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水無月の終わりは君の「あを」 Jamais Contente 06月30日 (金)
三澤制作所のラボ・カレンダーをめくる

朝、一日早いけど
ラボ・カレンダーをめくった。
小雨は降っているが
思ったより空が明るい午前7時。
東の窓を開けると水無月三十日の
朝の陽光が差し込んできた。
そのなかで、この絵の背景の青が
さっと浮き上がる。
なんというか個性ある青だ。
rennet
過去にも書いたが、
青の種類は日本でも海外でも大変多い。
スカイ、マリン、アクア、プルシャン、
ターコイス、セルリアン、ネイビー、アイスランド、
アイルトーン、アカデミー、アカプルコ
アクエリアス、インディゴ 、ミッドナイト、
オーシャン 、サックス、コバルト……。
まだまだこの10倍以上あるが、
みんなblue。

日本の色でも
藍、紺、縹色、浅縹、深縹 青黛、
浅葱色、水浅葱、甕覗、
褐色、青黒、鉄紺色、納戸色、藍鼠、
青鈍、露草色、花色、山藍摺、空色、
群青色、瑠璃色、褐返し、呉須色
など、これまたまだまだたくさんあり、
こうした色をちゃんと日常のなかで
弁別していたのだからすごい。

このなかで甕覗(かめのぞき)は、
手ぬぐいなどに使われる藍染の
やわらかい緑の入った青だ。
江戸時代の歌舞伎の台本にも出てくるし、
樋口一葉の『われから』にも出てくる。

今歳も今日十二月の十五日、世間おしつまりて
人の往來大路にいそがはしく、お出人の町人
お歳暮持参するものお勝手に賑々しく、
急ぎたる家には餅つきのおとさへ聞ゆるに、
此邸にては煤取の笹の葉座敷にこぼれて、
冷めし草履こゝかしこの廊下に散みだれ、
お雑巾かけまする物、お疊たゝく物、
家内の調度になひ廻るも有れば、
お振舞の酒に酔ふて、
これが荷物に成るもあり、御懇命
うけまするお出入の人々
お手傳ひとて、う琉さ五月蝿きを
半は斷りて集まりし人だけに
瓶のぞきの手ぬぐひ、それ、と切つて
分け給へば、一同手に手に打冠り……、

『われから』は早世した一葉の
最晩年の作品だがかなり「やばい」。
『たけくらべ』の透明な哀感とは
まるで異なるが、どこかで通底する。

青の前置きが長くなったが、
それほどに
ぼくはこの絵の青に心惹かれた。
描いてくれた人は
秋山心音(小1/横須賀市・菅野P)さん。
「ここね」さんだろうか、
「しおん」くんだろう。
たぶん前者かな。
新刊ラボ・ライブラリー
A Midsummer Night’s Dream
『夏の夜の夢』にインスパイア
された作品だ。

いきなり背景の色から入ってしまったが、
今朝の寝起きにはとても爽やかだったのだ。
そのあと、落ち着いてみると、
上で紹介したような、
まさに多彩な青で塗られている。
瓶覗もあるし、ターコイスもあるし、
マリンもある。
そしてどの青も「スカッとぬけていて」
濁りがないし、オブラートをかけたような
不透明感もない。
そして微妙な明度や彩度、コントラストの
変化がさわやかだ。

青(あお・あを)は「しろ」「くろ」「あか」
とともに「やまとこば」だが、
とくに「あを」はその表現範囲が広い。
緑、グリーンやビリジアン系も
古くは「あを」にカテゴライズされていたし
(信号は緑なのに
「青信号」というのはその名残)、
地方によっては黄色まで「あを」の範疇だった。
briny
さて青ばかり褒めていては失礼なので、
本題に入ろう(やっとかよ!)。
とにかく大胆不敵。
自由闊達、問答無用。
このエネルギーはなんだ。
もしかすると男の子の絵かもと
思ったくらいだが……。

