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 AUG 2006 レンゲショウマ(蓮華升麻)
キンポウゲ科レンゲショウマ属。学名:Anemonopsis macrophylla

夏の森にひそやかに舞う、高雅な妖精の群れ

10年以上も前になるでしょうか、箱根の湿生花園でチラと見た記憶のある花。
そのとき以来、レンゲショウマの可憐さ、清楚さのイメージは
こころのスクリーンに焼きついて離れることはありませんでした。
身の置きどころもない熱暑の季節。涼やかなイメージをお届けしましょう。

mitake.a

8月21日、この日はどこへ行っても、前日の甲子園の高校野球決勝戦、
大接戦の試合の話題一色に日本じゅうが塗りつぶされた日の翌日。
決勝戦再試合を見るには心臓がどうにかなってしまう心配があり(?)、
わたしは朝一番で奥多摩へ向かう電車に乗りました。
台風10号は列島から逸れ、雷雨の心配もほぼなくなって、お天気はようやく安定。
各地で35℃という残暑が云われるときではありましたが。
(御岳山、標高929メートル。早朝の山のうえは22℃でした)。

mitake.b

かつて知人が感動をもって語ってくれた御岳山のレンゲショウマ。
ラジオで、たまたま、7月末日から9月3日まで「レンゲショウマまつり」が
おこなわれているとの情報を得ました。8月下旬ごろがもっとも見ごろという。
この機にわたしも自分の目で見たい、押しかける人の群れを避けるには、
土曜・日曜のあとの月曜、この日しかない! というわけ。
(それでも、アマ・プロのカメラマンがワンサカ、わんさか)
さて、この花の奇跡のような美しさは、百万言を費やすよりは、
見ていただくしかありません。
多くの画像を差し込みましたが、遺憾ながら、
わたしの撮影技術には限界があります。
もっとダイナミックにこの花をご覧になりたいという方は、
「かんてんばばガーデン」のレンゲショウマのスライドショーはいかがでしょうか。
http://nick21.hp.infoseek.co.jp/renge_syo/renge_syo.htm
清楚さと高雅さを一点に集めてかためたような愛らしい花ですが、
どうでしょうか、自分の美しさを知らず、下うつむいて恥らうかのよう。
こころの思いをことばにできず、ただ控えめに、涙をいっぱいためた目を上げ、
悲しげに訴えかける可憐な少女のような魅力。

ケーブルカーを登りきり、売店をぐるりとまわるようにしてその背後に。
広い北側斜面は落葉樹林になっていて、湿気高いその林床に約5万株が自生、
夏の木漏れ日のそよぎに合わせて、細長い花茎の先で、たよりなげに
かわいい首を振って呼吸する姿は、無垢な妖精のつつましい舞いを見るよう。
金緑色のま~るいツボミも、なんともかわいい。
ここでは9月上旬まで花が見られるそうです。

なお、この山では、レンゲショウマのほか、この季節ですと、
ツリガネニンジンに似た紫色のソバナや、
ヤマホトトギス(ヤマジノホトトギス)、
秋海棠、そのほか、とりどりの花が澄んだ色を競っていますし、
早春のころにはカタクリの群生、梅雨期のアジサイもたのしみ。
また、多摩川が岩を食んでまっ白なしぶきをたてる渓流を見下ろす
日本画家・川合玉堂さんの美術館ですごすひとときも、ゆかしくすばらしい。
【2006年08月22日】



     
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 JULY 2006 ギンリョウソウ(銀竜草)
Monotropastrum イチヤクソウ科

