★8月6日、わたしの場合、あなたの場合 |
08月06日 (金) |
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シャーシャーというクマゼミの声が鼓膜を蔽い、天地を領する8月6日。
日本の夏はまさにピークである。
この日、広島のうえに原爆が投下された。59年前のことである。
この日をみなさんはどうお過ごしですか。
わたしの場合をすこしご紹介しつつ、
亡くなった多くの御霊にまことを捧げたく思います。

わたし自身には戦争の現実的な実感はまったくないというに近い。
いま社会の底辺にあって、機会あるごとに非戦の声をあげてきたつもりだが、
そんな声を嘲笑うかのように核の脅威は少しも減じることなく、
いよいよ人類の未来を見えないものにしている。
核をなくし、世界のどこからも憎しみと暴力をなくすためには
わたしたち一人ひとりの力はあまりにも小さい。
それでも、せめてこの8月には、世界の平和を祈らないではいられない。
8月6日。この日、わたしがこの10年余にわたってしてきたことを
はなはだ恥ずかしながらお示しし、それをもってせめてもの慰霊とし
またわずかに非戦の思いを自分のなかで確かめたく思います。
この日の朝、忘れることなく口で誦ずる幾篇かの詩があります。
まずは、原民喜の「永遠(とわ)のみどり」。
ヒロシマのデルタに/若葉うづまけ/死と焔(ほのお)の記憶に/
よき祈りよ こもれ/とはのみどりを/とはのみどりを/
ヒロシマのデルタに/青葉したたれ
つづいては、「原民喜全集」(芳賀書房刊、全2巻)第一巻を引っ張りだし、
「水ヲ下サイ」「燃エガラ」「焼ケタ樹木ハ」などを自己流で朗読する。
40歳のときに被爆、そのことを詩と小説とエッセイにたくさん書き残して
46歳のとき、東京の吉祥寺・西荻窪間の鉄路に身を横たえ自殺した人。
原民喜の詩のあとは、おなじ原爆詩人の峠三吉の「原爆詩集」からの数篇。
特にその序「ちちをかえせ ははをかえせ」を誦ずることになる。
ちちをかえせ ははをかえせ/としよりをかえせ/こどもをかえせ/
わたしをかえせ わたしにつながる/にんげんをかえせ/
にんげんの にんげんの世のあるかぎり/
くずれぬ平和を/平和をかえせ
広島の平和記念館の北側、原爆慰霊碑を見通せるところにこの詩碑がある。
昨年の平和祈念式典の、秋葉市長の「平和宣言」につづく
子どもたちによる「平和のちかい」で小学生の男の子が、
青空のように澄みわたる声でこの詩を朗読、大泣きさせられた記憶も新しい。
さらにこの詩集から「仮繃帯所にて」「としとったお母さん」「ちいさい子」
「墓標」「その日はいつか」など、手当たりしだいに読んでいく。
そしてまた、こんなとき決して忘れることのできない詩がある。
与謝野晶子の「君死にたまふこと勿れ」である。
あゝをとうとよ、君を泣く、/君死にたまふことなかれ/
末に生まれし君なれば/親のなさけはまさりしも/
親は刃(やいば)をにぎらせて/人を殺せとおしへしや/
人を殺して死ねよとて/二十四までをそだてしや。/(以下略)
気分によってはこれらのほか、茨木のり子、大塚楠緒子、新川和恵といった
女流詩人の詩も。なかでも茨木のり子の「わたしが一番きれいだったとき」の、
無垢なこころを乱暴に駈け抜けていった戦争のすがたは胸にこたえる。
わが身の非力を羞じつつ、詩人の純な思いをこころに満たしつつ、
非戦の思いを新たにし、魂かぎり核廃絶、戦争のない世界への願いを祈る。
そんな8月6日。
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Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合(08月06日)
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Hiromi~さん (2004年08月06日 17時31分)
私自信の中にはこの日の記憶というものは全くありませんが、生まれていた
事は事実です。名前の紘美とう文字も父が八紘一宇とか何とか行ってつけたそ
うですから、嫌でも終戦前の日本人の気持ちだったのだろうと。今では変わっ
た字ですねなんていわれるくらいですが。
強烈な印象はラボの世界のインタビューで、丸木俊さんをお尋ねした時のこ
とです。がのサンもご一緒ではありませんでしたか???丸木さんの強烈な話
とどくろのお面。今でも思い出します。
丸木美術館の数々の広島の絵。最初見たときは怖くて目がむけられませんで
した。
広島の平和公園の千羽つるに火をつけた大学生。その学生の大学で平和教育
が始ったというニュース。なんともやりきれない話題ですね。
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Re:Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合(08月06日)
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がのさん (2004年08月06日 19時24分)
Hiromi~さん
>強烈な印象はラボの世界のインタビューで、丸木俊さんをお訪ねした時のこ
とです。がのサンもご一緒ではありませんでしたか? 丸木さんの強烈な話
とどくろのお面。今でも思い出します。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
