★日本の「美しい心」に託された小人の家族 |
09月04日 (日) |
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――「木かげの家の小人たち」いぬい・とみこ
「木かげの家の小人たち」を読みました。これも一気に読んでしまう内容でしたよ。小人の家族そしてロビンとアイリスという子どものこびとが成長していく様子。戦争を乗り越えていく様子。この家族を一生懸命守ったゆりの努力。やさしい哲兄さんが終戦の1週間前に19歳の若さでなくなること。小夜ちゃんとおしゃべりしたくて待っていました。
【Play with meさん 2005.8.23】
PWMせんせい、長いおはなしなので、「あとで」と思っていたのですが、待ちきれずに小夜もさっそく読んでしまいました。とっても、と~ても感動的なおはなしでしたね。読んでよかったなあ、と思いました。
戦争のあった時代、東京の森山さんのおうちをさまざまな暗い影がおおいはじめます。おとうさんは「非国民」、国をあやまる自由主義者として警察に連れていかれたり、ゆりちゃんのすぐ上のお兄ちゃんが急に戦争かぶれになったり…。日本人の「美しい心」を信じてイギリスの教育者がこの森山家の人びとに小人の夫妻、バルボーとファーレンを託して帰国して行きます。ほかのだれにも秘密です。身長14センチほどの小人。このアッシュ家に間もなくアリスとロビンという子どもが生まれます。本の小部屋の片隅に住む4人の小人家族を支えるのはやさしい森山家の人たち。小さな空色のコップに注ぐだミルクを毎日欠かさず提供します。これを唯一の糧にして生きる小人たち。その役目はずっとずっと引き継がれて、最後は小学校3年生のゆりの役目になります。しかし、戦争は、理不尽なことを押しつけたり、人間のやさしい心を奪うこともあり、親と子がいっしょに暮らすというささやかな幸福さえ奪うことがあります。
爆撃がはげしくなり、東京での暮らしは危険になって、ゆりちゃんは家族から離れ、ひとり信州に疎開することになります、小人一家をともなって。そうそう、そこが黒姫です。当時は黒姫ではなく小林一茶の句で耳にする「柏原」と呼ばれていました。野尻湖のそばの農家での疎開生活。ラボの皆さんの耳には聞きなれた野尻湖、弁天島、黒姫山、妙高山、飯綱山、古間駅、…なんて名前がよく出てきますね。やせっぽちで体の弱いゆりちゃんは、まわりから「非国民の子」と呼ばれて冷たい目にさらされながら勤労奉仕につとめ、草刈りをしたり山から薪運びをしたり、さまざまな努力を重ねて小人たちにミルクを与えつづけます。牛乳なんてぜいたくで、そんなものがあれば国のために戦っている兵隊さんに与えられるべきとされています。水のように薄められた牛乳ならまだしも、やがてそれが粉ミルクになることもあります、ヤギのお乳になることも。それさえも入手が困難になり、ほんの一滴しか供することができないときもある。そんななかでゆりちゃんは病気で倒れてしまいます。空いろのコップに入れるミルクがなくなると、ひとことも告げずに出ていってしまう小人の家族。小人たちだって生きるのに必死です。
小人たちに提供するミルクに戦争というものを投影させてその惨さを語るこの作家の描写力の確かさに、小夜はすごさを感じました。それに、ロビンやアイリスと仲良しのハトの弥平。世の中で起きていることを鳥の目で捉えて小人の子どもたちに知らせます。ふしぎな予知能力をもち、つむじ風とともに現われては消えるアマノジャキという小人の仲間のような存在もおもしろいですね。
※…戦争のことをみんなで考える「8月」は終わりましたし、戦争のおはなしはもう書かないと云っていたのに、また書いてしまいました。だって~、いいおはなしは、いいおはなしだし……。
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Re:★日本の「美しい心」に託された小人の家族(09月04日)
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Play with meさん (2005年09月04日 21時30分)
小夜ちゃん
読んでくださったのね。
森山家を通して、戦争の悲惨さがひしひしと伝わってきますね。
小人の家族の生を責任を持ってしていたゆりさんもついに病気に倒れて
しまいますね。
小人達は気にかけながらも、「今が出て行くとき」とそっと出発してし
まいますね。
終戦後の小人達の生き様を『くらやみの谷の小人たち』に書かれていま
す。
戦後の東京の様子は、はとの弥平の目を通してかたられています。
まだはじめのほうしか読んでいませんが。またお知らせしますね。
表紙裏に黒姫周辺の地図が載っており、地震(ない)の滝もあります。
なんだかふるさとのような気分ですよ。
小夜ちゃんとお話できて良かったです。
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Re:Re:★日本の「美しい心」に託された小人の家族(09月04日)
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がのさん (2005年09月05日 17時07分)
Play with meさん
>小夜ちゃん 読んでくださったのね。森山家を通して、戦争の悲惨さ
がひしひしと伝わってきますね。
★…はい、いまもまだこころがほかほかしています。とても感動いたし
ました。PWMせんせいがごいっしょに読んでくださるので、小夜も張り合
いを感じながらいっしょうけんめいに読めるような気がします。それに
しても、もう続編の『くらやみの谷の小人たち』をお読みなんですか。
すごい、すごい。これにも黒姫のことがいろいろ出てくるのですね。終
戦後の東京の生活を描いた作品とか。これもたいへんおもしろそう。そ
のうち図書館で探してみます。
このあいだ借りてきたもう一冊のいぬいさんのご本『光の消えた日』
は、『木かげの家の小人たち』を読んでいるときに、おかあさんに取り
上げられてしまったの。職場に毎日持っていってしまうものですから、
困りますね。まだ半分くらいしか読んでいないといいますし。仕方ない
ので、ほかのご本を読んでいますけれど。
