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sayob


〔川とノリオ/パパ、ママ、バイバイ/貝になった子ども/モモちゃんとアカネちゃんシリーズ〕




3-4★「川とノリオ」いぬいとみこ
  ――それでも、川はさらさら、さらさらと…――

小夜/詩のようにきれい。「早春。あったかいかあちゃんのはんてんの中で、ノリオは川のにおいをかいだ。……ほっぺたの上のなみだのあとに、川風がすうすうと冷たかった」
がの/「川っぷちのわかいヤナギには、銀いろの芽がもう大きかった」。抒情的な散文詩というか、歌のようというか。そう、そのまま童謡にして歌いたくなるような、やさしい、ひびきのいい文章ですね。
小夜/ノリオちゃんは赤ちゃん。おかあさんの背中におんぶしてもらっているんですね。おかあさんは川で洗いものをしています。いなかののどやかな風景です。
がの/でも、すぐつぎの場面に移りますよ。「ススキの穂が川っぷちの旗をふった。ふさふさゆれる三角旗を」。
小夜/ススキの穂といいますから、秋の深まったころ。
がの/これがどういうことか、小夜ちゃん、わかりますか。
小夜/川は秋になるとたくさん、たくさんのススキの穂でふちどられる、と。
がの/いいえ。ススキの銀色の波に見送られながら、おとうさんが出征していくんですよ。映画やテレビで見たことがあるでしょう、駅頭などでたくさんの人の「バンザーイ」「バンザーイ!」の声に見送られ、ちぎれるほど振られる旗のなか、兵隊さんが戦地へ赴いていくシーンを。
小夜/ノリオちゃんのおとうさんは「バンザーイ」の声ではなく、銀いろのススキの波のそよぎに送られて戦争に行ったのですね。うわ~っ、さびしい。
がの/おかあさんと、おかあさんにだっこされたノリオに見送られて。「ぬれたかあちゃんの黒目にうつって、赤トンボがすいすい飛んでいった」…。う~ん、さびしいねぇ。
小夜/そのあと、ノリオちゃんは2歳になります。つぎつぎにオイタをしますが、そのたびにおかあさんの手で小さなおしりをペンペンされます。
がの/川とすっかり仲良しになって、ノリオは一日じゅう川とあそびます。金色の光につつまれた、健康な、幼い神さまですね。無垢なこころですくすく育っていきます。
小夜/でも、川で無心にあそぶその幼い神さまの頭のうえ、青い空にB29が飛びかうようになります。そして、遠くでキラッと光るものをノリオちゃんは見ました。
がの/8月6日。その日、汽車で広島へ出かけたおかあさんは、暗くなっても帰ってきませんでした。
小夜/運がわるいんですねぇ、選りに選ってその日に行くなんて。じいちゃんが広島へ探しに行きますが、熱風に溶かされてしまったのか、なにひとつ跡を残さずに…。
がの/秋になります。川のふちのしげみで、昼間からコオロギがリリリリリ…、と鳴いています。「ススキがまた、銀いろの旗をふり、とうちゃんが戦地から帰ってきた」。ススキに見送られ、またススキに迎えられて、おとうさんは帰ってきました。
小夜/ウウーッ。小さな箱に入って。
がの/川は、その日も、さらさら、さらさら、いつもの歌をうたっていました。
小夜/15~16ページしかない短いおはなしですが、たくさんのことが語られているんですね。ノリオちゃんのいたいけなすがたと、描かれてはいませんが、そのまわりでおきているたいへんなこととの対比があまりにもあざやかなので、すごく印象に残ります。哀しいですけれど、その一方、まっ白なススキの穂につつまれて風をあびているようにさわやかな気分です。
がの/この本には、ほかにも8篇の作品が入っています。小夜ちゃんは、ほかにはどのおはなしがよかったですか。
小夜/そうですね、最後の「回転木馬と枯れ木の山と…」。これは東京大空襲がバックになっていますが、ほら、長谷川集平さんの、ピカソが描く絵のような挿し絵が、おはなしの幻想性とぴったりしていて、いいなあ、と思いました。
がの/なんだか、この作家は淡々と書いておられますが、どれもすごいおはなしです。「トビウオのぼうやは病気です」は、ビキニ環礁でおこなわれたアメリカの水爆実験(1954年3月1日)のことが背景になっています。元気なトビウオのぼうやは、白い粉の降ってくる海のうえをスイーッ、スイーッと飛んであそんでいますよ。もう、夢中です。でも、そのあと、マグロやフカ、そのほかいろいろなお魚が、毎日毎日、潮に乗って海面を流れていきます。そしてトビウオのぼうやは、サンゴの林のかげで病気で寝たままになります。
小夜/放射能を浴びたのですね。
がの/この実験がおこなわれたとき、死の灰を浴びたのはトビウオのぼうややお魚たちだけではありません。日本のマグロ漁船の船員さん23人も、お仕事をしながらその灰を受けてしまいました。久保山さんという人は半年後に亡くなっているんです。
小夜/戦争はもう終わったのに、そんな形でまだつづいているのですね。
がの/「キノコの町」も、愉快そうに書かれていますが、ほんとうはおそろしいことを暗示しているのですよ。水の底にすむ大ナマズや土の下深くにいるモグラたちはご機嫌ですが、地上には人間も鳥もケモノたちもいなくなって、それまで人間が暮らしていた世界はネズミ色のキノコだけがびっしり生えた町に変わってしまっているのですから。核戦争の恐怖です。
小夜/「休火山」というおはなしも、小夜は好きですよ。ほら、宮澤賢治の「ペンネンネンネンネネムの伝記」や「グスコーブドリの伝記」のような味わいがありますでしょ。火山のことが出てきたりしますし。短いおはなしながら、どれもとてもイメージの大きい、メッセージのはっきりしたおはなしですね。やさしい、詩のようなひびきあることばもすてきです。