暗い木の下蔭で見た銀色に光る妖精

尾瀬の至仏山からの下山路、尾瀬ヶ原の渺々たる緑の広がりと
青い空を映す池塘を眼下にするけわしい道のわき、
うす暗く、一年じゅう陽光の射すことのない木の下蔭で、
たまたま目にとまった花(?…花と云えるのだろうか)。
みずみずしい色を見せる高原の花々を撮影することをひとつの楽しみにしての登山。
だから、ちょっとヘンテコリンなキノコ、と思って、
あまり気もないままレンズを向けたのがこれ。
ギンリョウソウ(銀竜草)というのだそうだ。

ginryusoh
事実、「ユウレイタケ」という別名があるほどで、
知識に乏しいわたしが「キノコ」と思い違いをしたとしても、
あながち責められねばならぬほどのことではないように思うのですが。
あとで友人に訊くと、これを見たとはたいへんラッキーで、
何度も尾瀬に来ている人でもめったに見ていない、とか。
いっしょに行った案内役の友人さえ、見ていなかった。
足に痛みをおぼえ、すっかりヘタばって青息吐息、もうダメと、
よろよろと下っているときにふと目にとめた、というもの。

で、これはキノコではなく、れっきとした被子植物なんですって。
落ち葉が腐食したところに生える菌類と共生し、
それを栄養素として摂取して育ち、最後、秋には茎が倒れてつぶれ、
その中にあったタネがホウセンカのようにはじけて飛んで子孫を残す
という仕組み。「ナンバンギセル」(写真・下)と同類の腐生植物の一種か。
(萬葉集で「思ひ草」として詠われている妙ちきりんな花)
なるほど、じめじめした暗いところ、あまり人の寄りつかないところで発見した。
ごらんのように、気高いほどに透き通った、きれいなホワイトシルバーで、
丈は15~20センチほど。暗やみに生きる妖精のようにキラッと光る。
葉緑素はまったく持たない。葉を見ると、ウロコのようになっている。
このことから、人はこれを銀色の竜に似ていると見て「銀竜草」と命名した。
しかし、どうだろうか、わたしにはどうしても「竜」には見えないのだが。
もっとも、竜そのものをこの年になるまで見たことはないのだが。
禁じられるまでもなく、これを自宅まで持って帰る気持ちにはなれないけれど、
人によってはこれを栽培して薬として使い、おカネ儲けをしているらしい。
高価なもので、強壮・強精、鎮咳作用にテキメンの効果ありとか。
manyo-omoigusa.jpg



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 MAY 2005 オキナグサ(翁草)

キンポウゲ科オキナグサ属 多年草
学名:pulsatilla cernue (西洋オキナグサ)
okinagusa8

咲きはじめて少しすると、まるで恥らうかのようにうつむいて咲き、
うぶ毛のような銀毛のガウンを茎や葉にびっしりまとうすがたを見せる花。
「純情可憐な乙女のよう」といわれる花。
花ことばは「告げる恋」「華麗」。
そのロマンあふれるイメージは、各地のさまざまな呼び方を含め、
老いたものの印象を放つその名とはどうもしっくりしないように思われる。
画像で見るように、絹のようにつやつやした光沢を見せる
細かな毛をもって「翁」とする人もいるが、それは間違い。
咲き終わったあとにあらわれる特徴のある翁ひげから
その名を「オキナグサ」と呼ばれるようになった。
時期を終わると、うつむいていた花はまっすぐ上を向き、
お習字の筆先のような形をつくり、中の種子を抱いて保護する。
種子の一つひとつに3~5センチの花柱が伸び、それに白い羽毛が密生する。
夏の風に乗って種子は綿毛とともに遠くへ運ばれていく風媒花のひとつ。
きれいな色を見せる花である。花びらのように見えるのは、花弁ではない。
花弁は退化してしまって、もうない。
あれは、クリスマスローズなどと同じの、がく(咢)だという。
それにしても、なんと美しい形を見せる咢片ではないか!
この花、今日では絶滅危惧Ⅱ類のひとつに挙げられている貴重種である。
かつては日本各地で見られたが、最近は、自生地はごく限られているそうだ。