お~っ、よく覚えておいでですねぇ。もう30年近く前のことになりますよ。
ひととおりお話を終えたところで、みんな丸木さんの前に坐わらされ、そのド
クロのお面を見せられて、子どもたちとともに「原発やめろ!」「核はストッ
プ!」を声を揃えて唱えさせられました。び~っくりしましたね。ほんと、ち
ょっとヤバイ雰囲気でしたよ。いまにして思えばなつかしいですが。
そのあと美術館のほうに移って見せてもらった原爆の図。わたしにとっても初
めて見る絵でしたが、その飲み込まれるような圧倒的な力の前でからだはフワ
フワ、半意識の眩暈状態でその悲惨なさまを見、完璧にうちのめされたもので
した。正視できないような無惨さ、しかししっかりと見ろといわれましたね。
この時期になるとあの絵がときどきテレビなどで紹介されますが、その衝撃は
いつの場合も新たです。それにつけても、あのときのはげしい衝撃と感動をい
つまでも風化させないために、わたしたちはどうすればいいのでしょうねえ。
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Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合(08月06日)
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もんろおさん (2004年08月07日 12時17分)
私が小学生の頃はこの日は登校日でした。
今は違いますね。
テレビで流れる式典の様子や、8:15に黙祷をするのは全国的なことだと
思っていましたが、転校して東京に行った時8:15が何の意味も持たない
ことを知り、ちょっとショックだったのを覚えています。
95年のシャペロンの時(戦後50年)ホストファミリーのお隣さんが雑誌の特集の記事を
見せてくださったことを想いだします。
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Re:Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合-1
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がのさん (2004年08月07日 14時49分)
もんろおさん
>テレビで流れる式典の様子や、8:15に黙祷をするのは全国的なことだと
思っていましたが、転校して東京に行った時8:15が何の意味も持たない
ことを知り、ちょっとショックだったのを覚えています。
----------------------------
ありがとうございます。
広島で育ち広島に住んでおられるもんろうさんにとって、8月6日という日
は、いつもどおりのふつうの日というわけにはいかないでしょうね。もちろ
ん、日本人だれにとっても、いや、人類すべて、生類すべてにとってそれは特
別の日のはず。ところが、ラボにあってはそれを口にするのは歓迎されないこ
ととされてきました。わたし自身も在職中はだいたい口をつぐんできたように
思います。広島・長崎を語らないでも平和は語れる…。そうでしょうか。見て
も見ぬふりをして、風船ダマのようにきれいだけれど軽く空っぽな存在でい
る、それが責任ある市民の態度でしょうか、バランスのとれた社会の一成員と
いえるでしょうか…、そんなふうに思うこのごろです。
ここ数年、秋葉市長の平和宣言を新聞の切り抜きで取ってあります。詩人では
ないかと思えるほどこの人のことばは美しく力があり胸にこたえます。2001
年には「平和と人道の世紀」づくりを宣言しました。イラクの人質事件などに
ふれるとこれは空念仏にも聞こえますが、たしかにここから世界の主要な大学
で「広島・長崎講座」が開講された意義は小さくないように思います。2002
年、憎しみと暴力、報復の連鎖を断ち切る和解の道が訴えられ、重ねて核兵器
の絶対否定と戦争の放棄が呼びかけられました。2003年、時代が逆行し戦後
から戦前へ舵が切られている国内外の状況を指摘し、この暗闇を消すことがで
きるのは力の支配という暗闇ではなく、法の支配という光だとし、光を掲げま
した。
そして今年。未来へ向かう流れを具体的につくるとし、「行動の1年」を宣言
しました。世界の各地に平和の種を一人ひとりの手で蒔くという活動。それを
よりどころにしつつ核兵器廃絶のための緊急行動を展開するとしています。い
よいよ行動のときです。自分に何ができるだろうかは今は問わないとして、こ
うした志に感動し共鳴いたします。(つづく)
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Re:Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合-2
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がのさん (2004年08月07日 18時27分)
もんろおさん《承前》
これと同様なことを広島平和シンポジウムの基調講演で作家の澤地久枝さんが
語っていますね。人類が滅びるのは「身から出たサビ」だから仕方ない。しか
し、核兵器は地球のすべての生命を道連れにしてしまう。核兵器を廃絶する以
外に地球や人類が生き延びる道はない、と語り、わたしたちは次なる命のた
め、未来のために役割を果たす人間として生きていきたい、という。そう、未
