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特集連載
第57回
幸せな選択をするのではなく,選択を幸せにする

2016/7/15

星 友啓/ほし ともひろ

星 友啓/ほし ともひろ
スタンフォード大学Pre-Collegiate Studies 教育ディレクター

 アメリカのスタンフォード大学で教鞭をとり,附属のオンライン高校の運営もされている星友啓氏に寄稿していただきました。
 星先生には昨年12月,ラボの高校生・大学生を対象に,英語で“Critical Thinking”の授業をしていただきました。実際にスタンフォード大学で論理学の授業の導入でされている内容で行なわれました。今回の寄稿には,そのとき受講したラボの高校生・大学生の印象についても書いていただいています。 
 世界中の高校生とオンライン授業でつながる星先生の,若者へのメッセージをお読みください。

多角的な視座から

 私は現在3つの異なる角度から教育に携わっています。まずは学校行政部として,Stanford大学オンライン高校の運営をしています。インタラクティブな授業と大学レベルのカリキュラムを取り入れて,過去10年間で,アメリカの名門高校と比肩する評価が得られるまでになりました。
 加えて,研究者・教育者としても活動しています。Stanford大学とオンライン高校で,世界各国から集まる学生たちに,論理学,数学,哲学の授業を教えてきました。
 さらには,アジアの教育機関にオンライン教育やアメリカ留学に関するコンサルティングを提供しています。アメリカの名門大学への入学を推進する学校へのアドバイス,関連共同事業などに関わってきました。
 今後もこれらの視点を持ち続けていこうと思います。授業を行なう生徒,教師,教室。授業を可能にする学校,またその運営。そして,国際社会のなかでダイナミックに変容しつつある教育の実情。多角的な視座から教育というものを見つめていくことが必要であると考えます。

情熱の伝染

 情熱は伝染する。いかに学問や各分野における人びとの情熱を生徒たちに伝染させていくか,ということを常に意識しながら,教育に携わっています。
 数学の問題がとけるようになったり,英語の構文が理解できるようになることは,大きな成果です。また,それができるように生徒を教えられるような教師を訓練することも重要です。しかし,それだけでは単にある種の訓練を受けた,もしくは訓練を施すことができる,ということに過ぎません。
 知識や技術の習得を越えて,各分野の情熱の持ち主から直接その熱を感じるということがたいせつです。いったん情熱が伝染すると,その生徒の人生を長期にわたって動機付けることになります。教育というものは,そうした深い意味で生徒の人生にコミットするべきだし,できると思います。
 真の学問や芸術,先端技術に何らかの形で直接ふれ,情熱の持ち主に出会うこと。まず,自分自身がそうした人間であること。また,他のそうした人間に出会う機会を提供すること。人から人へ,いかに情熱の伝染を起こすことができるか,ということを常に考えています。

ラボ会員の高校生の印象

2015年12月20日 東京のラボ教育センターで行なわれた「英語でCritical-Thinking」の授業  2015年の12月に、東京のラボ教育センターにて、ラボ会員の高校生,大学生を対象に講義をする機会をいただきました。Stanford大学の論理学の授業の導入に使ってきた内容のものです。
 日本人の生徒への英語の講義がもっとも苦労すると冗談まじりに同僚と話すことがあります。一般的に生徒の反応が薄く,アクティブな講義にしていくためにはどのようにしたらよいかということを,通常以上に意識しなければなりません。
 ラボの高校生対象の講義では,そのような苦労を一切感じることがありませんでした。ラボっ子の皆さんは,私の問いかけにも積極的に反応して,小グループでの活動も活発に参加していました。率直に感じたのは,皆さんが,言語及び文化としての英語に非常に慣れ親しんでいるということです。
 日本の中等教育のかなり早い段階で,ほとんどの生徒に,大きな変化が訪れるように思います。英語が,コミュニケーションを行なう「言語」から,正解を提出するのが目的である「科目」というものに変わるのです。非母国語で気持ちや考えを伝えられることの満足感が,正解から逸脱することを恐れる萎縮にかわる瞬間です。この変化は,中等教育の段階ではなかなか免れることができず,また,言語を学ぶ課程である程度必要であるとさえいえるかもしれません。
 それでも,ラボっ子にとって英語は,言語であると思いました。伝える,活動する,また,英語を取り巻く文化を愉しむ。これは,一朝一夕で養える能力ではありません。テューターの方々,ラボっ子の皆さん個々人の能力,日々の努力などさまざまな要素が相まって,はじめて結実しているのだろうと思います。
「英語でCritical-Thinking」の授業 アイスブレイクで初対面の人と楽しそうに話すラボの高校生 「英語でCritical-Thinking」の授業 高校生からおとなまで30名が参加しました

幸せな選択をするのではなく,選択を幸せにする

 若い皆さんはこれからさまざまな人生の選択をされていくことと思います。選択肢の情報を集め,多角的な視点から考え,コストとベネフィットを分析する。そうしたことも必要でしょう。まわりの人間にアドバイスを請うことも大切です。
 ただ,すべてを理解してする選択はありません。最後はどこかで賭けをうつしかありません。賭けをうって失敗したらどうしよう,選ばなかった選択肢のほうがよかったのではないか。そうしたことで悩むのはよくあることです。
 そんなときに,何かのハリウッド映画で観た台詞ですが,これをよく思い出します。「選ぶ前にどちらかのチョイスがより大きな幸せをもたらすかを考えるのは無駄なことよ。選択してから,どのようにそれをより幸せな選択肢にできるか考えなさい。おやすみ,ダーリン」。
 自分のした選択をどのような選択にしていくかは,あなた次第です。自分の選択を自分の力で,自らの幸福に導いていく決意と自信を持って,今後の進路選択を考えていってほしいと思います。

おはなしをうかがった方
星 友啓
星 友啓(ほし ともひろ)
 Stanford大学Pre-Collegiate Studiesにて教育ディレクターとしてStanfordオンライン高校の運営に携わる。オンライン教育分野の国際的リーダーとして,アメリカ,アジア各国で活動。アメリカの学校教育,大学受験等に関するコンサルティングも,アジア各国で行なっている。
 東京都出身。東京大学文学部思想文化学科哲学専修課程卒。Texas A&M大学哲学部修士課程およびStanford大学哲学部博士課程修了以後,論理学者として研究,教育に携わる。2008年よりStanford大学の高校設立事業に加わり,カリキュラム作成,学校運営を継続。現職に至る。
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