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渋澤龍彦ー幻想美術館 埼玉県立近代美術館 |
04月29日 (日) |
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今日はよいお天気なので、娘と美術館に行くことにしました。私は17日にも見に行っているのですが、いい作品が多くもう一度見たかったので一緒に行きました。その前に浦和に鰻を食べにいこうと、主人も行くことになり3人で出かけました。
この企画展は、渋澤龍彦(作家・批評家・仏文学者)没後20周年を記念する美術展で、彼の愛した美術家たちの作品が展示してあります。全310点で見応えあります。
まずは、幼少の頃彼が好きだった「コドモノクニ」の武井武雄の作品。北原白秋の詩で武井武雄の絵のチューリップ兵隊が可愛らしい。温かくてノスタルジーを感じる絵だった。チューリップのひゅーっと伸びた茎が少し曲がってダンスをしているようだった。
細江英公の薔薇刑no.29 三島由紀夫の肖像 何とも不思議な絵で三島の鍛えられた肉体が絵の下に写り、背景にお城と水面、中央に女性の肉体が立ち、顔には時計が肉体には文様が重なっている。よく見ていると、絵に引き込まれていきそうな感覚になる。渋澤氏と三島氏は交友があったそうだ。渋澤氏が初めてヨーロッパ旅行へ旅立った時、三島氏は軍服でお見送りに来て、その後自決を図ったそうだ。
加納光於の「版画集 植物」No.1 渋澤氏が初めて見て、惚れ込んだ作品らしい。本当に美しい。光を受けて輝いている部分がなんとも言えなく美しい。私には綿毛と種のように見えたが。娘は、「金色のラベルをつけた葡萄の葉」が一番好きだったと言っていた。色が好きだったそうだ。これは渋澤氏の部屋に飾られていたものだ。
小品だが、宇野亜喜良の「プチロマネスク」。彼の描く女の人は怖いほど美しい。うちの文庫にある「ゆきおんな」の絵もすごくきれいだ。
合田佐和子の「仮面」もきれいだった。これは、絵ではなく石膏で作られたマスク。不思議な美しさがある。娘は「クリスタルの涙」が印象的だったと言っていた。ギャラリー・トム(画廊)にあった海の中を描いた箱のオブジェも素敵だった。
ミヒャエル・ヴォールゲムート/ヴィルヘルム・ブライデンヴルフの「死の図像」は踊っている骸骨が可愛らしくて、Dry Bonesの歌を思い起こさせた。
ジャック・カロの「聖アントワーヌの誘惑」はギルガメシュ王の愛を得られず激怒したイシュテルが雄牛に乗って復讐しに来る場面を思わせた。
今回私が一番好きな作品は、ギュスターヴ・モローの「救済される聖セバスティアン」。とにかく美しい。色の濃淡と渋さがなんとも言えない。ほかにもエッチングで「ダヴィデ」「出現」「ユピテルとセメレー」などギリシャ神話に出てくる神々が神々しく描き出されていた。なるほどダヴィデはこんな感じだったのかと興味深かった。
ピカソの「眠る女を愛撫するミノタウロス」も迫力があった。
マックス・ワルター・スワーンベリの「空想のコンポジシオン」と「夢の女の口づけ」も色と形がきれいだった。
そして最後に四谷シモンの「天使」が、渋澤氏に贈る最高のレクイエムだと思った。彼の渋澤氏への畏敬が感じられ、その想いに胸を打たれた。
主人は展示されていた白黒の写真がどれも素晴らしかったと言っていた。桑原甲子雄、川田多喜二やマン・レイの作品だ。娘も「新聞売りと女」が特に心に残ったと主人と写真の話をしていた。この2人感性が合うらしい。帰りに1階のティールームでお茶をして、作品について印象を話合ったりして、足を伸ばして休んだ。最近娘は美術館に行くようになり、絵の話もできるようになって嬉しい。私も子ども達が大きくなって、母も今は落ち着いて週1度の病院通いなので、少し時間ができて自分の好きなことに費やせて嬉しい。50の手習いで茶道を始めたり、大学で3年生と一緒にランボーの詩を原書で読んでいる。ランボーの詩をもう一度巖谷ゼミで五感全部で味わえることがなんとも言えぬ幸せだ。
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