okinagusa7

宮澤賢治の描くオキナグサについてはすでに紹介した。これは、
そのほかさまざまな文芸にあらわれていて、たとえば、斎藤茂吉の「赤光」には、
おきな草 口あかく咲く 野の道に
光ながれて 我ら行きつも
と表現されている。万葉集巻十四、3508番の東歌には、読み人しらずで、
芝付の御宇良崎なるねっこ草
相見ずあらば吾恋ひめやも
というのがある。「ねっこ草」はオキナグサにほかならない。
オキナグサには地方によりさまざまな呼び方があることは先に述べたが、
それらのほか、鹿児島では「オネコ」「オネゴ」「オネコグサ」「ネコバナ」
などと呼んでいることを、柳田国男は「野草雑記」で報告していて、
これはどうやら「根」との因縁があることが推測される。
わたしは見たことはないが、太いしっかりした根をもっているらしい。
中国では、夏のころその根を採取して乾燥し、
「白頭翁」(はくとうおう)という漢方薬をつくっている。
煎薬にして服すと、熱をともなう下痢などにはたいへん薬効があるとされる。
薬になるくらいだから、毒も併せもっている。
アネモニンという毒素を含み、葉や茎からでる汁を皮膚にあてると、
肌の弱い人は水泡をつくることがあるとか。
このことに関連するかどうか、たしかではないが、
秋田のほうではこのオキナグサのことを「ウバケヤケヤ」、
または「ケヤケヤ」などと呼ぶそうだ。
「ケヤケヤ」とは「かゆい、かゆい」の方言である。
この花にふれると痒みを生じるとこから生まれた名と考えられる。
「ケンケハラシ」「ジジコハラシ」「カエッポハラシ」と呼ぶときの「ハラシ」も、
ふれると皮膚が「腫れる」ことに由縁するものだろう。

okinagusa9

さて、忘れてはいけない、万葉集の歌のほうだが、意味は、
ねっこ草のようにつつましく可憐なあの娘に逢うことがなかったなら、
わたしはこんなに恋に苦しむことはなかったのに…、といったところ。
しかし、そこは万葉集ですから、ウラが隠されています。
「ねっこ」「相(逢い)見ず」とくれば、これは共寝以外ではありえない。
あの日、親しく共寝をした可愛い娘のことが忘れられない、という
未成年者お断りのロマンの世界である。
場所は、神奈川県の三浦半島の岬あたりか。
万葉の時代以来、オキナグサは恋のイメージと結びつけて語られてきたことがわかる。
服部富子が歌った「満州娘」にあらわれた「迎春花」(インチュンホワ)を
すでに紹介したが、西条八十=作詞、古賀政男=作曲の「迎春歌」もある。


   1.窓をあければ アカシアの
    青い芽をふく 春の風
    ペチカ歌えよ 別れの歌を
    春が来る来る 迎春花(インチュンホワ)

   3.春を知らせる 花ならば
    人のこころも わかるはず
    今宵かのきみ なにをか思う
    われにささやけ 迎春花(インチュンホワ)

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October 2004 ホトトギス(杜鵑)
ユリ科ホトトギス属 多年草 英名: Toad-Lily

紅葉した木々の下かげに、目立つことなくひっそりと咲き、
その慎ましやかな印象に惹かれて、もう一度見てみたいと行ってみると、
もう、はかなく消えている――、そんな花。

hototo-1.jpg

萬葉集のこんな歌を思い出しませんか。額田王の、

   古(いにしへ)に恋ふらむ鳥は霍公鳥(ほととぎす)
     けだしや鳴きしわが念(おも)へるごと

あるいは、巻十九に10首あまり集中的に見られるのだが、

  霍公鳥(ほととぎす)飛幡(とばた)の浦にしく波のしくしく君を見むよしもがな(3772)
  霍公鳥 夜鳴きをしつつ吾が背子を安いなねしめ ゆめこころあれ(4179)
  霍公鳥 来鳴きとよめば草とらむ 花橘をやどはうゑずて(4172)  

