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軽井沢に住まいを移して,早くも7年になります。30歳になる頃に住み慣れた東京の生活を離れ地方へ移動したのは,念願の「株式会社ピッキオ」への入社が決まったからでした。日本ではまだ少ないエコツーリズム事業を運営する仕事に取り組んでいます。
エコツーリズムということばを聞き慣れない方も多いかもしれません。軽井沢は多くの観光地と同様に,観光客の来訪が観光資源に大きなインパクトを与えるという問題があります。森の遊歩道が荒れてしまったり,たくさんのゴミの山が残ったり,地域とはまったく関係のないテーマの施設などを建設して観光資源とすることもあります。地域本来の資源の魅力を引き出し,同時に保全する仕組みを持ちながら持続的な観光のあり方を提案していこうというのがエコツーリズムなのです。私はそこでインタープリターという役目を担当しています。
自然は,その成立ちや生息する生物の存在などといった魅力や価値が背景に存在します。インタープリターとはそれを演技なども交えて楽しく伝えてくれる人のことなのです。軽井沢は標高1000mにあり,カモシカやヤマネ,そしてツキノワグマが生息する自然環境に恵まれた観光地です。この自然の解説しお客様に楽しんでいただきながら,その価値で大切さを伝えていくのがピッキオのインタープリターです。ですからインタープリターはときにはエンターテイナーであり,ときにはメッセンジャーでもあります。テーマ活動などで培った表現能力が,現在の仕事に生きています。
ピッキオではほかに,軽井沢町からの委託でツキノワグマの保護管理事業に取り組んだり,修学旅行で軽井沢に訪れる学生のみなさんへのツキノワグマ環境学習プログラムを提供するといった事業をしています。野生動物と人との問題を環境学習で伝えることは,環境を保全する人材を育成することにもなります。こうした事業が認められ,環境省主催の「第1回エコツーリズム大賞」を受賞しました。エコツーリズムは世界的にも広がりを見せていて,クジラを観察するホエールウォッチングは大きな産業として成長し,売上の一部をクジラの保全活動に当てる仕組みもつくられています。観光客が増えるほど資源が保全される,そんなエコツーリズムは,とても夢のある事業であると思っています。 |
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