幼児教育・英語教室のラボ・パーティ
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どうだ! 「かぶ」だぜ文句なし。 What more could you want? 10月11日 (木)
xxz

いよいよ神無月だ。
神無月の語源は正確には不明。
出雲大社に八百万の神が
縁結びサミットに集結するというのは
中世以降の俗解。
出雲大社の関係者がプロモーション
したことが元になっている。
しかし、出雲、松江にはお世話になっているから
これ以上掘らない。
水無月が「水の月」であるように
「神の月」と考えるのが自然と
「日本国語大辞典」にある。
しかしこの神の意味はわからぬ。
昔、武蔵で漢文を教えていた
高島俊男先生は「神無月」は
「師走」と同じくらい俗解が多いという。
高島先生は期末試験の監督に来て
暇を待て余し「タバコ吸っていいかな」と
試験中のぼくたちにきいた
とんでも先生だか、漢字の大家。
(誰かが、いいんじゃないですか
といったら本当にテラスにでて喫煙された)
さて、余談はここまで。
9/30日の夜10時29分に停電になったとき
壁ついたに玄関に置いた懐中電灯を
取りにいき、それからなぜか
ラボ・カレンダーをめくった。
停電で、何もできないので
懐中電灯の明かりで
このでっかい「かぶ」見ていた。
なんとなく元気が出た。
停電も台風も怖くない。
書いてくれたのは
濱氏咲紀さん(6歳/高知県・宮池香奈P)。
ウクライナの民話に題材を求めた
ラボ・ライブラリー"The Turnip"だ。
この物語を描いたラボ・カレンダー応募作品は
毎年たくさんあり、
刊行された年、1987年の秋は
『かぶ』だらけになってしまったほどだ。
それだけ点数があれば。
名作、傑作、力作も多く。
はっきりいえば『かぶ』で入選が
大変なことはもちろん、
一次選考突破も難しい。
しかし咲紀さんの作品は
あまたの『かぶ』を見て来たぼくも
とっても新鮮に感じた。
おそらく選考委員もそうだろう。
場面としては、カフが抜けた瞬間
なのだろうが、
とにかく画面みぎはしから中央までを
占める大きさでかぶを描き、
さらに葉が左端に断ち切れるまで
大きく伸びている。
要するに画面のほとんどが
かぶで占領されているのだ。
だから重量感がものすごい。
さらにこの配置、葉の伸び方が
抜けた瞬間の躍動感と喜びを伝えている。
フリーズしたかぶではないのだ。
孫娘と犬と猫は嬉しそう。
じっちゃとばっちゃは
どこかに行ってしまったようだが、
そんなことは気にならない。
変わりにチョウチョがいっぱい
喜んでいるではないか。
もしかすると、ネコの下に描かれている
少しだけ紫がかったビンクの
楕円は「ネズミ?」。
太陽も雲も喜んでいる。
What more could you want?
これ以何を欲しがる?
いつもいうことだが、
咲紀さんの年齢を考えると
カレンダー規定の用紙は
彼女の肩幅より広いと思う。
それはすごい圧だ。
それに怯まず真っ向から
全画面を使って描ききっているのは
それだけですごい。
相当な体力と精神力を消費しているはずだ。
まずそのことに感動しなくてはいけない。
かぶを抜くのと同じくらい、
いやそれ以上のパワーを絞って
咲紀さんは描いたのだ。
ちょっとしたことで諦めたり
愚痴をいったり、
ダメな理由をとにかく自分の
外に求めてしまてがちなおとな、
ぼく、きみ、おまえ、
あなた、おまえたち。
この純粋なバワーにひれ伏すべしだ。
フォルムやディテールにとらわれない
自由闊達さや
(とはいえ、かぶのバランスはステキ)
配置や力強さだけでは入選しない。
彩色もまたすばらしい。
何よりもまず、かぶ本体の野菜感たっぷりの
グラデーションがかかった
オレンジ系の塗り方がいい。
実際のカレンダーの色と
撮影してFBにアップした色は
修正はしているか
中間色に落差があるので
はがゆい。
もっとも原画との差を考えると
もっとはがゆい。
原画を見ていないから
どうしようもないけど。
かぶ本体の輪郭を
同系のオレンジのクレパスで
引いたのもよかった。
これだの大きさの円を
輪廓として描くとめ
世界が断絶してぬりえ的に
なりがちだが、
この色なら気にならない。
葉のモスグリーンもいい。
本体のオレンジと合わせると
昔の湘南電車みたいでかっこいい。
またこれはおまけだが
ICU Apostlesのユニフォーむカラー
でもあるのよね。
雲の少しくすんだ
でも濁ってはいない青が
じつはとてもかっこいい。
この色ができたのは
偶然の要素が大きいと思うが
「この色がいい」と決めて
彩色したのは咲紀さん自身だから
やはり咲紀さんの色といっていい。
そしてなんといっても
かぶ本体をがっしり支えている
レモンイエローにところどころ
オレンジが入った背景だ。
この絵をの背景は
かぶ本体に近い暖色系なのだが
みごとにかぶを引き立てた。
いやあまいった。
雲とのコーデもいいよね。
それから、
一見、孫娘や動物たちが泣きても
成立する気がしたが、
じっと見ていたら
やはり小さな彼らが
バランスをとっており、
右の重量を軽くして
更に躍動感を出している。
しかし、このエネルギーは
どこからきているのだろう。
やはり『かぶ』の物語の力と
咲紀さんじしんがもっているバワーが
シンクロしてバワーが倍増したのだろう。
咲紀さんとこの物語の関係を
知りたいものだ。
この物語のラボ・ライブラリーの絵は
小野かおる先生が担当されている。
『かぶ』はウラジーミル・プロップの
分類にれば「累積昔話」にあたる。