いやいや、萬葉集の歌は知らないでも、徳川家康の、
    鳴かぬなら鳴くまで待とふ時鳥(ほととぎす)
なら知らぬひとはないでしょう。ここでいうホトトギスとは「テッペンカケタカ」と
鳴くとされる、初夏の訪れを告げるあの鳥のことですが、
こちらは、花のホトトギス。日本には10種ほどあるといわれ、ここでご紹介するもののほか、
昨年の夏、谷川岳で偶然見た、これらとも違うヤマホトトギスの画像があるはずなのに、
いくら探しても見つからない。ま、それはいいとして、
ご覧のように、紫色のあざやかな斑点模様が鳥のホトトギスの腹部にあるそれと
似ているところから名づけられたであろうことは容易に推測される。
印象的な斑点ですね。
ところが、英名を見てください。Toadといったら、これ、ヒキガエルのことですよ。
「ヒキガエルゆり」…、日本人の美意識からはちょっとカンベン願いたい名前。
花ことばは「永遠にあなたのもの」。
こんなふうに云ってくれるひとがいたらなぁ~!

hototo-2.jpg

ホトトギスといえば、正岡子規や高浜虚子らの俳句雑誌「ホトトギス」や、
徳富蘆花の「不如帰」を想起されるひとが多いことでしょう。
ここまでに挙げてきた漢字で表記される霍公鳥、時鳥、不如帰のほかに、
じつにたくさんの書き方がされています。杜宇、杜鵑などもときどき目につくほか、
中国では、蜀魂、蜀鳥、杜魄、蜀魄などとも書くそうだ。それだけではない、
文学作品のなかでは、卯月鳥、早苗鳥、あやめ鳥、橘鳥、時つ鳥、いもせ鳥、たま迎鳥…、
などなど、これらはいずれもホトトギスのことで、
日本の四季のゆたかさを伝える異名となっている。
どうしても、花のほうではなく、鳥のほうのホトトギスですね。

hototo-3.jpg

こうなったら仕方ありません、もうひとつ鳥のほうで…。
「弟(オトト)恋し」という民話をご存知ありませんか。

ある山の奥に若い兄と弟が仲良く暮らしていました。(親に死なれたか、棄てられたか)
兄のほうは生まれたときから目が不自由でした。
弟が盲目の兄の手足になっていろいろ世話をやいていました。
ある日、弟は、山に入って、めったには見られないたいへん貴重な食べ物を見つけました。
(何だったかなぁ…。山イモ?)
家に帰り、弟はさっそくそれを兄に食べさせました。
「これはうまい。こんなうまいものはこれまでに食ったことがない」
といって兄は喜んで食べました。
一方、弟のほうは、すこし離れて、隠れるようにして食べています。
兄は不審に思い、目の見えぬ自分に隠れて、
自分のものよりもっとうまいものを食べているに違いないと疑い、きびしい口論となり、
揚句、兄は鎌で弟を殺してしまいます。
あとで、死んだ弟の腹を調べてみると、皮や根毛などのクズばかりだったことを知る。
うまいところを兄に、自分はふつうには食べないようなところばかりを食べていた弟。
弟の真意を知り、わが身の卑しさを恥じた兄は、外へ飛び出し、
弟の名を声のかぎりに叫んで、山のなかを走りまわるうち、盲目の悲しさ、
高い崖から落ちて死ぬ。あまりに叫んだため、咽喉から血がほとばしり出て、
胸のあたりに散って赤い斑をなした。
兄の魂は、その後、鳥(ホトトギス)になって、「弟恋し」「弟恋し」と鳴きつづけている、…そうです。

結局、鳥のことを書くことになってしまいましたね。まずい、マズイ。


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September 2004 ヒゴタイ
キク科 学名:Echinops setifer Iljin