続編で、ゆりちゃんや、日本に残ることになったロビンやアイリス、そ
してハトの弥平さんが、どんな戦後の東京を見せてくれるのか、せんせ
いの次のお話をたのしみにしています。
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Re:★日本の「美しい心」に託された小人の家族(09月04日)
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カトリーヌさん (2005年09月24日 15時13分)
「こかげの森の小人たち」小学生の頃に藤井先生に借りて読みました。そ
のころ藤井先生は毎週いろんな本を貸し出ししてくれていたのです。重い
のにね。まだラボの物語がこれほどない70年代前半。ラボっ子たちの物
語の世界が広がるようにと願ってのことだったんでしょう。
他にも借りて読んだと思うのですが、一番印象に残っているのが、「こか
げのもり」と「オデュッセイア」でした。
私もテューターとなり、藤井先生に近づこうとクリスマスの在籍表彰の子
には本を送っています。小学生文庫のいいのを探して。「こかげのもり」
はリストに入れています。今まではラボのライブラリーにあるものをまず
第一に選んでいましたが、今年辺りからいろいろなものにしないと・・と
思っています。
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Re:★日本の「美しい心」に託された小人の家族(09月04日)
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カトリーヌさん (2005年09月24日 20時44分)
「こかげのもり」ではなくて、「こかげの家」でした。どういうわけか、
小学生の頃から間違えています。こかげのもり、なんて、意味不明ですよ
ねえ。なぜだか・・・
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Re:Re:★日本の「美しい心」に託された小人の家族(09月04日)
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がのさん (2005年09月24日 20時50分)
カトリーヌさん
>藤井先生は毎週いろんな本を貸し出ししてくれていたのです。ラボっ
子たちの物語の世界が広がるようにと願ってのことだったんでしょう。
一番印象に残っているのが、「こかげのもり」と「オデュッセイア」で
した。私もテューターとなり、藤井先生に近づこうとクリスマスの在籍
表彰の子には本を送っています。
⇒藤井先生はその後もお元気にご活躍ですか? カトリーヌがいつも藤
井先生を目ざして頑張っていることは、よくわかっていますよ。目標の
敬愛する人を持てるって、とっても幸せなことですね。そう、この秋で
もう一歩、この冬でさらにもう一歩、です。この「木かげの家の小人た
ち」を選んでラボの子どもたちに推薦する。それだけでもすばらしい見
識と人間性を藤井先生にしのぶことができますよね。
>今まではラボのライブラリーにあるものをまず第一に選んでいました
が、今年辺りからいろいろなものにしないと…と思っています。
⇒大事なことですね。「広さ」「グローバル」を標榜しながら、ラボの
物語ばかりに縛られているようでは困ります。ひとつ眼鏡をはずすだけ
で、思いがけないおもしろさが見えてくることが多いですから。
それに、ずうっと以前のことですが、どれほどのテューターが「ロミオ
とジュリエット」の原作(翻訳)を読んでいるか、一部で調べたことがあ
りました。ほとんど原作では読んでいないことを知って驚いたことがあ
りました。原作をきちんと読んでほしいとお薦めしたいですね。ごく最
近のわたしの例で、「大草原の小さな家」や「ピーター・パンとウェン
ディ」を改めて読んでみました。当然ながらラボ・ライブラリーの制作
にはさまざまな制約があり、心ならずも表わしきれない部分が多いで
す。作品のもっとも肝心なメッセージはラボが捨てた部分にあることだ
ってあります。ピーター・パンなんか、ラボのものももちろんよくつく
られていますが、原作を読んだらあの何十倍も楽しめるなあ、と思った
ものです。
別件。桧原村のことをご紹介しておいででしたね。近々行ってみようか
と思っていますが、あの鍾乳洞へは、車で行かないとだめですか。バス
の便などはありませんか。
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Re:Re:Re:★日本の「美しい心」に託された小人の家族(09月04日)
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カトリーヌさん (2005年09月25日 13時10分)
藤井先生は、お元気ですよ! 先日もラボっ子たちが愛・地球博に出てい
ました。その日はちょうど交流しているカナダの姉妹都市が出る日でもあ
り、ずっとお忙しかったのです。でも、相変わらず、ですよ。
子どもたちにラボライブラリーのふれてほしくて、むりやり?プレゼント
しているわけですが、本当に、原作の奥深さと、また、ラボライブラリー
のよくぞまとめた、と思えるところが楽しくて、そんなところを子どもた
ちにも味わってほしいのですが。今の子ども達は塾や宿題、スポーツが忙
しくて本をじっくり読む、楽しみのために読む(知識のためでなくて)と
いう経験が少ないようですね。
檜原村には、五日市からバスが出ていますよ。JR五日市線の終点「武蔵
五日市」です。大岳鍾乳洞に行くには、鍾乳洞入り口というバス停がある
と思います。バス停から、かなり歩きます。とちゅう砂利の採取場を通っ
たり、風情のないとことをちょっとがまんすれば、後は別世界ですよ。特
に滝へ上っていく渓流脇の山道、水が本当に透き通っていて・・・また滝
壺は小さいながら、妖精が水を浴びていそうなところです。夫は新しい自
転車が来たら自転車で行ってみようかといっています。がのさんもしい
らっしゃるならご一報下さいな。お送りしますよ。
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