※いぬいとみこ「川とノリオ」理論社名作の愛蔵版 絵=長谷川集平
(2005年09月18日)


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3-3★『パパ、ママ、バイバイ』…早乙女勝元
  ――戦後60年、残すべきものと残してはいけないもの――

小夜/だ~れもいませんねぇ。すずかけの木の下のベンチです。う~ん、いい風。
がの/蝉の鳴き声だけ。あとは、ときどき木の葉を裏返してわたる風の音。緑がみずみずしく輝いているし、小さいけれどなかなかいい児童公園です。むこうに小山が見えますね、あれが前方後円墳、古い古い時代のお墓です。このへんには、ほかにも竪穴式住居跡など、弥生時代をしのばせるものがたくさん見られます。
小夜/このあたりなのですね、『パパ、ママ、バイバイ』に書かれているところは。アメリカの戦闘用の飛行機が墜落して、3歳のユーくんや1歳のヤスくんが亡くなりました。おかあさんも、ふたりが亡くなっていることを知らされないまま、あとを追うようにして亡くなりました。
がの/そう。それらしい痕跡はどこにも残っていませんけれど、当時このへん一帯は黒い煙と強烈な臭いに満ちた火の海だったそうですよ。
小夜/このきれいな木たちも、その後に植えられたものなのですね。
がの/小夜ちゃんもおとうさんも、この夏は、過去にあった戦争のことをたくさんお勉強しました。
小夜/ヒロシマのこと、ナガサキのこと、沖縄のこと。
がの/ナチスのアウシュヴィッツ強制収容所やテレジン強制収容所のこと、歴史認識の違いのことから、盧溝橋事件のこと、満州の七三一細菌研究秘密部隊のこと、南京大虐殺のことなど、日本軍が中国や韓国・北朝鮮でおこなってきた残虐な蛮行の数かずを見てきました。小夜ちゃんもがんばりましたね。
小夜/はい、戦争というものの宿命なのでしょうが、人間が人間であることを忘れて差別をし惨いおこないに走るすがたにふれて、なんだか血が凍って何度も泣いてしまいました。アンネ=フランクさん、なんであんな目にあわなければならないのでしょうか。ハーケン・クロイツ(黒い鉤十字)の恐怖、ナチス・ドイツが虐殺したユダヤ人が600万人。途方もない数です。
がの/そういいますけど、日本の15年戦争、あの帝国主義的植民地政策による侵略戦争で犠牲にしたアジアの国ぐにの人びとの数は2000万人以上ですよ。
小夜/死屍累々の歴史のうえに今があるのですね。
がの/でも、それはもう昔のことで忘れてもいい過去というわけではありません。あの戦争は、ここ横浜で起きた事件のような形で、いまもつづいているのです。しかも、遠い外国なんかでなく、小夜ちゃんのおうちのすぐ近くで。
小夜/はい、車で10分とはかかりませんでしたね。
がの/おとうさんがいまのおうちに越してきた年の数年前にあった事件です。厚木の米軍基地を飛び立ったファントム・ジェット戦闘機がこのあたりに墜落、電柱やおうちをなぎ倒し、アスファルト道路をえぐるようにして、めりこんだまま突っ走り、大爆発を起こしました。なにしろマッハ2.4という最大限の速度で重さ26トンの物体が飛んできたというわけですからね。
小夜/おとうさん、怖いわ!
がの/ドラムカンに65本分のジェット燃料を積んでいましたから、たちまちキノコ形のまっ黒の煙が立ち、つづいて真っ赤な炎が町を包み、雷のようなゴオーッとすさまじい音がしたそうですよ。
小夜/裕一郎くん、康弘くんの幼い兄弟が亡くなったのはそのときですね。どうしてそんな事故が起きたのでしょうか。
がの/どうしてそれが起きたか? それがわからないことが問題なのです。
小夜/あら、どういうことですか。
がの/戦闘機が墜落すると間もなく、海上自衛隊のヘリコプターが救難にかけつけました。そのすばやさ、タイミングのよさったらありません。みんなその手ぎわよさに驚いたそうです。
小夜/いけませんか、早いのはすばらしいことじゃないですか。
がの/だってね、このあたりは火の海、人びとは火まみれ、血みどろになっているときですよ、空にはふんわりふわりとパラシュートがふたつ浮いていました。墜落する飛行機から脱出したアメリカの兵士のものですね。軍用機は、危険とわかったらボタンひとつで脱出できるようになっているんです。自衛隊のヘリは、ふたりの米兵が着陸すると同時に機内に収容して、ブルンブルンとプロペラを回して飛び去っていったというのね。
小夜/負傷している人がたくさんいるのに、そういう人を救助するのではなく、アメリカの兵隊さんを、ですね。
がの/どこもケガをしていない米兵をまず連れていきました。
小夜/どうして! まっさきにケガをしている人を病院に運ばなければならないじゃないですか。それをやっていれば、ユーくんもヤスくんもきっと助かっていたわ。
がの/すぐつづいてアメリカ軍のヘリが到着しました。その人たちがやって来て、まずやったことは、墜落現場から人びとを「どいて、どいて」と排除することでした。
小夜/人は倒れ、家は燃えている、まるで地獄の絵を見ているようなときに。
がの/いろいろと秘密にしておかなければならないことがあったのでしょう。ですから、警察が駆けつけて事故の調査をしようとしても、もう証拠になるようなものは何もないんです。事故の原因と思われる不備のあったエンジンも、その他の部品も、すっかり米軍基地に運び去ってしまったあとでした。基地の中までは警察も入れません。