higotai-a.jpg

ラボのサマーキャンプで九州の湯坪に行ったひとなら、
きっとこれをたくさん見ているに違いない。
いまでこそ改良種が全国どこでも見られますが、
もともとは阿蘇・九重に特有の花、高原植物の一種です。
ピンポン珠ほどの大きさの球花の、ネギぼうずのような特徴あるかたちを見せ、
涼しげで、なんともさわやかなうす紫色の花。
茎はまっすぐに立ち、枝葉き少ない。
葉を見ればわかるとおり、アザミに似て厚く、
キク科の花で、8~9月がこの花の季節。
切り花として観賞されるほか、ドライフラワーにされることも多い。
みなさんは、産山(うぶやま)の名を覚えておいででしょうか。
ある時期まで九州のラボ・キャンプはそこでおこなわれていました。
水源の清い水をつかったそうめん流しを楽しんだ忘れがたい思い出も。
この産山の村花がこのヒゴタイ。
〝ヒゴタイ公園キャンプ村〟というりっぱな施設があり、
8月はじめのころにヒゴタイ祭りが催されます。
さまざまなイヴェントや大花火大会もあって、たいへんな賑わいとか。

higotai-b.jpg

「ヒゴタイ」――さあ、この名は何に依るのでしょうか。
漢字で書くと「平江帯」となるらしい。なんじゃろか?
がんこもので意地っぱりな熊本出身の男がぐっと胸を張っていいました、
「おいどんは肥後もっこすたい」…〝もっこす〟を省いて「ヒゴタイ」?
そんな根拠もない鄙語(ひご)をびご(寝語)るから、あんたは
いつまでたっても神さまの庇護を受けられないのさ、
もすこし(もっこす)引込んでろ、ばか。

それにつけても、阿蘇の秋のはじめはすばらしいですよ。
このヒゴタイのほか、リンドウ、アキノキリンソウ、マツムシソウ、
ヤマラッキョウ、コスモス…などなど、可憐な花々が草原の風のなか、
ののの~ん、ののの~んと首をふっています。



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August 2004 デュランタ
デュランタ・タカラズカ 学名:Duranta repens 別名:タイワン・レンギョウ
クマツヅラ科デュラン属

Duranta-a.jpg

熱暑で茹る町。眩暈が襲う。ふと目をとめた家の生垣に
すっきりと涼しそうな印象の色がとびこんできた。
目を近づけて見ると、花径は1センチ足らず、
かわいい小さな花が房状に咲いている。
深い青紫にくっきりとした白い縁どりが見られる。
ユリなどの大きな花より、わたしはどうやらこの種の
可憐さ、弱々しさを見せる小さな花が好きらしい。
刺激的な赤を誇らしげに主張する花はどうも好きになれない。
デュランタ・タカラズカ。これがもっともポピュラーな国産種。
このほかの国内で見られるデュランタは、
白い花をつけるアルバ、葉に班のはいったバリエガタ、
葉の色がうす黄みどりのライムなど。

Duranta-b.jpg

じつを申せば、この「デュランタ」という名が気になっていた。
千住真理子さんの持つ至宝のヴァイオリンが
ストラディヴァリウスの「デュランティ」。
何かこの花とその名器とのあいだに関係があるのではないか、…という。
しかし、いかなる努力も空しく、納得のいく理解は得られず、
その関係性は見出せなかった。
真理ちゃんへの片恋もいいかげんにしないといけないと思い知らされた次第。

原産地は中南米で、米フロリダやブラジル、西インド諸島。
日本には明治の中期にはいってきたとされる。
4月から9月までと長い花期が楽しめる。
7月18日が誕生花で、花ことばは「あなたを見守る」だそうだ。
この花を見た日は、見えない存在に見守られ、きっといいことがあるに違いない。
なお、花のあとも楽しみはつづく。オレンジ色の、
つやのある、小粒の果実が房状について、たいへんかわいい。
また、「デュランタ」という名前であるが、
これは、ローマ法皇の侍医であり、同時に植物学者でもあった
デュランテスさんという人の名に由来するという。