クレパスと水彩を両方使っているが、
クレパスだけで力強く塗っている部分が
かなりの面積にわたっていて、
それだけでも相当なパワーとガッツがいる。

注 おとな場合は、
センスはあるけどガッツがない。
ガッツはあるけどセンスがない。
センスもガッツもない。
の3パターンにわかれるが。

しかも、全体におおらかで
大胆な印象を作りながら、
細部の描き込みが、
とんでもなく「良い意味で」しつこい。
やりすぎ一歩手前まで勝負している。
いい根性だ。

普通紙その手前で止めるが、
(というより、疲れるか
もう十分と思ってしまう)
心音さんは、全然満足しないで
徹底的に描き込んでいる。

この絵もかなり込み入っているが
ぼくはそこが好きだ。

描きこみすぎて
表現しすぎて失敗というのは
絵のみならず
文でも(お前がいうなだよね)
音楽でも芝居でもよくあること。
だけど、変に出し惜しみしては
伸びない。
やりすぎかどうかなんて後の話。
とくに子どものときは、
表現は出せるものを全部、
それまでの人生も総動員して
勝負したほうが悔いはない。

抑制が効いた表現、
贅肉のない表現も大事だが、
そんな洒落たことは、
気絶するくらいにやりすぎて
とことんやってから自然にできてくる。
テーマ活動だってそうだ。
人生総動員だから教育プログラムなのだ。

これだけ描いても、
心音さんは、また満足していないと思う。

地上の乗り物で最初に時速100キロメートルを
超えたのはじつは電気自動車だ。
ベルギー人の土木技師ジェナッツィは
時速67キロメートルの記録を作るが
すぐにロバーツという伯爵に
93キロというとんでもない速度を出されて
破られてしまう。
しかしジェナッツィは研究を重ね、
その3か月後の1899年4月、
106キロメートルを出す。
内燃機関もガソリンエンジンの車は
1885年にベンツによって開発されていたが、
100キロ超えはジェナッツィの電気自動車だった。
このジェナッツィが愛車につけた名前が
Jamais Contente 
「けっして満足しない」号だった。
klnn

話が逸れたが、
とにかくこの絵は観ていていて飽きない。
1か月、毎日新しい発見がありそうだ。

しかしただ描き込んでいるだけではない。
奥行き感と横へのスピード感、
ナーサリー・ライムのようなリズム感も
溢れている。
妖精たちが舞う、月の光のような
あざやかなイエローの流れがすばらしい。
とってもとっても幻想的。
まさに「夏の夜の夢」。

この光の川の上で
満ち足りた笑顔を見せる妖精の王に
象徴されるように、
すべてが祝福されている。
心音さんとこの物語は
どんな睦みあいをしたのだろう。
繰り返し聴いたことは確かだろう。

物語の山や谷、森でいえば
幹から枝から葉の一枚ずつ、
さらには下草や苔、
木のウロまでが
点滴のように体内にしみこんでいるから、
これほどの描き込みできる
エネルギーがでたに違いない。

そして蟹江杏さんの絵本の写しではなく、
しかし十分に絵本をリスペクトしつつ
自分の絵にした心音さん。

心音さんが物語を祝福し愛したように、
心音さんもまた、
物語に祝福され愛されている。
こんなすばらしい体験を
6歳でできたことは
とんでもないことである。
教育の本質は
「指導や教え込み」ではないことが
この絵一枚でわかる。

しかし、どんな楽しみながら
描いたとしても、
描き終わったときの心音さんは
相当にお疲れだったのではないだろうか。

ところで、賢明なる諸姉兄は
お気づきだと思うが、
6月、7月の絵は連続して菅野パーティである。
また、パーティは異なるが、
『夏の夜の夢』は2作目だ。

「えっ、パーティで二人も入選?!」
「物語かぶりアリ?」
と思った善良なる方がたよ。
ここでラボ.カレンダー選考内規を
紹介する。
かつてぼくがスタッフと
相談してきめたのだが、
たぶん今も変わっていないし、
秘密にすることでもないので書く。

・入選作品にいては基本的に作品主義。
・支部バランス、男女バランス、年齢バランスは
とくに考えない。
※ふしぎにばらけるもの
・12点の入選は物語の重複を避けるが、
新刊に関しては応募点数も多いこと、
また発刊をお祝いする意味で2点まで可。
・同一パーティの入選は2点まで可。
ただしひとりで2点以上入選は、
佳作も含めてできない。

というわけだ。
で、今あらためてこの絵を観たら、
やっぱりすごい!
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