないと軸についた絵の具が新しい色に
滴りおちて混ざってしまうのだ。

咲甫さんの年齢でそこまでの作業をしているのがすごい。
実際に見ていたわけではないから確かなことはいえないが、
とにかくていねいに筆を洗ったことはまちがいない。

咲甫さんはたぶん、けっこうな時間、絵を描いていられる。
それは持って生まれたものなのだろうか。
遺伝子の情報のなかに描画への集中力と関係する書きこみが
きっとあるのだろう。

でもそれだけではなく、この集中力は
咲甫さんとこの物語との関係の密度にも由来すると思いたい。
彼女と「グルンパ」の出会いや付き合いを知りたいものだ。

子どもがある物語を好きだというとき、
よく「どこが好きなの?」とか「どうして好きなの?」という
質問をおとなはしてしまいがちである。
まあ、それ自体に目くじらを立てても仕方ないが
概ね無意味な質問ではある。

なんとなれば、ほとんどの場合、
子どもは無条件に好きなのであって、
それは恋愛のごとく説明不能なのだ。
「好きなものは好き」というやつだ。

だけど、それは個別の子どもの場合であり、
多くの子どもたちに支持される作品には
それなりに理由があることも確かだ。
で、『ぐるんぱのようちえん』も、
長い間、たくさんの子どもたちに支持されてきた作品だ。
もう刊行されてから47年も経つのにまったく色あせない。
それは、「ひとりぼっち」の寂しさ、
「ともだち」ができる
さらには「だれかの役に立つ」という
という子どもたちにとって、
いや人間にとって命と同じくらいに重たい問題を
ストレートに提起しつつ、
最後には軽やかに、且つスケール豊かにクリアして
安心と希望をあたえてくれるからだ。

ただ、ラボの場合は、
さらにそうしたすばらしい作品を
子どたちがテーマ活動や描画などのプログラムで
なんども、しかも新鮮に再表現している。
そのことが、また物語に新しい命の息吹を
与えているのだ。
さらにさらに、そうして命を吹き込まれた物語が
新しい次の子どもたちとの出会いを作り出す。
「物語、永久よみがえりの法則」といっていい。

さて、咲甫さんの絵に戻ろう。
色味の続きだが、ぐるんぱのボディのグレイと
ほっぺたのピンクのコーディネートはお約束の
おしゃれな色合いだが、
咲甫さんの場合は
グレイにも濃淡を使い分けているのがニクい。
その視点でよく観ると、
背景もプールやピアノも、
すべて濃淡を持って彩色されている。
うーん、年齢を考えると本当にびっくり。
どのくらい時間をかけたのだろう。
本人はかなり楽しんで描いたはずだが、
集中度合いを想像すると、
かなり反動があったのではないかと余計な心配。
熱でも出してなければいいが。

色のことばかり書いてきたが、
じつはフォルムもおもしろい。
プールが丸いのは当然だが、
それ以外のものもほとんど角がなく丸いのだ。
カクカクしていない。
なんとなく満ち足りているようで
心が豊かになる。
まさに幸せになったぐるんぱだ。

そしてそれらがすばらしいバランスで配置されている。
これも見逃せない。
しかも主役のぐるんぱのサイズをやや抑制して描き、
ぐるんぱをが作り出した世界の楽しさを広く見せることで
より一層ぐるんぱが大きくなった!

そして、先ほども触れた濃淡と筆のタッチで
子どもたちの動きと奥行き感も十分に生まれた。
1か月はどころか、もっと賞味期限の長い絵だ。
カレンダーの絵のよい点は、
基本的に毎日のように眺めることで
新しい発見があることだ。
これはすべての芸術作品にいえることだけどね。
fvvfv
原作の絵本を描いた堀内誠一先生は
ほとんど独学でグラフィックデザインを身につけられた。
小学1年生のときに個人雑誌を作るという早熟ぶりで、
14歳でなんと伊勢丹に勤めて商業デザインを始めた。
結果、商業高校を中退して22歳でデザイン会社を立ち上げた。
雑誌、an an POPEYE BRUTAUS Oliveなどのロゴは
先生の作品だ。
堀内先生が絵本に取り組むのは後期だが、
福音館を中心に多くの絵本作品が今も刊行されているのは
ご存じの通りである。

堀内先生はまた、初期の「ことばの宇宙」で
イラスト入りの読み物も連載されていた。
しかしそのころ、草創期のラボの宣材や
教材(当時はそう呼んでいた)の作り手はとんでももない。
メインのポスターのイラストは、
すでに大御所だった真鍋博先生。
副教材(そういうものがあった)イラストは和田誠。
「下敷き」のカラーイラストは横尾忠則。
そして、MY Balloonの作曲は山下洋輔!
嘘だろうという顔ぶれだ。
ライブラリー以前から一流趣味だったのね。
cwx
堀内先生は1987年に54歳の若さで
下咽頭がんのために逝去された。
ぼくは残念ながら一度も先生にお会いしたことはないが、
「ことばの宇宙」に泣きながら
「さよならぐるんぱ」という追悼文を書いた。

たろうもぐるんぱも、今見ても、
おしゃれでかっこいい。
先生、ぐるんばまだ大活躍してますし、
たろうも新しいアイスのために激走してます!
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