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July 2004 コウホネ(河骨)
スイレン科コウホネ属 学名:Nuphar Japonicum

kouhone-c.jpg

あのあでやかなスイレン、ハスをイメージするひとには、
直径5センチほどの小さな花をつけるこのハスは想像しにくいかも知れない。
多年性宿根生草木。写真は箱根・仙石原の湿生花園の池で見たもの。
サイジョウコウホネ(西条河骨)と案内されていた。
高原の夏をつげる花のひとつで、澄んだ風に洗われて誇るがごとく
その色を水のうえに見せていた。
その黄色は不純なものの一切を取り除いたような、まじりけないもので、
見るものの視神経を清い水で洗ってくれるような、研ぎ澄まされた鮮やかさを見せる。
花弁のように見えるのは、じつはガク片で、5枚あり、
花の時期がすぎると緑色に変わるという。
花の時期は長く、6月から8月末ごろまで楽しませてくれる。

kouhone-a.jpg

それにしても、コウホネという名。
もうちょっとかわいい名前はつけられなかったものかと思うが、
それは根茎に由来するらしい。わさびにも似た黒褐色の太い根茎。
しかし水が干上がり直射日光に当たって乾燥されると、
内部の白いところが現われ、それが動物の骨か何かのように見えるらしい。
川のなかに転がっている骨、そんなところから名づけられたとか。
原産地は日本で、このサイジョウコウホネという種類は東広島市で生まれたという。
ちょっと気持ちの悪い根茎だが、これにはアルカロイド系のヌファリジン、
あるいはデオキシヌファリジンという物質がたくさん含まれていて、
広く薬用に供せられている。浄血薬、止血薬として婦人病に使われるほか、
疲労回復の強壮剤として、また発汗効果があることから風邪薬としても使われている。
また、アイヌの人びとは、コウホネのこの根茎を夏のあいだにとって干し、
冬場の保存食にしたともされる。
あるいは、厳冬のころ、川や沼に張った氷を割って、
底に沈んでいるそれを採取するとも。(2004.7.16)
【関連】「ウの眼―〈4〉」


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JUNE 2004 サルビアレウカンサ
シソ科サルビア属 学名:Salvia Leucantha 英名:Mexican Bush Sage

SalviaLeucanths-b.jpg

「アメジストセージ」の名のほうが一般的かもしれない。
宿根多年草のハーブの一種。
綿に包まれたような紫色のビロード状の花びらがきれいです。
これは横浜・山手の港の見える丘公園,そのローズガーデンの一角で見たものです。
背後に見えるのが文明開化時代をしのぶ県指定の有形文化財のイギリス館。
で,この花のことをご存知の方は不思議に思われるかも知れません。
ふつうには,この花は,夏の熱暑に耐えたあと,あまり花のない時期に
コスモスなどといっしょに咲いています。
6月の初旬,どうしてこの梅雨期に開花しているのかはよくわかりません。
横浜の汐の香りが誘いだしたものでしょうか。
原産地は地中海沿岸ともいいメキシコともいう。正解はわかりません。
花ことばも聞いたことがありません。どなたかご存知でしょうか。
ここで見る観賞用の花のほか,香辛料や薬用にも利用されています。
扁桃炎や風邪に薬効があるとか。

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May 2004 カタクリ
ユリ科/学名:Erythonium Japonicum Decne

ピーンと反りかえった花弁。可憐です。個性的な花です。
なんともいえぬ風韻に満ち,凜としたたたずまいのうちに,
しなやかな踊り,はかなげな舞いを見せてくれます。
その優美なすがたを蕭寥たる山かげでたまたま見出そうものなら,
もう,感激で思わず泣いてしまいます。
高山植物の女王と称えられるコマクサとともに
わたしのもっとも愛する花のひとつ。
おさなしてわがふるさとの山に見し
片栗咲けりみちのくの山に
 (三ケ島葭子)
アララギ派の歌人である三ケ島葭子(よしこ)のふるさとは現在の埼玉県所沢市。
所沢をみちのくと呼ぶには今の感覚では無理がありますが,
この人が生きた明治~大正初期は,そんな僻遠なところだったのでしょう。
恋の乱れを花に託してうたった歌人。