来のために自分のできる範囲のことをしなければならない。ラボの世界にぬく
ぬくとこもって野郎自大でいていい時代ではない、そんなふうにいわれている
ように思えますが、どうでしょうか。
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Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合(08月06日)
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ちびままさん (2004年08月08日 18時21分)
はじめまして、広島に実家があり今は埼玉でラボをしています。
私が子どもの頃も登校日でした。それより何より印象的なのは祖母が毎
年この日は欠かさず平和公園と亡き兄弟の眠るお墓に足を運んでいたこ
とです。祖母の兄弟は殆ど原爆で亡くなりました。だから毎年この時期
になると戦争の頃のことが話題になり、学校ではスライドを見たり課題
図書が「ふたりのイーダ」だったり。広島は8月は特別な季節でした。
ところがこちらに越して全く変わりない8月を迎えた時はびっくりした
ものです。ニュースで少し取り上げる程度。「秋葉市長が・・・」という言
葉であーあのひと市長になったんだ、と気付く程度でした。我が子が小
学校の中学年になった頃、夏休みに帰省し原爆資料館に連れて行きまし
た。ショックだったようです。あの後、学校の図書室の隅にあった「は
だしのゲン」を読みあさったらしいです。私が子どもの頃ももうすでに
広島の日常は戦争とは無縁のものでしたが、資料館に訪れた時は数日一
人で寝れないほどおそろしかったし、それ以後見聞きしたことはあの恐
怖を呼び起こすものでした。広島以外の子どもにも訪れてほしいと思い
ます。
今年の6日はラボランドでした。日にちの感覚をなくすあの場所で「あ
ー今日8月6日だったんだね」とつぶやいたらそばにいたラボっ子に
「それが何?」と聞き返されてしまいました。
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Re:Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合-1
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がのさん (2004年08月08日 22時45分)
ちびままさん
>祖母が毎年この日は欠かさず平和公園と亡き兄弟の眠るお墓に足を運んでい
たことです。祖母の兄弟は殆ど原爆で亡くなりました。だから毎年この時期
になると戦争の頃のことが話題になり、学校ではスライドを見たり課題図書が
「ふたりのイーダ」だったり。広島は8月は特別な季節でした。ところがこち
らに越して全く変わりない8月を迎えた時はびっくりしたものです。
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ありがとうございます。ご実家が広島で、大事な近親者をあの原爆で喪って
おられる…。つつしんでお悼み申し上げます。8月6日、8月9日がどういう
日か、平和ボケのなかでその記憶は風化し、関心が薄くなり忘れられようとい
ている事態を前に、それを歎いたり、誰かを批判し非難する気にはなれません
が、せめて自分くらいはできる範囲で具体的な一歩をスタートさせたいものと
願っています。さあ、どこからスタートするか。幸いわたしは、貧乏してでも
自由がいいとしてあらゆる組織と一定の距離をおき、だれからも拘束のワナを
かけられない立場にありますので、あちこちで勝手なことをやっております
が、テューターのみなさんの場合はどうでしょうか。それぞれの立場がありま
すので、あまりここで提言めいたことは云いたくないのですが、叶うことな
ら、子どもたちがいつでも目にすることのできるところに「ふたりのイーダ」
とか「はだしのゲン」、あるいは丸木俊・位里の絵本「ヒロシマのピカ」「原
爆の図」くらいはおいておきたいと思うわけですが、どうお考えでしょうか。
(つづく)
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Re:Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合-2
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がのさん (2004年08月08日 22時46分)
ちびままさん《承前》
それと同時に、命を軽んじがちなこのごろの子どもたちに何かの機会にぜひ伝
えてほしいと願っていることがあります。沖縄のことばで「チュクルチェーニ
ンダラン」というもの。その意味は、人を傷つけたら眠れない、ということら
しいです。琉球王府のころからのことばだとか。人と争って勝ったところで、
相手を傷つけた寝覚めの悪さは、自分が傷つけられたよりももっともっとこた
える、その痛恨は10年や20年では水に流せるような問題ではない、だから最
初から戦わないという、大国支配の歴史の波にさらされつづけてきた沖縄びと
のすばらしい平和思想。謙虚に学びたいものです。
地球はあと100年しかもたない、とまことしやかに説く学者がいます。100年
先まで自分は生きていないから、知ったこっちゃないとは云えません。事実、
