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シェイクスピア 全作品紹介
『ウィンザーの陽気な女房たち』
“The Merry Wives of Windsor”
《ざっくりしたみどころ(あらすじのあらすじ?)》
・ シェイクスピアコメディの超人気登場人物、サー・ジョン・フォルスタッフがお金と女性を求めて悪だくみをし、逆にコテンパンにやり込められるどたばたコメディ。
《あらすじ》
主人公はなんと言っても、サー・ジョン・フォルスタッフ! シェイクスピアコメディの名キャラクターです。
フォルスタッフは『ヘンリー四世』では、ハル王子(後のヘンリー五世)の悪友であり、ハル王子にいじられながらも大見得を切ったり、こずるい悪巧みをたくらんだりと、どたばた喜劇の愛すべき大いなる小悪党。その雰囲気は、この『ウィンザーの陽気な女房たち』でも健在。
ウィンザーにやってきたフォルスタッフは、すかんぴんでお金に困っている。そこで一計を案じます。ウィンザーの裕福な婦人を色じかけで篭絡し、お金を手に入れようという寸法。
そこで、ウィンザーの裕福な女房、フォード夫人とペイジ夫人にラブレターを送ります。しかし送ったラブレターは、名前が違うだけで文面は一言一句、同じもの(何たるフォルスタッフの怠惰)。
二人の夫人は、ともにフォルスタッフから手紙をもらったことを打ち明け、さらに文面がまったく同じであることに激怒! そこで、フォルスタッフの恋の誘いに乗ったようなふりをして、逆に懲らしめてやろうとたくらみます。
まずは手始めに、フォード夫人は自分が恋をしているかのように見せかけてフォルスタッフを自宅に誘う。しめしめ自分は惚れられたわいとフォルスタッフがのこのこでかけていくと、そこにご亭主のフォード氏が町の人間を引き連れて、浮気現場を取り押さえようとやってくる(実はフォード氏は、これが夫人のたくらみとは知らず、本当に浮気をしていると信じて大嫉妬している)。フォード夫人は汚れた洗濯物のはいった洗濯籠にフォルスタッフを隠す。そして、使用人に命じて、テムズ川に投げ捨てさせる。
こりないフォルスタッフは、再びフォード夫人の誘いに乗ってのこのこやってくる。ここでも逢引の現場を押さえようとフォード氏が半狂乱で押しかける。そこでフォルスタッフを、嫌われ者のおばあさんに変装させて、逃がす。ところが、このおばあさんをフォード氏は大嫌い。フォルスタッフは滅多打ちにされてしまう。
ここで、フォード夫人は夫に、今までの行為がフォルスタッフを懲らしめるための芝居であることを打ち明け、今度は全員で懲らしめにかかる。
森で逢引する約束をして、またまたフォルスタッフが出て行くと、おそろしい妖精たち(町の子どもの変装)に取り巻かれてしまう。ほうほうの態で逃げ出すフォルスタッフ。もう、ふんだりけったり。そして最後にすべてが仕組まれていたことがフォルスタッフにもわかり、完敗。
そして、このお話にはもうひとつのストーリーが平行します。それは、ペイジ夫妻の娘、アンの結婚。
アンにはキーズ医師、スレンダー(フォルスタッフの元部下)、フェントン(若い紳士)の3人の求婚者がいます。ペイジ氏が娘婿にと思っているのはスレンダー、ペイジ夫人はキーズ医師、そしてアンが好きなのはフェントン。このすれ違う関係は途中決闘騒ぎにまで発展しますが、フォルスタッフを懲らしめる森の中の妖精騒動の最中にアンはフェントンと連れ立って結婚。めでたしめでたし。
《感想》
これは、爽快なコメディです。
作品自体は、非情に短期間に作ったといわれているので、出来が悪いという評もあるようですが、私はこれ大好き。
こてんぱんにやられるフォルスタッフが、素敵すぎます。懲りない人です。ま、もともとヘンリー四世でもこりない小悪党なんですけれど。
ちなみにフォルスタッフの造型は、年寄りでデブ、勇ましく大見得を切るが臆病者、大酒のみ、欲深、狡猾、好色、とだらしない。しかし、口が立ち、しかもなかなか気の利いたことばをしゃべります。
このおおよそ惚れたはれたからは縁遠い容姿のフォルスタッフが、自分は2人の夫人からべた惚れに惚れられていると思い込んで、うきうきフォード夫人に会いに出かけるなんてそれだけで大笑いです。しかも、何度もひどい目にあっても、性懲りもなく。(しかし『ヘンリー四世』ではこのフォルスタッフ、場末の店の女からもてるんですよね~。相性がある?)
おかしいのは他にも、フォード氏ですね。嫉妬に狂うあまり、偽名を使ってフォルスタッフのところに駆けつけ、大金をフォルスタッフに支払ってでも浮気現場を取り押さえる情報を手に入れようとする。この時代、寝取られ男というのは相当の恥辱だったようで、もうフォード氏は必死です。
なんだかもう、この『ウィンザーの陽気な女房たち』において、男は形無しですね。やっぱり、女性は強い!? しっかりしています。
しかし、トリックスターとして道化を演じ、きりきり舞いをするフォルスタッフは、爽快で小気味がいいです。そして、ウィンザーの町の人々の姿が活き活きと描かれているのが特徴でしょう。
これが書かれた時代は、徐々に歴史の主役が王侯貴族から新興の有産市民階級(ブルジョアジー)に移っていく時代。この時代において、王城ウィンザー城のお膝元で騎士フォルスタッフがコテンパンにされみんなが大いに笑うというこの戯曲は、当事の貴族から市民への移り変わりは対立ではなく、お互いを認めながらのある明るさの中にあったということを表しているともいわれています。
さて、このお話をライブラリーにと考えると、ひとつ大きな難点があります。それは、アン・ペイジの結婚に絡むくだりです。この求婚者である、キーズ医師はフランス人。キーズ医師が決闘を申し込むエヴァンズ氏はウェールズ人。何が言いたいかというと、この求婚をめぐるやり取りは、フランスなまりの英語、ウェールズなまりの英語の語感の面白さや、いい間違い、聞き間違いなどのすれ違いでおこるどたばたコメディなのです。これをどう訳すべきなのか……。ちなみに、松岡和子訳ではキーズ医師のセリフは、発音がうまくできないたどたどしいことば。例えば、「しくしょ。あなたにメルシィです。私、あなた好きです」といった感じ。「しくしょ」は「畜生」ですね。そしてエヴァンズ氏はズーズー弁の日本語ですね。
どうもシェイクスピア作品の方言やなまりによる滑稽さの表現は、邦訳に苦慮しているようです。
しかし、それ以外は、実に爽快でこっけいですがすがしいコメディ。笑えます。
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