文末で脚韻を踏みながら、
「ジャックのたてた家」のように
くりかえしながら
人物や動物がふえていくものだ。
『わらじをひろったきつね』も
この累積昔話である。
韻によることばのリズムのおもしろさ、
そしてくりかえしがもつ
「ことばの魔力」は
この物語を今日まで
語り続けさせた。
「ジャックのたてた家」は
かつて「三回息をとめていうと
しゃっくりどめのおまじない」になると
オーピー夫妻は”
“Oxford Dictionary of
Nursery Rhymes”でいっているが、
この『かぶ』にも
なにかそんな「呪文」としての
意味もあったと思われる。
だから、ラボ・ライブラリーの日本語も
ロシア語のような韻はできないが、
物語がもつことばのリズムを
とてもたいせにしている。
日本語を担当された斎藤君子先生は、
その点を十分に勘案し、
たいへんご苦労なさって
すばらしいリズムの日本語を
書いてくださった。
「じっちゃ、ばっちゃ」などの
表現はこのリズムをだすためである。
おじいさん、おばあさんでは、
どうしても間合いがかわってくる。
英語もサラー・アン・ニシエさんが
これまた苦しみ抜いて
リズムのよい文にしてくださった。
この物語を「はじめての素語り」に
とりあげるラボっ子は多いが、
それはあきらかに
上記のようなくふうがされていて
心にはいりやすいからだ。
短いだけじゃないんだぜ。
この物語また、彫刻家佐藤忠良先生
(お嬢さんは女優の佐藤オリエさん
『大草原の小さな家』で「かあさん」
の日本語担当)の『おおきなかぶ』が
人口に膾炙(かいしゃ)している。
だれもが知ってるとっても
人気のある絵本である。
では、なぜラボは
この絵本を録音許可をとって
使用しなかったのか。
ひとつには累積ばなしのもつ
リズムほをほうふつとさせる
新しいことばでつくりたかったこと。
また『おおきなかぶ』は
最初からこたえがてているが、
原題はただ『かぶ』であること。
まあこれはなにかいちゃもんの
ようでもあるけどけっこうだいじだ。
しかし、それよりも大きなのは絵である。
もちろん、絵本は歴史民族の
学習資料ではない。
だが、このライブラリーは
「ロシアの物語と文化」が
大きなテーマのパッケージである。
そうしたエスニックなテーマを
あつかうときのライブラリーは、
その物語を生んだ地域と
人びとへのリスペクトとして、
とくに具象的に表現するときは
衣服や建物、事物について極力、
時代考証をしっかりとするべき
であるというスタンスをとっている。
「おおきなかぶ」があまりに有名なために、
どなたに依頼するかがなやましかったが、
小野先生が快諾してくださった。
いまはどうか知らないが、
そのころは「ことば宇宙」は
いろいろな専門家に
毎月(月刊だった!)送っていたのだが、
ラボのスタッフが小野先生の
ご自宅に相談にいったとき
先生のほうから
「今度ラボはロシアをやるんでしょ」と
おっしゃられたという。
ぼくはそのころ「ことばの宇宙」が
メインの仕事で、こ
の物語の途中からだんだんと
ライブラリー制作に
ひきずれこまれていくのだが、
ロシア昔話をやることがきまってからは、
「ことばの宇宙」で
はやばやと「ロシア特集」
ばっかりやっていったのだ。
小野かおる先生の父上は
著名なロシア文学翻訳家の
故中山省三郎先生である。
だから小野先生も
ロシアについての知識、
資料は豊富におもちだった。
『かぶ』のはなしは、
ちゃんと「ロシア、ウクライナの話」
として絵本にしなくてはと
先生はおっしゃっり、
この絵本ができたというわけだ。
登場するかぶは本来は
赤かぶに近いものである。
じっちゃやばっちゃや孫娘の衣装も
スラブ、ロシアの伝統の
デザインで描かれている。
じっちゃのはいている「わらじ」も
ラーポチとよばれるわらぐつであり、
これには大きくモスクワ型と
ペロルシア型があるが、
この絵本ではモスクワ型である。
さらに、ばっちゃは
ココシーニクとよばれるスカーフで
髪をかくしているが、
(ゴージャスな頭飾りもある)
これは既婚者であることをしめしている。
さらにスカーフをとると
ばっちゃは髪を後ろでふたつにわけて
しばっている。
(校則ではない)
それにたいして孫娘は
未婚なので髪かくさず1本でしばっている。
彼女がや嫁にいくときは
髪をふたつにわけて
かぶりものをする。
だから厳密にいうと
『ゆきむすめ』のゆきむすめが
スカーフで髪をかくしているのは
ロシアの人から見れば違和感がある。
もちろん、さきほどももいうように、
絵本は歴史資料ではないし
「ゆきむすめ」の話の本質、
子どものない老夫婦と
季節の奇跡とでもいうべき
「ゆきむすめ」とのまさに
あわい日々が影響をうけるわけではない。
ただ「ロシア」というくくりで
活動の素材を子どもたちに
提供するときは
かなり綿密な考証が
行なわれたということだ。
日本にとってロシアはその地理的、
歴史的関係から、
北のこわい国というイメージが強く、
「オロシヤ国などと
よばれたりもした。
だが、ロシア民話のみならず
民謡、サーカス、バレエ、
料理などロシアの文化は
日本人にしたしまれている。
いまロシアもたいへんだが、
北では白い風かうたい、
南の草原では灰色のオオカミが疾駆する
広大な大地にはいまも
精霊がいきづいてると思う。
「いつかちゃんとしたロシアの話として…」と
おっしゃった小野かおる先生の
思いはちゃんとうけつがれ、
こうしてラボ・カレンダーになって帰ってくる。
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