この現在でも地球の7つか8つをふっ飛ばすだけの核が世界には存在するとい
います。自分の目先のことばかりでなく、地球の未来のために何かをしなけれ
ばならないように思えますが、いっしょに考えていきませんか。
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Re:Re:Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合-2
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もんろおさん (2004年08月09日 01時37分)
がのさん
>わたしたちは次なる命のため、未来のために役割を果たす人間として
生きていきたい、という。そう、未来のために自分のできる範囲のこと
をしなければならない。
ラボの世界にぬくぬくとこもって野郎自大でいていい時代ではない、そ
んなふうにいわれているように思えますが、どうでしょうか。
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→改めてがのさんのん文面をよんで自問自答しています。
私に何が出来るのか?何をしなければならないのか?
広島でも今の被害者意識を前面に出した展示の仕方を考えるべきという
話も出ています。
先日の広島で被爆したアメリカ兵のTV番組はなかなか面白い視点だった
と思います。
色々な角度で広島を見ていく必要もあり、やはりもう少し勉強しないと
いけないですね。
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Re:Re:Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合(08月06日)
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がのさん (2004年08月10日 09時38分)
>Hiromi~さん
>強烈な印象はラボの世界のインタビューで、丸木俊さんをお訪ねした時のこ
とです。
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もう30年近く前のことになりますよ。ドクロのお面を見せられて、子どもた
ちとともに「原発やめろ!」「核はストップ!」を声を揃えて唱えさせられま
した。び~っくりしましたね。
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きのう、長崎原爆の日。平和祈念式典では改めて平和の尊さが語られ、核廃絶
が宣言されました。約1万発の核兵器を保有し、なお臨界前核実験をくりかえ
すアメリカを批判、アメリカ市民にともに手をとりあって世界平和を進めよう
と伊藤市長は訴えました。そして何の符合か、この日、福井の美浜原発で事故
が起こり、4人が死亡、2人が重態、5人が重軽傷という。丸木さんがあんな
に心配していたことが現実に起きてしまいました。
イラク戦争、テロのますますの頻発という情勢と考えあわせても、人間の英知
はどうしたのだ、丸木俊さんがその老いた体をはって「原発反対」「核兵器を
なくせ」と訴えつづけていた30年前から、わたしたちはどれほどの前進を勝
ち取ったかを考えないではいられません。核廃絶のむこうにしか人類の希望は
ない、…おおげさな考え方でしょうか。
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Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合(08月06日)
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サンサンさん (2004年08月12日 20時23分)
8月6日は息子が生まれた日です。
夫の命が助かって、その後に生まれた息子の誕生日。
息子の誕生を祝うと同時に、全世界の人々の平和を祈りたいです。
前に伺ったときに、書きたかったことです。
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Re:Re:★8月6日、わたしの場合、あなたの場合(08月06日)
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がのさん (2004年08月12日 23時46分)
サンサンさん
>8月6日は息子が生まれた日です。夫の命が助かって、その後に生まれた息
子。息子の誕生を祝うと同時に、全世界の人々の平和を祈りたいです。
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そうでしたか、お誕生日でしたか。おめでとうございます。そういうお話はホ
ッとさせていただけますね。年間を通じていちばん暑さのきびしい季節のお生
まれ。ニュージーランドにいらっしゃっているお兄ちゃんのことですか。真夏
に生まれ、こころの強い人になっておられることでしょう。平和の灯をかかげ
ながら海外で学び元気に活躍しておいでですね。つぎの時代への希望の灯で
す。ぜひお力を発揮し、世界を舞台におおきな役割をはたしてくださいますこ
と、お祈り申し上げます。
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