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「小学校の英語教科化」が直面する4つの課題 現場も負担と不安を感じている 12月24日 ()

『東洋経済オンライン』にラボ教育センターが寄稿記事か掲載されています。

2020年、日本の英語教育に大きな転機が訪れます。この年から、小学3、4年生では外国語活動が、5、6年生では外国語科が始まるのです。日本の公立学校では外国語とはすなわち英語ですから、2020年からは、英語が小学校で教科に「昇格」するわけです。

本題に入る前に、これまでの流れを簡単に振り返っておきましょう。まず、小学校での英語活動は、2002年に総合学習の時間を使って始まり、2011年からは小学5、6年生で英語活動が年間35コマ(時間)必修となりました。現場の先生たちの努力もあり、英語活動の時間は約15年間で小学校に定着しています。

義務教育なのに指導内容や方法が異なっていた

とはいえ、英語活動は教科ではないため、教科書もありませんし、成績もつきませんでした。教科書がないので、何をどのように取り組むかは、現場の学校や先生に任されていました。つまり、義務教育なのに、学校や地域によって学ぶ内容や方法が異なっていたわけです。

先日、東京都八王子市で小学生の子どもを持つ親御さんたち(それぞれ違った小学校に通っている)に、小学校での英語活動について尋ねる機会がありました。すると、「外国語指導助手(ALT)の先生がたまに来ているようです」「歌やゲームを楽しんでいるようでした」「授業参観で英語をみたことがあります」「うちは小学1年生から英語をやっていました」と答えはさまざま。教科書が確定していないせいなのか、どなたも詳しい内容を把握していないようでした。

さて、今回文部科学省が発表した新学習指導要領では、英語は教科になるため、教科書が用意され、通知表にも成績がつくようになります。これまでの活動では、英語に「慣れ親しむ」ことが目標でしたが、教科では「できるようになる(定着する)」ことが目標となってきます。そして小学3、4年生では、これまで小学5、6年生で行われてきた英語活動が必修となります。

これまでの英語活動の成果は、悪くはありません。小学生への調査(文科省2014)をみてみると、小学5、6年生は70%以上の生徒が、英語が「好き/どちらかといえば好き」と答えています。1年生から取り組んでいる学校では、「好き」と答えた生徒の割合は、学年が上がるにつれて低くなっています。とは言え「きらい/どちらかといえばきらい」の割合は、1番高い6年生で10%程度。また英語活動を通して「英語を使えるようになりたい」と答えた6年生の生徒は70%となっています。

ただ、小学校で英語科をスタートするにはいくつかの課題があります。

1つ目は、小学校で英語を学ぶ意味が明確でないということです。「『英語が使える日本人』の育成のための戦略構想」(2002)や、「グローバル化に対応した英語教育改革実施計画」(2013)といった施策で英語教育改革がうたわれてきました。これには、経済界や保護者の要請が背景にありますが、こうした要請によって学校教育の内容を決定していいものでしょうか。

また、「グローバル化=英語化」であるとあおり立てるような教育では、これからの社会の中で真のグローバル市民として活躍する子どもたちを育てることはできないでしょう。英語さえできればグローバル市民になれるというわけではありません。グローバル市民を育てるには、何よりも世界の多様性、人間の多様性、言語と文化の多様性を認識する教育が必要です。いま一度小学生年代で英語を学ぶことの意味を、学校や保護者が把握し、社会全体で共有する必要があります。

「文字が出てきた途端、英語がつまらなくなった」

2つ目は、教科書と教え方の問題です。文科省は今秋、新要領に対応した小学5、6年生の教科書『We Can!』(2020年までの移行期間向け)を発表しました。文科省はこれまで「小学校の英語科は中学校の前倒しではない」と言ってきました。今回も「小学校英語は新しい教科である」と打ち出し、この教科書はこれまでの英語活動の成果と課題を踏まえて設定されています。

たとえば、新教科書では(小学3、4年生での英語活動も踏まえたうえで)耳で聞いた英語音声を読む・書く活動を行うことになっています。しかし、単語を習ったある6年生の男子は、「授業は楽しいんだけど、(単語の)つづりを覚えるのが難しい」と話します。それまでは楽しく英語に触れていたのに、文字が出てきた途端に英語がつまらなくなってしまったというのです。

新要領では、単語を十分に聞いて口にしてからだにしみ込ませてから、「リンゴ=apple」といった単語とつづりを覚えることを目指しています。しかし、これを実現するには、英語を何度も耳にして何度も口にして言えるようにならなければなりません。はたして、それが年間70時間でできるのか疑問です。

教え方についていえば、先日、都内の小学校の授業でこんな光景を見ました。ネーティブスピーカーのALTが、“Nice to meet you.”というのに対して生徒が“Nice to meet you, too.”と答えるのですが、この際、生徒は“too”と言いながら両手で2本指を立て左右に振る動作をやらされていたのです。

確かに、“too”と“two”の発音は同じですが、まったく異なる単語です。なぜこのようにジェスチャーをつけて教えるのかその理由はわかりませんでした。が、今後は指導内容や指導方法について議論と見直しが必要だと感じています。

3つ目は、指導者研修の問題です。これまでの小学校教員の中で英語の指導を学んだことのある人はほとんどいません。現場の先生たちに調査(文科省2017)すると、小学校教員で英語教員免許をもっている人はわずか5%です。また、海外での留学経験のある先生も5%でした。

また、2014年の文科省調査では、「英語活動を指導することに自信がありますか」という質問に対して、「そう思わない」「どちらかといえばそう思わない」と答えた教員は65%に上りました。その理由として、「英語力」「英語の発音」「とっさに英語が出てこない」などを挙げており、教員が自信のなさを訴えていることがわかります。

英語指導に自信がない先生も少なくない

ある小学校教員は、「私の学校ではリーダーとなる人が代表で研修を受けに行き、その内容を校内での教員研修に使っている。これで実際に生徒に指導ができるのだろうかと、現場では負担感と不安を感じています」と明かします。実際60%の教員が「準備などに負担感がある」「学校外の外国語活動に関する研修に参加していない」と調査では回答しています。

今さまざまな機関で、「文科省受託事業」として英語研修会が行われています。文科省も先生の負担を少しでも軽減すべく、指導のためのガイドブックや教科書の内容に沿った映像・音声資料を作成していますが、実際に指導する先生たちの研修にはまだまだ十分とは言えません。

もう1つは、評価の問題です。前述のとおり、英語活動から英語科になると、通知表に評価がつくわけですが、前例がないだけに、評価の基準を設けるのは容易ではないはずです。たとえば、目標に沿って「積極的にコミュニケーションを取ろうとする」生徒が、「スペリングはいつも間違っている」といった場合はどのように評価するのか。ほかの教科と同じようにテストを行うことになるのでしょうか。

ある小学校では、担任ではないALTの先生が、生徒の英語活動に関して通知表に所見を書いているというのですが、今後は英語に自信のない担任が評価をしなくてはなりません。どのような基準で評価が行われるのか、注目していきたいと思います。

日本の学校教育史上でも大きな転換となる、小学校での英語科の導入。小学校英語がどのように中学校英語に生かされるのかといったことも今後の課題となることでしょう。文科省が目標として掲げるように、「コミュニケーション能力の基礎となる資質・能力」が育まれる環境を整備するには、トライアル・アンド・エラーが必要となりそうです。
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