ドラマレッスン ― 表現教育とは何か? ―
*群れて遊ぶ世界*
かつて、子どもの遊びの世界は、まるで演劇的な空間でした。人のまねをし、ふりをする世界、子どもたちの“まねっこ”は遊び世界の定番。人として育つのに必要だったからこそ、そうした世界は存在していたのです。少子化が進む現代社会で、仲間と遊ぶ機会を失いつつある生活の中に、この重要な演劇的空間を取り戻そうというのが、表現教育。欧米で「ドラマ」と呼ばれる教科です。
演劇が教育と結びつけて考えられるようになったのは、20世紀初めからで、世界的に大きな広がりを見せたのが1960年代。日本では、なかなか取り上げられないできましたが、最近ようやく「総合教育」や「表現教育」として触れられる機会がでてきました。
演劇と教育に関する研究は、先進各国で、子どもたちが仲間と遊ぶ世界を失っていく中で進められてきました。学芸会や学習発表会などが、単に表現の成果を競うものでなく、発表に至るまでにいろんな体験をすること、自分の力を試して発展させることなど、プロセスを重視した総合学習としての「演劇教育(ドラマ)」という方向へと進んだのです。
表現教育は、子どもが小さければ小さいほど、表現の上手い下手を競うのでなく、表現に対して自主的な意欲をもつことや、喜ぶこと、そして周囲との信頼や共感を体験することなどが大切です。自分の心の動きを自覚することに意義があるのです。そう、それは仲間で群れて遊ぶ世界が持っていた要素です。それを的確に指導できるリーダーを育てる為に、欧米では、教育大学の中に、ドラマ・ティーチャ―やアーティストを養成するシステムができています。
ドラマは、表現力を伸ばすカリキュラムです。
(2001年 西日本新聞より) |