小夜/パラシュートで降りてきたふたりに事情を聞けばいいのに。
がの/そこはぬかりありません。調査の申請をしているあいだに、ふたりはとっくにアメリカに送還されていました。もう手がとどきません。真相は永久に闇の中というわけです。
小夜/へんですね、ここは日本の国なのに。
がの/こういうのはそんなに珍しいことではなく、去年、同じような事件が沖縄で起きています。アメリカの軍用機が沖縄の大学の校舎に衝突したけれど、日本側の調査は拒まれました。これも真相はついにわかりませんね。
小夜/いちばんくやしいのは、日本を守るべき自衛隊のヘリが、なんで瀕死の状態にある日本人のユーくんやヤスくんを助けなかったのかということ。
がの/そうね。それと、おとうさんがいまも疑問に思っているのは、なんでそんなにタイミングよくヘリは事故現場に到着できたのか、ということ。ファントム機に乗っていた兵士から、どうも調子が悪い、墜落しそうだ、どうしよう、というような無線による交信がされていたに違いありません。事故のおこるかなり前からですよ。その連絡を受けてヘリはさっそく発進する態勢に入っていた。そんなゆとりがまだあるなかで、さっさと事故機を乗り捨て、自分ばかりはゆうゆうとパラシュートによる空からの降下を楽しんでいる。そんなゆとりがあるなら、どうしてぎりぎりまでがんばって、町なかを避けてひと気のないところまで機体をもっていこうとしなかったのか、という疑問。
小夜/ずるいわ。自分さえ助かればいいというのでしょうか。
がの/この米軍機墜落事故で幼い子どもふたりをふくむ9人が重軽傷を負いました。
小夜/「パパ、ママ、バイバイ」ということばを残して、病院のベッドで全身を包帯に包まれ、3歳と1歳の男の子はその後間もなく亡くなりました。
がの/3軒の家が丸焼けになり、半分ほど焼けた家が3軒。そのほか、窓ガラスを割られた家、屋根ガワラをこわされた家、車をめちゃめちゃにされた家も。
小夜/ユーくんたちのおかあさんもたいへんでしたね。
がの/おかあさんは全身の約8割の皮膚が焼かれてしまいました。ふつう、人間のからだは半分の皮膚が失われれば生きていられないといわれます。皮膚って、とっても大事なのよ。いたずらをしたとき、つねるためにあるんじゃありませんよ。
小夜/まさかぁ。リンゴの皮をむいてそのままにしておくと、水分がぬけ、黒くなり、すぐ腐ってしまいますね。
がの/人間のからだの60パーセントを占める大事な水分を保ってくれるばかりでなく、内臓を保護したり、外からバイキンが侵入してくるのを防ぐ役目もあります。さあ、このおかあさんは、ほかの人から少しずつ皮膚をもらって移植手術をすることになります。肩ぐるましたら見えるかな、むこうに白い大きな建物があるでしょ、あの大学病院で手術を受けましたよ。
小夜/たくさんの人が皮膚を提供してくれると申し出てくれたそうですね。
がの/ユーくんのおとうさんがいっしょうけんめい新聞などを通じて呼びかけたのね。名刺くらいの大きさの皮膚を腿の部分からとって、それを使ってもらうのですが、1000人以上だそうですよ、「わたしの皮膚を使ってください」と申し出た人は。
小夜/よかった~。勇気のある人たち、善意の人たちなんですねぇ。小夜だったら、ちょっとこわくて…。
がの/おかあさんもがんばりました。バイキンからからだを守るためには、毎日薬浴療法を受けることになります。消毒液や菌を焼く硝酸銀の入ったおふろです。これは痛いらしいですよ。それに、皮膚の移植手術には麻酔は使えません。
小夜/麻酔なしの手術ですか。ま~、たいへん。
がの/麻酔で患者さんが眠ってしまうと、皮膚も活力を失い、眠ってしまうんですって。
小夜/でも、大手術ですよ。それも、何回も何回も。
がの/8時間をかけて1000針を縫うという大手術です。それを1週間に1回ずつ。
小夜/このおかあさんには、ユーくんとヤスくんが亡くなったことは知らせてないんでしたね。
がの/小さいふたりが必死にがんばっているんだ、おかあさんもがんばらねば、ってね。そのがんばりとみんなからの励ましで、おかあさんは日に日によくなっていきました。
小夜/よかった~。もう二度とこんなことはいやですね。
がの/たくさんの人から皮膚を提供していただいて、60回以上もの皮膚移植手術がおこなわれました。手術は成功したように見えましたが、この絵本『パパ、ママ、バイバイ』が出版されて1年、事故の日から数えて4年足らずで、悲しいことにそのおかあさんは亡くなりました。
小夜/やはり、亡くなっちゃうのですね。くやしいわ、小夜は、なんだかとってもくやしいです。どうして自衛隊のヘリコプターはまっ先にケガをした人から助けなかったのか。だって、高い空から見たら、そこがどんなひどい状態か、いちばんよくわかっていたはずじゃありませんか。
がの/60年前に戦争は終わったのですが、こんな形でわたしたちのまわりに残っています。残しておかなければならないものもありますが、残しておいてはいけないものもまだまだたくさんあるんですね。それを見きわめるためには、歴史をきちんとみなければなりません。ドイツもたいへんな間違いを犯しました。ドイツが降伏して40周年になる日、当時の西ドイツの大統領ヴァイツゼッカーは、反省をこめてこんなふうな演説しています、…「過去に目を閉ざす者は、結局のところ現在に対しても盲目となります。非人間的な行為を心に刻もうとしない者は、またそうした危険に陥りやすい」と。(2005年08月23日)

