幼児教育・英語教室のラボ・パーティ
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不安多爺は物語なき敷島を憂うのだ。ひまりWorld Returns! 11月01日 (火)
that
写真は武蔵正門から見上げた高積雲。
三澤制作所のラボ・カレンダーをめくる。
htny
大負けした母校のフットボールの試合から帰宅して
なんとなく片付かない気持ちの日曜の夕。
例によってフライイングでラボ・カレンダーをめくったら、
アスランが静かにこちらを見つめていた。
life
ラボ・カレンダーのライオンといえば
これまでは『はるかぜとぷう』の
風の子たちの騒ぎにブチキレて吠える
動物園のライオンがお約束だったが、
ついに「王の王」が登場だ。

Clive Staples Lewis
C・S ルイスの全7巻の長編ファンタジー
『ナルニア国物語』The Chronicles of Narnia
の第1巻、『ライオンと魔女』
THE LION, THE WITCH AND THE WARDROBE
に題材を求めて制作されたラボ・ライプラリー
『ライオンと魔女と大きなたんす』
にインスパイアされて描かれた絵だ。

描いてくれたのは、
由井ひまりさん(中2/茅野市・両角P)。
昨年は甲斐市・万行Pに在籍し、
”The Wolf and The Seven Little Goats”
『おおかみと七ひきのこやぎ』で9月の絵に
入選を果たしている。
中学生の2年連続入選はたぶん初ではないだろうか。
ひまりさんは、ご自宅などの関係で
移籍をされたが、しっかりと絵とラボを
続けているのがとにかくうれしい。

この絵と出会った日曜日の夕方は
試合に負けたこともあったが、
仕事でもいくつか悩ましいことがあり、
それは、客観的に考えると
じつはたいしたことではないのだが、
ぼくら凡人の悩みなんてのは
大半が個人的なもので、
それは当人にとっては結構なストレス
であることは否めない。

アスランはなにもいわない。
ぼくを見つめていると最初は思ったが、
じっと観ていると、
ぼくのようなちっぽけな存在など気にもかけず
眼ざしはもっと遠くにあるようでもあり、
ただじっと思索に集中しているようでもある。
力ある者の静けさが一番強い。

アスランは
「お前の悩みなどナルニアが抱える問題、
そして現実世界の問題に比較すれば
どうでもいいことだ」とはけしていわぬ。
ただ、この姿そのものから学べと
アスランはいいたいのだろう。

そして、ぼくが「考えろ、そして前に進め」と
自らに語りかけるのを激励している。

美術館のピカソや光琳にはいつも感動させられる。
だけど少女が描いたライオンの絵に
勇気をもらうこともあるのだ。
たかがカレンダーなどと口が裂けてもいってはいかん。

さて十分激励されたら、ひまりさんの絵を
よく観てみよう。
なんといってもアスランの目力の強さだ。
とりわけ「王の王」の瞳をていねいに
角膜、瞳孔、虹彩の反射も考慮しつつ
さらにネコ科の特徴もキープしながら
描き込んだ技は、
テクニックもさることながら、
この物語とアスランへの
思いをいっぱい集めたに違いない。
そんな、ひまりさんの心映えがすばらしい。
このアスランの目に
惹きつけられない人はいないだろう。

能の面(おもて)は、観る角度や光、
そして観る側の心の佇まいによって
表情が変わるが、
ひまりアスランもまさにそうである。

諸姉兄にはどう観えますか。

この絵のように動物の顔のアップだけ
しかもしずかな状態で描いて
長期間眺めることができる作品として成立することは
なかなか難しい。
対象が明確になりすぎているから
息苦しくなるし、何より動きがないからだ。

だが、ひまりさんの作品は
それらを超えて圧倒する。
アスランはあくまで静謐で動かない。
むしろこちらの心が動くのだ。

ぼくは毎朝出がけに、そして帰宅すると
玄関の父親の遺影に話かけるが、
今月はアスランにもごあいさつだ。
父親はしかめっらの眩しそうな顔で
「人にやさしくしろよ」「女性関係には気をつけろ」
とか、ときどき助言やく苦言をくれるが、
今朝のアスランはやはり黙ったまま。
でも、なにかしら心に響くものがある。