katakuri-a.jpg

それはともかく,長い花茎の先にユリに似た紫紅色の花をつける花。
春の妖精スプリング・エフェメラルと呼ばれることもあるこの花。
春の訪れとともに芽を出し,花を咲かせますが,
アッという間に消えて,あとは土の下で永い眠りを眠ります。
たいへんデリケートな妖精でして,
そのはかなげな風情がたまらない魅力。
気温や太陽の光にたいへん敏感です。
夜が明け,気温が少しずつ上がってくるころに花を開き,
日が落ちるとぴったり閉じて,静かな眠りに入ります。
春雨のふりつぐ中にみづみづしく
一日閉じたるかたくりの花
(土屋文明)
春の天気は気まぐれ。突然の雨や雪が降ってくると,いそぎ花を閉じます。
幼い愛児を胸にいだくように,そうやってオシベ・メシベを守っているんでしょうね。
花期は4月から5月。もともと寒地の花で,北海道や本州北部の山野に主として見られ,
とりわけ日本海側の多雪地帯のものが美しいとされています。
こんな気品ある妖精を愛してやまないのは,なにもわたしだけではありません。
ギフチョウ。ほら,春の女神とも呼ばれるギフチョウがこの花をたいそうお好き。
よほど高雅な香りがするのか,カタクリの蜜をことのほか愛しておいでなさる。
さすがにわたしは,蜜を味わうまではしておりませんけれど。
首都圏で見られる群生地としては,城山カタクリの里(神奈川県津久井郡城山町)。
行きやすいですが,もう時期は過ぎてしまったはず。

katakuri-b.jpg

5月上旬ですと,五竜かたくり苑(長野県白馬村)がいいでしょうか。
秋田,岩手,青森,北海道にすばらしい群生地があると耳にするなかで,
北海道旭川市の男山自然公園に最大の群生地があるとか。
ただし,わたしは,群生地で見るカタクリに感動したことはありません。
やはり,巧まざる自然さがないと…。
それはなかなか贅沢で得がたいチャンスなのですが,
ふだんだれも近づかない藪かげに,雪どけのあと奇跡のようにポッと咲いている
そんなしめやかさが最高でしょう,…しのぶ恋のように…。
で,花ことばが「初恋」というわけ。
や~,若い日の初恋の甘酸っぱい感傷を呼び覚ましてくれる風情とは思いませんか。
最後に挙げておかねばならないのが,やはりこの古歌でしょうか。
3月26日の日記「春を詠む古歌」ですでにご紹介済みですが,もう一度。
もののふの八十おとめらが汲みまがふ
寺井のうへの堅香子(かたかご)の花

(萬葉集/大伴家持)
「堅香子」はカタクリの古称。「もののふの」は「八十」(やそ)にかかる枕詞。
なお,片栗粉はもとこの花の球根からとったものですが,
今の市販品のほとんどはジャガイモのでんぷんから作っているそうです。


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April 2004 ヒナゲシ(ポピー)
ケシ科/学名 papaver rhoca ヨーロッパ原産

popy-g.jpg

ポピー、またはヒナゲシの名で親しまれ愛されているこの花。
つぼみは恥じらうかのように下を向き,表面にはうっすらとうぶ毛のようなものがおおう。
しかし開花のときはそのつぼみはポッカリ二つに割れて
いきなりハッとさせられる鮮やかな色を見せる。
美しいその色はもちろんのこと、花弁が薄く、痛々しいほど弱々しく可憐で、
風になぶられて花弁をゆすっていると、たまらなく手を添えて助けてあげたくなる、
そんなケナゲな花。やさしげな花。
そう、花ことばを調べてみたら「慰め」「いたわり」「思いやり」とありました。

一方、この花にはたくさんの別な呼び方、表記の仕方があります。
それだけいろいろな人のいろいろな思いがこもっているということでしょうか。
まず思い浮かぶのは、与謝野晶子の歌、