※『パパ ママ バイバイ』早乙女勝元 詩=門倉詇(さとし) 絵=鈴木琢磨 日本図書センター2001年2月刊 (初版1979年) 
                ☆
【Play with meさん 2005.08.24】
小夜ちゃんのおうちの近くでこんなこわいことがおこっていたのですね? 早くこんな事態がなくなりますように!

⇒そうなのです、ちょっとがんばれば小夜にも歩いても行ける距離です。こんどひとりで行ってみようと思っています。いまはわりあい静かですけれど、この町は厚木基地への空の通り道になっているのでしょうか、ときどきゴオーッとすごい音をたてて軍用機が飛んでいきます。今朝も、雲が低かったからでしょうか、ヘリコプターの低空飛行による爆音で目が覚めてしまいました。イラクへの米軍の派兵のころなどは、軍用機の発進がひんぱんで、テレビの音はかき消されてしまいますし、窓ガラスはびりびりとふるえるし、怖いんですよ。沖縄の人なんかはもっとたいへんなんだろうな、と思いました。
                ☆
【Hiromi~さん 2005.08.24】
戦争が終わって60年、忘れられていく事が怖いと思います。おばさんも頑張って、ラボの子や、Takuちゃんに話していきます。

⇒たとえば、ベトナム戦争でアメリカが使った枯れ葉剤は、日本軍の七三一部隊でつかんだデータにもとづいて作られたことが知られています。最近の湾岸戦争、アフガン戦争、イラク戦争、…日本からの軍隊派遣はなかったにしても、アメリカの最新鋭戦闘用爆撃機の過半は日本の基地から飛び立っています。その意味でも、日本が戦争に無関係だとはいえませんですよね。そして、あの戦争以来、兵器の高性能化は飛躍的に進み、大量殺傷力は格段に上がっています。もう、このホームページで戦争のことを書くのは控えようと思いますが、みんなの心にいつも平和への灯火がしっかり輝きつづけることを願わずにはおれません。Takuちゃん、いっしょにがんばりましょうね、小夜もがんばりますよ。

  開けてちょうだい たたくのはあたし
  あっちの戸 こっちの戸 あたしはたたくの
  こわがらないで 見えないあたしを
  だれにも見えない死んだ女の子を

  あたしは死んだの あのヒロシマで
  あのヒロシマで 十年前に
  あのときも七つ いまも七つ
  死んだ子はけっして大きくならないの
     ・・・・(略)・・・・
  戸をたたくのはあたしあたし
  みなさん署名をどうぞしてちょうだい
  炎が子どもを焼かないように
  あまいあめ玉をしゃぶれるように
    ――ナジム・ヒクメット「死んだ女の子」中本信幸・訳――
 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