この絵の力は瞳だけではない。
思慮深そうな目尻のキレ、
苦難を隠した顔の皮膚の陰影、
理知的な額、
堂々した鼻、
(この鼻の濃いsepia的brownが
中央で安定感を出している!)
しっかりと結んだ
なにを語るんだと期待させる口。
(この口の白さ加減も鼻とセットで
絵を安定させている)
そしてなによりも雄々しく輝くたてがみ。
fbdbd
全体の色味はyellowとbrownの階調である。
色数を抑えてもこの階調がきめ細かいので
単調さは微塵もない。
外に向かって明るいyellowになっていき、
その枠外に宇宙のようなindigo系を配置し
下方では星雲か超新星のようなpinkに
アスランがいる
名付けてNarnia yellowを
吹き出させている。
なんというスケール感だろう。
大切な要素だと思う。

こうした描き方は知にとらわれて
説明的になりがちだが、
ひまりさんはいとも自然に
かつ伸びやかに描いていて、
大外のindigoのなかにある白い星のようなdotや
アスランの周辺のブbrownやviridianにも
自由さが溢れている。
そして何より造形の確かさがある。

ひまりさんのこの1年の成長が感じられる。

なお、これは本質的なことではないかもしれないが、
これだけの面積、yellow系、brown系を
使用するのはかなりむずかしい。
服でもyellow系のone-pieceを着こなすのは
相当の上級ファッションだ。
「ゲッツ」のお兄さんみたいになっちゃうからね。
rghyj
『ナルニア国物語』の作者であるルイスは
神学者としてまた信仰伝道者として知られている。
(神学的観点からはルイスへのバルトの批判が
興味深いが、そこを広げると大変なのでヤメ)
この物語は『聖書』のmetaphorであり、
アスランもキリスト、救済者のmetaphorであると
一般的にはいわれている。
ルイスは「伝道目的で書いてはいない」と
述べているが、
Christianityが底流にあることは否定できないし、
英語圏でキリスト教と全く無縁
(肯定も否定も含めて)な物語はあまりない。

ただ宗教と信仰は異なることを
認識しなければなるまい。
宗教は思想も人の集まりも含めて「組織」であるが、
信仰は個人の心のありようで、
逆にいえば押し付けてもいけないことだ。
そうしたsensitivityを持ちたいと思う。

このラボ・ライブラリーの刊行は
ぼくがラボ退社後であり、この作品の「制作資料集」を
不勉強で読んでいないから、
この物語とChristianityとの関係をどう考えたのかは
とても興味がある。

作品を何十回も聴いた訳ではないから
わけ知り的論評はしないし、できもしないが
ぼくは今の時代に求められる
いくつかのメッセージを感じた。
そのひとつはファーストフードや
テーマパークに象徴される消費社会への
さらには
ファンタジーを超える凄まじい現実
(テロや大規模災害、難民など)が
破壊するフィクションの世界、
すなわち物語なき現代への警鐘などがあるが
そのあたりを展開するには
もう少し聴いてからにしたい。

ルイスによって原作が書かれたのは1950年で
第二次大戦後だが、物語の設定はその30数年前の
第一次大戦中だ。
だから現代から見ればずいぶんと昔で、
ナルニアという異世界への入口は
さらに古い屋敷の古い衣装箪笥だ。
そのことは「ナルニア」の実在を
(もちろんファタジーとしての実在)
十分納得させてくれた。

ぼくが小学生時代には
邦訳(瀬田先生の初訳は1966)はまだなく
最初に読んだのは高校生の終わりの頃だ。
だから、その年齢らしい小さな頭でっかちで
捉えていた気がする。

ともあれ、今幼い子どもたちでも
ラボ・ライブラリーでこの物語の
エッセンスに触れて楽しむことができるのは、
全7巻(1巻ごとに読めるが)の原作への興味、
さらには英語圏文学への興味を膨らませる
ことにつながるとは確かだろう。

ひまりさんがこのライブラリーとどう出会い、
何を感じたかはこの絵から想像したい
だが、それを縷々書き流すのはやめておこう。
ただ、ひまりさんの個性、
心映えが溢れていることはまちがいない。

昨年、ひまりさんの絵について書いたとき
当時在籍していたテューターから
ひまりさんが絵やライブラリーと同じくらいに
自然や生き物を愛していることをうかがった。

だから、大ハズレかもしれないが
彼女もぼくと同じような
メッセージを感じているのかもしれない。

ひまりさんは今年は中3になられている。
いろいろといそがしいだろうが
絵を描きつづけてほしいと祈る。
そして「ひまりさんらしさ」を
自信をもってみがき続けていってほしいと思う。
最後にルイスのことばを
ひまりさんと諸姉兄におくる。

You are never too old to set another goal
or to dream a new dream.

You don't have a soul.
You are a Soul. You have a body.

- C. S. Lewis
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