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ラボ・カレンダー9月の絵  夕陽に踊る鎮魂の勇魚たち 09月01日 (金)
気がつくと空が高い。
夏が終わった。

絵は観る人間の気分、心映え、
思い、気持ちの揺れ、
などの観る側の内的な条件で変化する。
絵は常にそこに飾られているが、
観なければ存在しない。
絵は結局のところ、
視覚を通じて人間の心に響く装置、
あるいは触媒なのかもしれない。
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昨日の夜から、すでになんども
この絵を観ているが、
その度に印象が変わる。
クジラたちがはしゃいで見える夕方もあり、
怒っているように感じる朝もある。
また、嘲っているようにも、
激励しているようにも思える。

9月の絵は大塚雄三先生の文、
丸木俊先生の絵による絵本
『うみのがくたい』に
題材を求めて制作した
ラボ・ライブラリーに
インスパイアされた作品。
描いてくれたのは
河内優奈さん(小2/韮崎市・村上P)だ。

最初に書いてしまうが、
山梨には今夏、縁あって発表会と
地区キャンプにおじゃましたので
とってもうれしい。
前もって9月の絵の作者が
山梨のラボっ子だと知っていれば、
絶対に知り合いになったのたが、
基本的にその月になるまで
「カレンダーをめくらない」
ことにしているので
いたしかたない。

『うみのがくたい』は、
ラボ・カレンダーの絵の
応募作品のなかでは毎年、一定量を締める。
新刊は別格本山で突出するが、
「だるまちゃん」「ぐるんぱ」の2大スター、
『かぶ』『はらべこあおむし』の
ラーメン屋で8割の人が注文的
定番に続くぐらいの
点数の『うみのがくたい』が
夏の終わりのラボセンターにやってくる・

したがって、過去30年以上の
ラボ・カレンダーの歴史のなかに、
名作、力作、傑作、感動作の
『うみのがくたい』がたくさんある。
その記憶と記録があるから
『うみのがくたい』で入選するには
よほどの個性が必要だ。
その高いハードルを越える作品が
2年に一度くらい「があん」と出でくるのが
またこの物語の
すごいところだともいえる。

『うみのがくたい』の絵は、静かだが力強い。
そしてフォルムもカラーも美しいので
つい真似したくなる。
そこで原画そっくりの作品も数多くくる。
いつも書くことだが、
間宮先生のおっしゃるように
「創造は模倣からはじまる」から、
模写することは悪いことではない。
書道でも臨書は
名筆をそのままに書くわけで
臨書で書道展に入選する例は多い。

しかしラボ・カレンダーの絵が求めているのは、
物語と出会った感動、
キャンプや国際交流での出会いの感動、
(キャンプや国際交流を
テーマにした入選
作品はいくつもある)
すなわちインプット、
インスパイアされた
感動をどう表現するかなので、
(と、ぼくは思っていた)
色や形をそのまま写すことに集中するより、
心を描き出すことに
力を注いでもらいたいと思うのだ。

そんなこと思いつつ
たしかにクジラのフォルムは
原作絵本に寄せている。
だけどその線は自由闊達で
のびやかで気持ちがいい。
そして躍動感がすばらしい。
輪郭線も自然で迷いがない。
ニコルさんが勇魚と名付けた
クジラの巨体が、
トランペットを高らかに
吹きながらジャンプする。
なんという迫力だろう。

さらにおどろくべきは、
3頭のクジラの配置と
バランスの良さだ。
この大きな画面にクジラたちを収め、
さらに躍動感を失わないのは
優奈さんの年齢では
簡単なことではない。
海面の描きかたも力があり、
うねりや泡立ちが伝わってくる

優奈さんは
hand-eye coordinationが
平均以上なのだろう。
それは「よく観る力」によって
支えられていることは
十分に推測でき、
同時に「聴く力」もあると思われる。
要するにinput力がすごいのだ。
海綿というと古いので、
スポンジのような吸収力なのだ。

いつものことたが、
優奈さんが、どのくらいこの物語を聴き、
どんな活動をしたのか知りたいものだ。

しかし、フォルムもさることながら、
この作品の色合いには、
完全にやられてしまった、give up。
降参、恐れ入谷の鬼子母神。
彩色はていねいなのだが力強い。
塗り絵ではまったくない。

主役のクジラの
グレーの面積が広いのだが、
クジラのボディも濃淡、
グラデがあるので
立体感と動きがあり単調ではない。
このグレーの明度と
彩度がまた丁度いい。
暗すぎず明るすぎず、
いいところに落とした。

あまり濃くないグレーは
どんな色ともあうことを
優奈さんは感覚的にわかっている。
「ことばの宇宙」の船長時代、
表紙やカラーページのデザインで困ると
「苦しいときのグレーだのみ」
はお約束だった。
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なので、見よ、この背景の
この世のものとは思えぬ
「ふしぎな夕焼け」を!
優奈さんは、
もしかして「見てきた」のか!

背景は少なくとも5色が基本なのだが、
それを微妙に場所によって
濃淡をつけているので
美しいmosaicにで心を打つ。
しかもピンクとグレーという最強コンビを
中心にして、
抑制気味に用いた
明るめのviridianが
なんとも清々しい
スペシャル効果になった。

もうそれだけでかなりの体力と気力を
消費しているはずなのだが、
海の色にも濃淡をつけていて、
海の深さまで感じさせてくれる。

そして、これだけ色に変化をつけながらも
それぞれの色が「スカッと抜けていて」
「濁りがない」のも驚異的だ。
色を作る感覚もさることながら、
筆をていねいに洗い、
根本まで拭いていなければ
こうはならない。
おそるべき集中力だ。

優奈さんの体格はわからないが、
おそらく大きいほうではないだろう。
(根拠はないけど)
彼女がどこに用紙を置いたのか、
机か床か、はたまたまどのくらいの
距離で描いたのが気になる。
近づいたり離れたりしたのだろうか。

この物語についてはcolumnでもも
何度か書いた。
しかし、このクジラたちを観ると、
あるときは、
「あの船は沈んだのさ」とレクイエムを
演奏しているようにも思え、
またあるときは
「あの船は今頃赤道を越えて旅してるぜ」と
応援歌を吹き鳴らしているようにも感じる。
また、「お前ら人間はまだ争ってるの。
もっと楽しくやれよ」と励ましているようにも見える。
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かつて戦で多くの魂が海に消えた。
平和を脅かすものに激しい怒りと
慟哭を持って迫った丸木先生の、
静かで力強い「祈りと願い」のお心は、
たしかに物語となって
優奈さんの心にとどき、
絵筆を走らせすることになった。

これも物語の力であり、
物語の心は世代を超えてバトンタッチ
されていくことの証でもある。

ラボ・カレンダー『うみのがくたい』に、
またひとつ感動作が加わった。
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