3-2★「貝になった子ども」…松谷みよ子
  ――哀しい母性の見たものは…

小夜/去年亡くなったいなかのばばちゃま、このお盆にはほんとうに帰っていらっしゃったでしょうか。いつも小夜のこと、かわいがってくださったのに、「さようなら」も「ありがとう」もいっていませんでした。
がの/小夜ちゃんのお誕生日が7月14日。お盆でもありますよね。今年はお誕生日のお祝いをばばちゃまからいただけませんでしたけれど、なんだか深いつながりがありそう。小夜ちゃんは幼稚園の行事の都合もあって、いなかに行けませんでしたが、代わりにおとうさんがばばちゃまの大好きだったお花をいっぱい飾ってさしあげました。「小夜ちゃん、ありがとう」と、盆棚のお灯明のむこうでばばちゃまはニコニコなさって、喜んでお帰りになりました。
小夜/どこへお帰りになったのですか。
がの/そ、それは、……精霊たちの世界です。来年また来てくださると思います。
小夜/小夜がおとうさんにお願いしてお供えしたのはほおずきでした。お盆さまには赤い実のついたものをお供えするのが習わしなのだと、おかあさんがおっしゃっていました。
がの/ちょうちんのように、その赤い実が足元を照らしてくれ、お帰りの道を間違えないで行けるようにね。
小夜/おとうさん、ばばちゃまのおいでになった精霊の世界って、どこにあるのですか。そこで毎日なにをなさっていらっしゃるのですか。それに、子どものまま亡くなったら、白い貝になるというじゃありませんか。
がの/しみじみとこころに残るおはなしでしたね、松谷みよ子さんの「貝になった子ども」という作品。
小夜/短いおはなしなのに、いつまでもこころのなかに残り、すずのように鳴っています。
がの/哀しいけれど、とっても、とってもあたたかいおはなし。
小夜/ある夏、五つになる弥一という男の子が亡くなりました。
がの/弥一ちゃんが死んだなんて、おゆうさんはぜったいに信じません。信じたくなかったのです。
小夜/おゆうさんは、哀しさのあまり気がへんになってしまったのですね。
がの/近所のひとにいきあっても挨拶をしない、…ボーッとしていてまるでデクノボウのようになって…。
小夜/気質のとても明るい、ハキハキとものをいい、テキパキとものごとをするひとだったというのにね、弥一ちゃんが死ぬ以前までは。
がの/あれっ、弥一ちゃんは死んだとは書いてありませんよ。
小夜/そうでした。カゴに入れたトマトやナスを持ったまま、ふーっといなくなってしまったのでしたね。
がの/ある女の子が、川にそう街道を歩いていく弥一ちゃんを見たのを最後に、行方不明になってしまいました。
小夜/おゆうさんが釜の下でぺらぺら燃える火を見つめているとき、ふしぎな幻を見ました。
がの/青い光のなかを、あたまにカゴをかづいた3~4人の子どもが、白い街道をずんずん駆けていきます。
小夜/おゆうさんは、自分でもわからないまま、誘われるようにしてそのあとを追います。追っても追っても追いつけません。
がの/海を見下ろす高い崖のうえまできました。北の海は吸い込まれるような濃い青さをたたえていました。
小夜/そこに石のお地蔵さまがあったのですね。お地蔵さまのれんげ台のうえにはスズメの親子がいました。
がの/その3羽のスズメがふしぎなはなしをしていました。生まれて間もない、まだ何もしらない赤ちゃんや、こころがまっさらで汚れていない子は、死んだあとまた生まれてくるまでのあいだ、白い貝になって海の底にいる、というのね。
小夜/海の底の白い貝。そういえば、生命の始原は海の生物からとよくいわれますよね。小夜は弥一ちゃんと同じ5歳。こころもよごれていません。小夜も白い貝になるのでしょうか。
がの/よしてくださいよ、小夜ちゃんが死んで貝になったら、おかあさんはほんとうに気が狂ってしまいますよ。おとうさんだって。
小夜/おゆうさんは海を見ました。ゆらゆらしている海草の根もとにいくつかの白い貝がしずかに眠っているのを目にしました。
がの/おゆうさんは思わず「弥一!」と叫びました。すると、白い貝の一つがチカリと光ったといいます。
小夜/きっとそれが弥一ちゃんだったのですね。それにしても、生まれたばかりの赤ちゃん、けがれのない子どもって、神さまにも近い超能力を備えているのでしょうか。ほら、『ピーター・パンとウェンディ』を読みなおしたじゃないですか。ラボのおはなしには出てこない、たくさん、たくさんのおもしろいことがありましたね。
がの/あ、そのおはなしは、いつかまた別のときにしましょう。フックはただの乱暴なゴロツキではなく、もと貴族の出身で、高い教養を身につけていたとか…。
小夜/妖精が何から生まれるのか、小夜ははじめて知りました。この世に最初に生まれてきた赤ちゃんがはじめて笑ったとき、その笑いが千、二千のかけらに割れて、それがぴょんぴょん飛んでいく。それが妖精のはじまりですって。
がの/も~、小夜ちゃんのおしゃべりはキリがないんですから。そのおはなしはまたいつか、ね。【2005年07月25日】

