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静謐、透明感 Peace and tranquility And Transparency 02月05日 (火)
三澤制作所のラボ・カレンダーをめくる。
exes
夜更けの雨は、
練馬ではみぞれで終わり、
一夜明けると深い青の絵の具が
そのまま固まったような快晴だった。
そんな朝の自然光のなかで
如月のラボ・カレンダーをめくった。
部屋にはエアコンがついていて
テレビもかすかに鳴ってはいたが
カレンダーの発する
静謐感と透明感が
あたりをoccupyして
そのまま絵に
取り込まれそうになった。
本当に取り込まれたら
ナルニア行けそうだが、
江古田からナルニアに
通じているとは
とても思えないので生還した。

それからコーヒーを入れて、
じっくりと眺めた。

Clive Staples Lewis
C・S ルイスの全7巻の
長編ファンタジー
『ナルニア国物語』
The Chronicles of Narnia
の第1巻、『ライオンと魔女』
THE LION, THE WITCH AND THE WARDROBE
に題材を求めて制作された
ラボ・ライプラリー
『ライオンと魔女と大きなたんす』
にインスパイアされて
描かれた絵だ。

描いてくれたのは、
大山日花里さん
(小6/神奈川県・福永加奈女P)。

この絵から感じたものを
なるべく寡黙に表すとすると
Peace and tranquility
And
Transparency
だろうか。
静謐さと透明感が、
観る者の心に
さまざまなことを語りかけてくる。

Transparencyは
ぼくの好きなことばで、
『雪渡り』の制作をしたとき、
英語テキストを担当した
ロジャー・パルヴァース氏と
英日対応の検討をしながら、
『雪渡り』のキイワードは
なんだろうかと考えたのだが、
ぼくが「透明感?」と
つぶやくと、
彼はパッと目を見て輝かせ
Transparency!
と叫んだ。

さても、描かれている風景は
白い魔女によって
冬に支配されたナルニア。
ルーシーが衣装だんすの奥から
迷い込みフォーンのタムナスに出会う
わけだが、
この絵が物語のどの場面を
描いているのかは
特定しにくい。
いいわけがましいが
ぼく自身、
聴きこみが浅いせいだろう。

ラボ・ライブラリーの
テキスト絵本の絵は
Pauline Diana Baynes
1922-2008
によるもので、
大山さんはそれを参考にしている。
ところが、このテキストを
お持ちの方は
おわかりだと思うが、
この絵と同じ場面はない。
はっきりしているのは、
雪がまだとけはじめる
前だということ。

画面左上から下に向かい、
やがて左下に消える足跡と
その先に置かれた
リボンをかけられた贈り物の
ようなみどりのボックスは
サンタクロースからの
贈り物だろうか。
だとすると、物語の大きな
分岐点である。
いずれにせよ
日花里さんの心と頭のなかには
くっきりとイメージが
あるはずだ。

この足跡は
街灯とともに
絵に奥行きを作り出し
かつアクセントにもなり
異世界としての印象を
醸し出している。
eewx
全体はミルクがかった
ホワイトだが、
樹の幹や針葉は
微妙に同系色を使い分けており、
手がこんでいる。

下部の水の青もすっきりと
抜けていて
画面全体を明るくしつつ
透明感アップに貢献している。

また右手の建物も
パースがとれていないが、
それがまたいい味になっているし
なにより壁と屋根の色は
相当にオシャレだ。

静謐で透明感ある画面のなかで
上記のようなディテールが、
いろいろな想像をさせてくれる。
そしてそれはけして饒舌な
説明ではなく、
観る者に内省をもとめるような
語りかけだ。

日花里さんとこの物語との
関係は、
かなり深いものがあるような
気がする。
この二、三日で集中的に
ラボ・ライブラリーを聴いて
場合によっては加筆する
かもしれない。

『ナルニア国物語』の
作者であるルイスは
神学者として、
信仰伝道者として
知られている。
(神学的観点からは
ルイスへのバルトの批判が
興味深いし、トールキンの
サンタクロースを登場させたこと
への批判も有名だが、
わしら素人としては
おもしろけりゃいいよね)
この物語は『聖書』の
metaphorであり、
アスランもキリスト、
救済者のmetaphorであると
一般的にはいわれている。
ルイスは「伝道目的で
書いてはいない」と
述べているが、
Christianityが
底流にあることは
否定できないし、
そのことが文学的価値に
影響しているとは思えない。
英語圏でキリスト教と全く無縁
(肯定も否定も含めて)な
物語はあまりない。

ただ宗教と信仰は異なることを
認識しなければなるまい。
宗教は思想も人の集まりも
含めて「組織」であるが、
信仰は個人の心のありようで、
いきなり土足で踏み込んでは
いけない部分だし
逆にいえば押しつけても
いけないことだ。
そうしたsensitivityを
持ちたいと思う。

このラボ・ライブラリーの刊行は
ぼくがラボ退社後であり、
この作品の「制作資料集」は
不勉強で読んでいないから、
この物語とChristianityとの
関係をどう考えたのかは
とても興味がある。

前述したように
作品を何十回も
聴いた訳ではないから
わけ知り的論評はしないし、
できもしないが
ぼくは今の時代に求められる
いくつかのメッセージを感じた。
そのひとつは
ファーストフードや
テーマパークに
象徴される消費社会への警鐘、
さらにファンタジーを
超える凄まじい現実
(テロや大規模災害、
難民など)が
破壊するフィクションの世界、
すなわち物語なき現代への
警鐘などがある。

ルイスによって
原作が書かれたのは1950年で
第二次大戦後だが、
物語の設定はその30数年前の
第一次大戦中だ。
だから現代から見れば
ずいぶんと昔で、
ナルニアという
異世界への入口は
さらに古い屋敷の
古い衣装だんすだ。
そのことは「ナルニア」の実在を
(もちろんファタジー
としての実在)
十分納得させてくれる。

ぼくが小学生時代には
邦訳(瀬田先生の
初訳は1966)はまだなく
最初に読んだのは
大学生の頃だ。
だから、その年齢らしい
頭でっかちで
捉えていた気がする。

ともあれ、
今幼い子どもたちでも
ラボ・ライブラリーで
この物語の
エッセンスに触れて
楽しむことができるのは、
全7巻(1巻ごとに読めるが)の
原作への興味、
さらには英語圏文学への
興味を膨らませる
ことにつながるとは
確かだろう。
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なお、テキスト絵本の
絵を描いたベインズは
この作品で挿絵画家として
知られているが、
絵本作家としても
ケイト・グリーナウェイ賞を
2回受賞している。

最後にルイスのことばを
You are never too
old to set another goal
or to dream a new dream.

You don't have a soul.
You are a Soul. You have a body.
- C. S. Lewis
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