   ああ皐月(さつき) 仏蘭西の野は火の色す
      君も雛罌粟(コクリコ) われも雛罌粟

この「コクリコ」(雛罌粟)がヒナゲシのことですし、
ケシを「芥子」と書くこともありますね。
「芥子粒」「芥子人形」などのように使われ、
一般的には細かいことをあらわしているようですね。
また、ちょっとロマンチックで悲しさをそそられる「虞美人草」も
このヒナゲシ(ポピー)のこと。
中国の古典『三国志』をお読みになったことのある人ならよくご存知の逸話で、
楚の項羽は漢の劉邦との最後の決戦に際して、絶世の美女・虞妃をともなって臨みます。
劉邦の大軍にすっかり取り囲まれ絶体絶命のピンチ、
いよいよ、というときになり「四面」に「楚歌」を聞きながら
虞妃は自刃して果てます。
その天のものとも思われる美しい屍体のうえに、ポッとなよやかな花が咲いた。
そのときから人びとはその花を「虞美人草」と読んで
虞妃の貞節を尊んだ、といった話。
夏目漱石にも『虞美人草』という作品がありますが、
こちらはどうやら特に意味はなく、
ひょいと思いついてつけた題名というに近いようです。
さて、あなたならこの愛らしい花をどう呼びますか。

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March 2004 クリスマスローズ
Christmas Rose / 学名 Helleborus キンポウゲ科

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華やぎの気分に満ちた名をもつわりには
藪かげや落葉樹の下などにひっそりと咲いている花。
寒く,風通し悪く,日照の少ないところを好むというから,
目立つことの嫌いなわたしみたい!
「雪起こし」という別名があるほどに,春浅く,まだ寒さの残る時期に見られる。
上品である。高雅である。○○さんのように清楚で,
泣いているのか,恥じているのか,なぜか,うつむき加減につつましげに咲く。
花ことばは「慰め」。
見て慰められるよりは,「しっかりね」と慰めてあげたくなるような繊弱さ。
白のほか,ピンク,紫,黒なども見られる。
クリスマスの時期でもないのに,どうして…,という向きもあろうかと思いますが,
クリスマスのころに咲く種はヘレボレス・ニゲルといい,
これは白い花である。
さて,「ニゲル」とはニグロ,ニガーから連想されるように「黒い」という意味。
花弁は抜けるような純白なのに,なぜ「黒」なのか。
…それは,花ではなくて根のことをいうらしい。この根は黒く,毒性があり,
中世にはこれを薬用に,あるいは魔除けに多用していたようだ。
学名のヘレボレスでわかるように,原産地は地中海沿岸で,
ヘレニズム時代からある由緒正しい花。
アテナ女神やアフロディーテ,ダナエやアリアドネ,それにたくさんのニンフたち,
プロメテウスやヘラクレス,オデュッセウス――。
…あのギリシアの神々や英雄たちもこの花を見ていたかなあ。
そういえば,ギリシアのアテネに行ったことのある人は
パルテノン神殿わきの空き地の石くれの陰に,シクラメンとともに
この花がポツリと咲いていたのに気づいた人がいるかも知れませんが…。

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February 2004 アネモネ
Anemone Coronaria キンポウゲ科

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寒風をさけた日だまりにほっかりあざやかな色を浮かべて笑みを寄せる花。
なんという可憐さ,なんという繊弱さ。
ピューッと吹きつける風に,はかなく花びらを落としてしまう。
原産地は地中海沿岸。ギリシア語で風のことを「アネモス」という。
どうやらそのへんに関係がありそうで,古代ローマでは春をつげる花として
ヴィーナスの神殿によく捧げられたという。
花ことばは「はかない恋」とか。ほら,美の女神アフロディーテが美少年アドニスを愛したでしょ。
ゼウスの嫉妬か,イノシシの牙に掛けられてアドニスは死の国へ送られます。
アフロディーテはその死を悲しんで,アドニスが流した血をアネモネに変えたという。
その悲しい神話をしのばせる「はかない恋」だが,人にはそれぞれ都合というものがあり,
ほかにも「きみを愛す」「期待」「真実」という意味もあるという。
うちの姉もねぇ,困ったものよ,また失恋しちゃった,
…なんてつまらんダジャレをとばすの,だ~れ?

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