※理論社名作の愛蔵版『貝になった子ども』松谷みよ子=作、金井塚道栄=絵 1951年発表 第一回日本児童文学者協会新人賞受賞作 全国学校図書館協議会選定


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3-1★モモちゃんとアカネちゃんシリーズ…松谷みよ子

いずれかの機会に松谷みよ子さんの創作民話「龍の子太郎」のもつ魅力と母性の美しさについて書こうと思ってきました(「物語寸景〔2-2〕にて一部紹介)。それが、どういう流れか、「ふたりのイーダ」「屋根裏部屋の秘密」「あの世からの火」「死の国からのバトン」といった、「歴史認識」にふれた告発の文学をここまでご紹介してきました(あまり突っ込むと「偏向」との批判もあろうかとの配慮から、深く踏み込むことはしませんでしたが)。そんななかで、たまたま、さちこさんから、同じ作家による「モモちゃんシリーズ」を読むことを薦められました。とりあえずは6巻シリーズのうち「ちいさいモモちゃん」と「モモちゃんとアカネちゃん」の2巻のみですが…。

小夜/夏のお休みに入ったら読みます、とさちこさんにお約束しましたが、待ちきれませんでした。
がの/松谷さんの本はこれまでにずいぶんたくさん読んできたつもりでしたが、図書館の書棚には、まだ読んでいないのがもっともっとありましたね。
小夜/「ふたりのイーダ」ほか、このところ読んできた長いおはなしは、小夜にはわからないことが多かったですが、それは、絵本の「まちんと」や「おいでおいで」で書いておられたこととも通じ合う、とっても重いものを突きつけてくるものでした。
がの/そう、「まちんと」も「おいでおいで」も、「ふたりのイーダ」などとならんで戦争児童文学の傑作のひとつです。戦争がどれほど悲惨なもので、どれほど人びとを苦しめたか、それがどれほどムダで愚かしいことかをきびしく告発しています。
小夜/それにくらべると、モモちゃんのおはなしは、なんという明るさ、健康さでしょう。パー~~ッと広がる、光いっぱいの花野にいきなり飛び込んできたような、解放感と喜びにあふれたおはなしの世界で、なんだか、同じ作家が書いた作品とは信じられないくらい。
がの/ほんとうですね。自分のおなかをいためて赤ちゃんを産み、その子をいつくしみ深く育てた母性がなければぜったいに書けないような幼年童話。その喜びと苦しみの体験を共有するひとにとっては、共感をもってよく理解できるでしょうし、たまらない魅力なのではないでしょうか。
小夜/さちこさんの共感もよくわかりますね。小夜のおかあさんもあんなふうだったでしょうか。
がの/そりゃあそうですよ。どんなに小夜ちゃんと出会えたことを喜んだか。ところで、パパさんのことがあまりおはなしに出てきませんね。どうも、影が薄い。おかあさんが赤ちゃんに注ぐ視線のあたたかさにくらべると、おとうさんのは弱いのかなあ。そんなことはないと思うのですが、どうしても、ふだんはおつとめにでていますからね。どんなお仕事をしているおとうさんなのかもわかりません。
小夜/幼稚園のお友だちに明音(あかね)ちゃんがいるでしょ。
がの/はい、お目めのおおきい、ちょっとやせっぽちの…。インテリア・ショップの子でしたね。
小夜/モモちゃんの妹がアカネちゃん。いっしょのお名前ですから、ドキドキしました。でも、けっきょくは、ふたりともとっても可愛いということのほか、あまり関係はありませんでしたね。
がの/まだ少し読んだだけですし、あまりおしゃべりが長くなると、読んでくださる方の迷惑になりますから、きょうは「ちいさいモモちゃん」に限るとして、小夜ちゃんはどこがおもしろかったですか。
小夜/…う~~ん、どこをとってもおもしろいですが、そんなふうにいわれて思いつくのは、およめさんごっこのおはなしでしょうか。モモちゃんの3つのときのおはなし。
がの/そうそう、ママさんのタンスの引き出しから白いレースの布を出して、モモちゃんはかわいいおよめさんになりました。でも、それはママさんが大事にしていた布でしたよ。
