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シェイクスピア 全作品紹介
『ヘンリー六世 第三部』
“Henry VI part 3”
《ヘンリー六世 全体について》
ヘンリー六世の三部作は、シェイクスピアが一番初めに執筆した作品とされています。
シェイクスピアの劇作家としてのキャリアは、ここからスタートしました。
フランスとの百年戦争からイングランドの内戦である薔薇戦争の時代を描いた超大作であり、権謀術策うずまくどろどろの政治劇。重厚ですよ~。
一部ごと舞台として独立した作品として成立していますし、連続で上演してもひとつの作品としてみることができる、稀有な作品だと思います。
(注意:シェイクスピアの歴史劇では、舞台効果を高めるために、実際の史実どおりに事件が起こるとは限りません。注意が必要です)
《ざっくりしたみどころ(あらすじのあらすじ?)》
・ヨーク公プランタジネットはヘンリー六世の王位の非正当性を論破、ヘンリー六世は自らの死後の王位譲渡を約束。
・ヘンリー六世の王位譲渡に不服のマーガレット王妃は挙兵し、その戦いでヨーク公プランタジネットは戦死。しかしヨーク公の息子らが最終的には王妃軍を蹴散らし、ヨーク公の長子がエドワード四世として王となる。
・エドワード四世はフランス王ルイの妹を妃に迎えようとするが、その最中に、別の未亡人を妃とし、強力な盟友とフランス王の逆鱗に触れ、王位は再びヘンリー六世のもとへ。
・しかしその後エドワードは戦闘を行い、ヘンリー六世・息子の皇太子など正当な血族をすべて殺害し、再度エドワード四世王として即位。
《薔薇戦争のバックボーン:なぜランカスターとヨークが争うのか?》
ここでちょっと、薔薇戦争について簡単に説明しますね。そうしないと、ヨーク公の王位要求がなぜ正当なのかが、まったくわからなくなるので。
薔薇戦争は1455年のヨーク公リチャード・プランタジネットのヘンリー六世王に対する叛乱から始まりますが、その萌芽はさかのぼること50年以上、ヨーク公やヘンリー六世の祖父・曽祖父の時代の確執にあります。
イングランド王エドワード3世(在位1327~1377)には、王位継承権のある成人した5人の息子がおり、王が亡くなると長子相続で第一王位継承者の家系であるリチャード2世(在位1377~1399)が即位します。
しかし、リチャード2世には子どもがなかったので、次の王位は第二王位継承権のあるクラレンス公の家系のエドマンド・モーティマーが即位するはずでした。しかし彼は8歳と幼少であったため、第三王位継承権の家系であるランカスター家のヘンリー4世が強引に議会の承認を取り付け即位します。
ヘンリー4世は即位前年に、リチャード2世王によってフランスに追放になり、相続権も奪われていました。しかし、ヘンリー4世は追放期間中にイギリスに上陸し、リチャード2世の軍勢を破り、王を廃位に追いやって自らが即位します。
これに反発したクラレンス公の支持者が叛乱を起こしますが、ヘンリー4世は鎮圧し、王位を定着させました。
このヘンリー4世の子孫がヘンリー6世であり、本来王位を受ける権利があったクラレンス公を母方に、そして第四王位継承権の家系であるヨーク公を父方に持つのがヨーク公リチャードなのです。
ですからヨーク公リチャードは、祖父母の代のヘンリー4世への叛乱の代償として第1部では不遇の貴族として登場し、後半では正当な王位継承権をヘンリー6世に主張し自らの王位を要求するわけです。
このくだりは、シェイクスピアの戯曲では『リチャード二世』と『ヘンリー四世』で物語られます。
《あらすじ》
ロンドンの王宮でヨーク公はヘンリー六世に王座を迫る。ヘンリーは王座に固執するが、王位の正当性を証明できずヨーク公に論破され、ついには息子を廃嫡、王座をヨークに引き渡す。ただし、王冠の引渡しは、ヘンリー六世の死後という条件つきで。
このふがいない弱気なヘンリー六世王の姿に憤慨した王妃マーガレットは、軍をおこし、ウェイクフィールドの戦いでヨーク軍を撃破。この戦いで、ヨーク公の幼い息子ラトランド(史実では17歳だが、劇の設定は12歳くらいか)は戦死、そして囚われの身となったヨーク公は、マーガレットにより嘲笑愚弄された挙句、殺害されえる。
これに対しヨーク公の長子エドワードは報復戦をしかけ、王妃軍を撃破。エドワードはエドワード四世として即位。
そしてエドワード四世の体制を磐石とするために、フランス王ルイの妹を妃にするべく、ヨーク公の盟友ウォリック伯はフランス王宮に向かう。フランス王の宮殿にはマーガレット王妃も援軍を求めにやってきていたが、ルイはマーガレットをしりぞけ、妹とエドワード四世との結婚を快諾する。
しかし、そこに飛び込んできたのは、エドワード四世が色欲を求め未亡人エリザベス・グレーと結婚したという報告だった。
これを聞いた、フランス王は激怒。面目丸つぶれのウォリック伯はエドワード四世を見限り、マーガレットと手を組む。また、エドワード四世の弟ジョージも兄に失望し、ウォリック伯のもとへ。フランス王も援軍を約束する。
ウォリック伯の力を得、ヘンリー六世は再び王座に復位する。
しかしすぐさまエドワード四世は兵を挙げ、王妃マーガレットを捕虜にし、息子の皇太子(こちらもエドワード)を王妃の目前で殺害。ロンドン塔のヘンリー六世はエドワード四世の弟のリチャードによって殺害。マーガレット王妃は追放。ここに、赤薔薇ランカスター派の嫡流の血筋は絶える。
そしてエドワード四世は再即位し、ここにイングランドの安定が訪れるかと思いきや、弟のリチャードが王位への野心をほのめかし、平和に一抹の黒点が残る。
《感想》
栄枯盛衰。因果応報。
そんなことを考えさせてくれる、第3部です。
王位の譲渡や、ヘンリーとエドワードの間を行き来する王冠。信頼と不信。勝利と敗北。そういったものがくるくる入れ替わり、壮大なドラマを作り出しています。さすが、この三部作の中では一番と評されるだけのことはあります。
白薔薇の統領ヨーク公プランタジネットは、王位を手にする前に殺される。一方ヘンリー六世も、最終的には暗殺される。
マーガレットはヨーク公の息子を殺害し、その事実に胸を痛め涙するヨーク公に、息子を殺したときの血がしみたハンカチを投げてそれで涙をふけなどと、王妃側の貴族も心を動かされて涙をこぼさんばかりになるほどの嘲笑をやってのける。そして悲憤の中にヨークは死ぬ。しかし、愚弄嘲笑した本人のマーガレットは、最終的には目の前で息子を殺害され、悲しみにくれる。
こうした、自らの行為が後に自らにふりかかるという、まさに因果応報な出来事が全編に散りばめられていて、ストーリーのドラマ性は非常に高い。
ヨークに父を殺されたクリフォードが、ヨークの子エドマンドを殺すシーン。戦闘中に敵側にいた父親を殺してしまった息子や、敵側にいた息子を殺してしまった父親の嘆きなどのシーンも効果的に配置され、内戦のやるせなさをかもし出します。
息をつくまもなく展開する状況の中、二度目のエドワード四世の即位でやっとひと段落かとおもいきや、最後の最後でリチャード(後のリチャード三世)が、王位簒奪への野心を傍白する。これがとても不気味なのです。
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