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ラボ・カレンダー神無月の絵 デパオラとの対話 10月01日 ()
三澤制作所のラボ・カレンダーをめくる。
『ヘルガの持参金』
持って生まれた能力
ーーデパオラとの対話
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彼岸も過ぎて神無月である。
秋どまんなかだ。

今朝、東の窓を開けてから
カレンダーをめくった。
朝日のなかで鮮やかなパープルが
目と心に同時に投影された。

トミー・デ・パオラの絵本、
HELGA’S DOWRY
『ヘルガの持参金」に題材を求めて
制作されたラボ・ライブラリーに
inspireされた作品。

いきなり話が飛んで恐縮だが、
原作者は
De Paola
というdeを接続詞として扱うのではなく
Tommy dePaolaという表記にしていて、
これが正式な名前だという。
そこで彼は
わざわざ、発音はTommy daPOWla
だと書いている。
近い発音はダパオウラ(ダは小さめにポウラのポウに
強いアクセント)だという。
だからいちおうここでデパオラと表記する。

描いてくれたのは
濱田千晴(小6/高知市・宮地P)さんだ。
久しぶりに高学年の小学生の登場だ。

ラボ・カレンダーの絵の応募年齢は
およそ3~5歳を最頻値に下降分布する。
特に10歳を過ぎると急激に
応募点数が減る。
別に「ラボ・カレンダーの絵」は
幼い子の活動と決まっている
わけではないが、
「絵を描くこと」が自然な日常の
楽しみ、難しくいうと
「余暇の再創造」Re-Creationだった
年代から、意志して取り組む作業に
変わっていくborder lineが
思春期の入り口の10歳なのだろう。

そこを越えても18になっても
20歳を過ぎても描きつづけていられると
プロにしてしまうケースが多い。
しかし、プロの画家というと絵を描くことを
職業とするひとだが、
その本質は「絵を描くという生き方』
を選んだひとということだろう。

ぼくはおこがましくも自分を詩人だと
位置づけているが、
それは職業ではなく「生き方」である。

千晴さんの幼いころの作品を観てみたいものだ。

冒頭に書いたように
まずきもちよいのは、
パープルを中心にした背景の
独特の色彩だ。
これほど広い面積にパープルを
使用するのはかなり大胆で
逆にすがすがしい。
パープルは古今東西nobleな色だが、
ただ平板に広く塗っただけでは、
高貴さやオシャレ感が台無しになる。
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千晴さんは、この背景をjigsaw puzzleの
ようにcellに切り分けて立体感をだした。
しかもその切り分けた線を目立たせず、
色の濃淡で表現しているので、
puzzleのpieceより複雑な
fractal的な境界になっている。
要するにリアス式海岸みたいに自然なのだ。

また、pieceごとの濃淡のつけ方も、
下から上に濃くなってはいるが、
それも単調ではなく、
同じ明度や彩度のpieceはひとつもない。
毎回筆の水加減を変えているのだろう。

そしてこれは全体にいえることだが、
色をおくタッチが独特な柔らかさだ。
そして人物の衣服なども
描かれているものすべてに
色彩の濃淡がある。

つまり「べたっとした塗り絵」が
まったくないのだ。
だから人物などは細い線で
下書きをしているが、
それが世界を分断せず、
アニメ的な2次元感ではない
奥行きを感じさせている。

これは想像に過ぎないが、
千晴さんは一見かるがると
しかしすさまじい集中力で
この作品を描いたのだろう。
しかも、筆を洗うたびに
筆の絵までていねいにふいたはずだ。
その持続力の源泉ははなにか。

ひとつは物語の力、
すなわち千晴さんと
『ヘルガの持参金』の物語の関係に
あると思われる。
千晴さんがこの物語でどういう活動を
したのかは興味が尽きない。

ヘルガを中心に物語の主要キャラクターを
みごとなバランスで配置し、
そこに千晴さん自身の
『ヘルガの持参金』の世界観を
全体に盛り込んだ。

だから、キャラクターのフォルムは
原作絵本に寄せてはいるが、
タッチや色使い、
さらに前述したように
背景処理はきわめて個性的である。
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だから、もうこれは
デパオラへのhommageといった
いったほうがいいかもしれない。

ヘルガの誇りと知恵、
実行力と自立性は、
千晴さんの心を動かし、
その物語を編んだデパオラと
この絵を描くことで対話しているのだ。

そうそう千晴さんのこの
集中力の源泉はもうひとつある。
それはDowry。
Dowryはラテン語起源で
Dowerともいう(Dowryは文語的)が、
持参金、寡婦持参金(ひどい習慣があった)
の他に、
「もともと持っている能力」
という意味もある。
トロールであるヘルガは
「持って生まれた特殊な力」があったわけで
タイトルのHELGA’S DOWRY は
その二つの意味を掛けているのだ。
千晴さんの集中力もDowryか。

ぼくは制作に異動するまえ、
北関東支部の組織担当者時代
デパオラの絵本は
『神の道化師』で出会い、
「この人の絵本でラボ・ライブラリーを
作ったらおもしろいな』と勝手に妄想した。

妄想は夢や希望になり、現実化した。
恋愛もそうだが、
希望は思い続けることで叶うとは
限らない。
しかし思い続けて行動しないかぎり
叶うことはない。

『ヘルガの持参金』に歌を挿入したのは
この作品をより立体化することによる
デパオラへのhommageだ。

なお、日本語訳者の
ゆあさ・ふみえさん
(若き日にラボ教育センターの
前身である株式会社テックの
社員だったと後で判明!)は、
残念ながらラボ・ライブラリー刊行時には
すでに故人になられていた。

この物語の録音権や一部の
日本語の変更、歌の挿入などの
交渉をご子息としたとき、
彼はこういった。
「そうしたかたちで、
母の作品がより多くの子どもたちの
手に届くなら、ぜひお願いします」

それがこの千晴さんの絵のような
かたちで再創造されて戻ってくる。

これ造り手の喜びた。
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