小夜/モモちゃんは、もっと小さいころ、黒ネコのプーのおよめさんになろうと考えました。でも3つのおねえちゃまになるころ、それはやめました。それに、プーには白ネコのジャムちゃんというおよめさん候補がいましたし。ですから、つぎに、パパのおよめさんになることにしました。
がの/はは~、そこはだれかさんと同じなんですね。
小夜/だって、小夜はいまだっておとうさんのおよめさんになると決めていますもん。
がの/おかあさんはどうおっしゃっていますか。
小夜/「ふん、ばかネ」といって笑うだけです。ですから、おとうさんもおかあさんも、小夜も小百合ちゃんも、みんないっしょ仲よくけっこんするのがいちばんいいと、小夜は思います。
がの/モモちゃんにコウちゃんみたいなお友だちができたように、小夜ちゃんにもそのうちきっといいお友だちができますよ。
小夜/モモちゃんはパパのおよめさんになるのもやめました。それは、パパがときどき「こらッ!」といって怒るからですって。
がの/およめさんは白いウェディングドレスを着ます。モモちゃんもプーとのおよめさんごっこではすてきなドレスを着ましたね。おむこさんは黒いタキシード。プーはもともとまっ黒ですから、OKです。
小夜/ママさんのタンスから白いレースの布を引っ張り出したモモちゃん。それをあたまからかぶって、もう、得意満面です。お部屋じゅう、廊下も階段も、あっちへ、こっちへ行ったり来たり…。
がの/おむこさんのプーは、およめさんの長いドレスにからまって、ころころ、ばたばた。レースにぐるぐる巻きになってでんぐり返しになったり、動けなくなったり。そして、さあ、たいへん! ママさんがお使いから帰ってきましたよ。
小夜/こわい! しかられる! モモちゃんはおじょうずにうらの原っぱに逃げだしました。
がの/レースにからまって身動きのできないプーは、さっそくママにつかまって、おしりペンペンペンでした。
小夜/原っぱにきたモモちゃんは、そこでおばあさんに出会います。知らないおばあさんかと思ったら、入れ歯をパチンといれると、いつも会っている焼きいも屋さんのおばあさんでした。
がの/ノリがとれちゃって歯がぽこんととれたというのね。
小夜/モモちゃんは、「それならお目めのノリはだいじょうぶなの?」とききます。お目めのノリはしっかりついているんですって。
がの/おもしろいですね、モモちゃんは心配になってすぐおうちに帰ります。おうちではママさんがプンプンです。もう、いたずらの犯人には知らんぷり。
小夜/ママの口のなかをのぞきこんで見ました。ママの歯はしっかりノリでついていて、引っ張っても取れません。おかしくなって、とうとうママも笑いだしてしまいました。
がの/ママがおばあさんになるまでは、歯のノリはとれないと聞いて、その晩、モモちゃんは神さまにお祈りします。
小夜/ママがおばあさんになりませんように、ってね。
がの/こんなかわいいモモちゃんのお尻をペンペンペンするひとはいませんよね。さあ、おかしいおはなしはきりがありません。長いおしゃべりはご迷惑になりますよ。
小夜/でも、そのつぎの水ぼうそうのおはなしもケッサクですよ。モモちゃんのからだじゅうにぶつぶつができました。かゆいかゆいです。ママにお医者さんへ連れていっていただき、泣かずにがまんして注射をしてもらい、ベタベタとからだにオック(おくすり)を塗ってもらっておうちに帰ってきました。
がの/おうちの流しのおけのなかにはキュウリが。モモちゃんはキュウリにたくさんのぽっちん、ぽっちんのイボシボを見つけました。
小夜/キュウリをみんなお縁側にもちだすと、一つひとつにお注射をし、軟膏をぬりつけました。「オックつけてあげますから、泣いてはいけませんよ、おにいちゃんでしょ」とことばをかけながら。
がの/モモちゃん先生は大得意でちっくん、ちっくんと水ぼうそうにかかったキュウリにお注射。でも、ほらほら、どうするのモモちゃん、ママが帰ってきましたよ。

