ことし出版された本で買おうと思っていた本が
図書館に入っていたので借りてきました
『原寸美術館・・・画家の手もとに迫る』結城昌子
小学館 2005年4月
この画集の特長は
拡大ではなく、原寸で絵の部分、部分が印刷されていることです
(よく知られた名作といわれている絵が取り上げられ、
絵の全体はもちろん掲載されています)
ということは
画家が筆で描いたときのままのタッチを見ることが出来るということです
筆づかいの様子、絵の具の乗せ方、色の重ね方など
画家が描いたときのスピードまでわかります
★サンドロ・ボッティチェリ
『ヴィーナスの誕生』『春ープリマヴェーラ』の輪郭線
★レオナルド・ダ・ビンチ『最後の晩餐』テンペラ
(修復されて全面剥落は何とか免れたという)
当時壁画には最適であった
フレスコ(まだ乾いていない漆喰に描くので絵の具がしみこみ剥落しない)を使わず、あえてレオナルド・ダ・ビンチが
テンペラ(卵黄を絵の具に混ぜて描く,ゆっくり描ける)
を選んだのはなぜかようやくわかった
テーブルにおかれた器や料理の微妙な陰影はフレスコでは無理だ
★レオナルド・ダ・ビンチ『モナ・リザ』のスフマート画法
スフマート画法(ぼかしの技法、輪郭を描かず指の腹でぼかす)の滑らかさ
背景の空気遠近法による表現
★ミケランジェロ・ブオナナローテイ『アダムの創造』
ミケランジェロがほとんどひとりで描き上げた礼拝堂の天井画
実際に下から見上げたこともあるが
テニスコート3面より大きな面積があるという
アダムと創造主の指が今まさにふれようとする印象的な部分の
ふたりの目線そしてふたりの指はこんな大きさで描かれている
他にもフェルメールから印象派まで
例えば
★エドゥアール・モネ『フォーリー・ベルジュールのバー』
油絵のスピードのある筆づかい
グラスや薔薇の鮮やかな筆使い
★ポール・セザンヌ『カルダンヌの村』
塗り残しの効果
ペインティングナイフの使い方
★フィンセント・ファン・ゴッホ『星月夜』
印象派のアッラプリマ技法(ぶっつけ描き)のゴッホによる展開
筆致
チューブからしぼり出した生の絵の具
絵を描くスピード
など絵の細部を心ゆくまで味わうことが出来る
文章はスペースの関係もあって少し物足りないが
絵をゆっくり楽しむことが出来るとても面白い本です
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