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萬葉植物




■花の五徳
   
 全国の錚々たる国文学者、萬葉学者が顔をそろえる「萬葉の花の会」という組織があります。先日、その会の新しい会長をつとめる辰巳正明先生(国学院大学教授)の話を聞く機会がありました。古来、なぜ人は花を大事にしてきたか…。花には「五徳」が備わっているから、というんです。すなわち、
 一、すべてを隔てなく受け容れる徳。 …そうですよね、人間も昆虫も、男も女も、富めるも貧しきも、等しく受け容れ、心地よくしてくれますよね。
 一、美しいという徳。…美しいということ、健康だということ、それは人を、生きものすべてを幸せな気持ちにしてくれます。天から授かった奇跡的なその色。
 一、さまざまな文化を生み出す徳。 …古来、美術、文学、演劇、その他さまざまな方面で人びとの生活と文化にゆたかな香りをつけてきました。
 一、お互いのあいだをとりもつ徳。…ささくれだった気分も花を見るとホッとあたたかくほころびますしね。
 一、運命に逆らわない徳。 …手入れの行き届いた花園に咲く花であろうと、路傍の石のあいだに咲く花であろうと、花は不平をこぼすことなく、状況に順応しつつそれぞれの美しさを見せて咲いてくれる。大風よ吹かば吹け、大雨よ降らば降れ。

 どうでしょうか、人間の生き方に置き換えて考えても、そんなふうでありたいという理想、魅力ある生き方に通じませんか。とりわけ、日本人の精神、日本人の文化の根底には「花」がありますね。咲いて散っていく花に「もののあはれ」を感じる民族、散り行く花のはかなさから、存在するものへの信頼と慈しみを覚える民族。こんな民族は世界にめったにはないと思いますよ。〔2007.09.12〕
           ☆      ☆
 キンモクセイ、嵐のあとなどにびっしり下にじゅうたんのように敷きつめられるオレンジ色の細かな花。そのすがたが大好きで、近くの公園に大きなキンモクセイの木があるのですが、秋の嵐が去ったあとにはすぐ飛び出していきたくなります。

 “花の五徳”、萬葉学者から聞いたその話にわたしはなぜかえらく納得してしまったのですが、せめてわたしも花の五徳(如く)ありたい、といったら、男として女々しいでしょうかね。もちろん花は女々しいだけではないですけれど。〔2007.09.14〕


 秋。この季節に因む萬葉歌といえば「萩」だが、ここでは「もみじ」を詠った歌のいくつかを拾って…。

 奈良山の峰のもみち葉取れば散る 時雨の雨し間なく降るらし(巻8-1585)

 神無月時雨に逢へるもみち葉の 吹かば散りなむ風のまにまに(巻8-1590)

 まそ鏡南淵(みなぶち)山は今日もかも 白露置きてもみち散るらむ(巻8-2206)

 明日香川もみち葉流る 葛城の山の木の葉は今は散るらむ(巻10-2210)


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■萬葉の花の会 國學院大學たまプラーザキャンパス 2004年9月8日

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   もののふの八十をとめらが汲みまがふ
     寺井のうへのかたかごの花    ――大伴家持

  道の辺の尾花がしたの思草
     いまさらになど物が思はむ    ――山上憶良

  春の野にすみれ摘みにと来しわれぞ
     野をなつかしみ一夜寝にける   ――山部赤人

  萩の花 尾花葛花瞿麦(なでしこ)の花
     女郎花(おみなへし)また藤袴朝顔の花  ――山上憶良

  夏の野の茂みに咲ける姫百合の
     知らえぬ恋は苦しきものぞ    ――坂上郎女

  石(いわ)はしる垂水(たるみ)の上のさ蕨の
     萌え出ずる春になりにけるかも  ――志貴皇子

  わが園に梅の花散る ひさかたの
      天より雪の流れ来るかも    ――大伴旅人

  引馬野(ひくまの)ににほふ榛原(はりはら)入り乱れ
      衣にほはせ旅のしるしに    ――長奥麻呂

  磯のうえに生ふる馬酔木(あしび)を手折らめど
      見すべき君がありと言はなくに ――大伯皇女

  芝付の御宇良崎なるねっこ草
      相見ずあらば吾恋ひめやも   ――読み人知らず


     ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

■古歌に詠われた妙ちきりんな花


さてさて、こんな花をご覧になったこと、ありますか?
萬葉植物をさぐっているうちにたまたま出会った花。いったい、これ、花?
…ちょっと妙ちきりんな花だとは思いませんか。

   道の辺の尾花がしたの思ひ草
     今さらになど物か思はむ (萬葉集巻十、2270)

manyo-omoigusa.jpg

1250年以上も前のわたしたちの祖先に「思ひ草」と呼ばれ、
いまでは一般的に「ナンバンギセル」と呼ばれています。
学名: Aeginetia Indica
これを探そうと思ったら、たいへんですよ。
川ばたのススキの原を血だらけになって掻き分け掻き分け、
マムシの出現にも驚くことなく、野鳥たちの卵を踏みつけぬよう、
よほどていねいにその根元のあたりをさぐらなければなりません。
わたしですか? 
これはですね、わが家に近い大学の、その構内の一角につくられた
「萬葉の小径」の、ひとむらのススキのかげに
ひっそりとひそんでいたものを見つけました。
うす紫色の可憐な花。たおやかな女性が、何があったのか、がっくりと
首うなだれているといった風情。
萬葉びとはそんなふうにこの花を見たにちがいありません。ロマンですねえ。
また、もっとのちになって、西欧からの即物的な思考になれた人びとは、
これを「ナンバンギセル」と呼びました。
南蛮わたりのキセル(マドロスパイプか?)に似ていると見たのでしょうか。
(ある感度するどいテューター。みにくいあひるの子が母親から
「この子は生まれてこなければよかったのに」といわれたときのがっくりした表情を想った、と。
物語を大事にするひとの発想はあざやかですね。スゴイ!)
一方、中国では野菰(やこ)といったとか。野のコモ。
このネーミング、なかなかイメージゆたかではありませんか。
えっ、高さですか? そうね、10センチに満たないかも。小さいです。
ハマウツボ科の花で、1年草。夏から初秋のころにこんなふうに咲きます。
けっしてハデではありません。ひとの目をさけるように、
陽光の射さぬところに遠慮がちに、恥じらうように咲いています。
ところで、写真で見ていただくように、この花には葉というものがありません。
光合成して自分で生きようとする努力を怠るやつ。つまり、
ほかの植物にちゃっかり寄生して生きる「パラサイト植物」というわけ。
萬葉集に詠われたことのある古い植物ながら、どうですか、
これ、なかなか現代的じゃないですか! フリーター花ってところ?
「あっち行け!」と、寄生されて迷惑がっているのはイネ科の植物。
ススキだったり、サトウキビだったり、ときにはミョウガだったり。
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