モモちゃんとアカネちゃんのパパを求めて

☆…2冊目の「モモちゃんとアカネちゃん」を読み終えたばかりです。健康なあかるさ、いたいけな無邪気さ、愛らしさに導かれて読んできましたが、エーッ!? という展開に。アカネちゃんを生んだあと、ママさんの寝るおふとんの隅にはいつも死に神がいて、病気がちですし、どうやら、理由は語られていませんが、ママさんとパパさんは離婚したようですね。ママさん、モモちゃん、アカネちゃんが森の向こうの町へトラックで引越ししていきます。トラックが去って見えなくなったあと、パパさんは出てきて、モモちゃんが忘れていった花がらの鞠をしばらくぼんやり見ていましたね。モモちゃんのまわりにもきびしい現実がせまってきているようです。続編でどう展開していくのか…。(2005.7.12  To:さちこさん)
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☆…「モモちゃんとプー」そして4冊目の「ちいさいアカネちゃん」の半分を読んだところです。ほんもののGANOさんは女の子を育てた経験はありませんけれど、かわいいですねェ、やることなすことが。それに、女の子はやさしい。いまにして、女の子が欲しかったなあ…、と。ないものねだりです。男の子は父親に反抗ばかりして、やさしさというものを知らない。それにしても、モモちゃんのパパさんのことが気にかかるのですが、なんだか、シリーズ6冊目の案内を見ると、亡くなるらしいじゃないですか。楽しみにしてつづいて読んでみます。(2005.7.13 To: さちこさん)
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☆…それにしても、このところすっかり松谷ワールドに入り浸りになりましたね、PWMせんせいも小夜も。小夜は、モモちゃん、アカネちゃんのおとうさんのことがどうしても気になるものですから、次々にシリーズの続編を読むことになり、きょうまでに6巻のうちの5巻目「アカネちゃんとお客さんのパパ」まで読み、最後の6巻目「アカネちゃんのなみだの海」を読みはじめたところです。こころもからだもどんどん成長していくモモちゃんとアカネちゃん。ほんとうにかわいいです。小夜のようにへんにおとなびていないで、天真爛漫な自然さがありますね。アカネちゃんなんか、おねえちゃまぶって、「ミーソコナッチャイケナイヨ、ドンドン」とすぐ口ぐせにして意気がるんですからね。でも、なんだかおとうさんとの距離がかなしいですね。どうやら、おとうさんはさいごに亡くなるらしいですが。ちょっとこのあとがドキドキです。(2005.7.14 To:Play with meさん)
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☆…小夜はモモちゃん、アカネちゃんのおとうさんのことがますます気にかかるものですから、シリーズの4巻目「ちいさいアカネちゃん」から5巻目の「アカネちゃんとお客さんのパパ」を読みました。ここでパパのことがはっきり出てくるのかな、と。そしていまは最後の6巻目「アカネちゃんのなみだの海」を読みはじめたところ。ひとつ注目したいのは、4巻目までのさし絵は菊池貞雄さんが描いていましたが、5、6巻目は伊勢英子さんが描いていること。菊池さんが途中でお亡くなりになったことによる交代のようですが、どちらも子どもの描写、すばらしいですね。しぐさの可愛らしさはバツグンですね。
 さて、お別れしたパパのことですが…。アカネちゃんの3歳のお誕生日にあたる日でした。忘れんぼママが忘れたお買い物を買いにもう一度出かけていきます。アカネちゃんはひとりでおるす番です。そこにやってきたのはパパおおかみでした。アカネちゃんは少しも恐れる気配はありません。のどがかわいたというパパおおかみにアカネちゃんはビールをついでやったりします。そしてビールで、お誕生日おめでとうのカンパイをしてくれるパパおおかみ。つづいてパパおおかみは赤、水色、ピンクのふうせんをつくってくれます。黄色く円いお月さまもつくってくれます。そして、
   ののさま どちら/いばらのかげで
   ねんねをだいて/花つんでござれ/花つんでござれ
 とパパおおかみは歌います、アカネちゃんをひざにだっこして。この歌はじつはママがいつもうたってくれていた歌。どうしたってこれは、ほんもののパパですよね。これより先、森のおまつりにアカネちゃんはパパおおかみに手をつないでもらって夜の森を行くシーンもありました。
 パパの存在、それは、モモちゃんのなかでは比較的うすいようですが、アカネちゃんのなかにははっきりとパパがいるらしい。「さよならしてもパパはパパ」ということばも随所にちりばめられています。いつもママがいないときにかぎってあらわれるパパおおかみ。作者は父親をどうしておおかみにして表現したのでしょうか。そのままのパパではどうしていけなかったのでしょうか。
 これから読む6巻目で、パパは亡くなるらしいですが、なんだか小夜はドキドキです、こわいようです。(2005.7.15 To: さちこさん)
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☆…さいしょはそんなつもりはなかったのですが、とうとうモモちゃんシリーズの6冊をぜんぶおとうさんに読んでいただきました。母性のことを追究するはずが、GANOおとうさん、いつの間にか父性のありかに興味を移してしまったようで、矢継ぎばやに読むことになりました。
パパのこと、アカネちゃんはバリバリと思いのまま口にしていきますが、モモちゃんはちょっとおねえちゃまですから、ぐっと胸に抑えていたのですね。ママさんの立場がよくわかっていたのかも知れません。ですから、パパが亡くなり、お骨を土にうずめると、クジラがやってくるほどいっぺんに涙をながしたのはモモちゃんのほうでしたが、アカネちゃんはどうしてなのか、もう泣きませんでしたね。赤い小さな手シャベルで土をかけるだけ。でも、やっぱり、パパさんのこと、寂しく、小夜も胸が痛いです。作家としてママさんとは別の道を歩いておられたのですね。しんみり、です。(2005.7.15 To: Hiromi~さん)

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