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今月のおはなしMonthly Labo Library Story

Donkey's Ears for the King 王さまの耳はロバの耳

2025年9月の紹介

Donkey's Ears for the King

王さまの耳はロバの耳

The Greek gods loved music more than anything else.
ギリシアの神がみは,なによりも音楽がすきでした。
The best musicians among them were Pan, the god of the forest, with his reed pipe and Apollo, the god of music, with his lyre.
なかでも,森の神パンのあし笛と,音楽の神アポロンのたてごとは天下一品。
Even the gods themselves could not be sure which was superior.
どちらがすぐれているとも,神がみにもきめられません。
So, one day they decided to hold a contest with Tomolus, the mountain god, as the judge.
そこであるとき,山の神トモロスの立ち合いのもとに,ふたりの神はうでくらべをすることにしました。
Tomolus gathered many people to hear the music of the two gods.
トモロスはふたりの音楽を聞かせるため,人びとをよびあつめました。
One of them was Midas, King of Phrygia, who was a good friend of Pan.
そのなかには,パンとなかのよいフリギアのミダス王もまじっていました。
“Now listen well and decide whose music is more beautiful.”
「さあ,どちらの神の音楽が美しいか,よく聞きくらべてくれ」

みんなが口をそろえてアポロンの音楽をほめる中、ただ一人、ミダス王だけがパンの勝ちだと言いはります。
かんかんに怒ったアポロンは、ミダス王の耳を、ロバの耳に変えてしまいます。
それからというもの、ミダス王は帽子で耳を隠して暮らすのですが、困ったことに髪の毛が伸びてくるので、床屋に切ってもらわなければならなくなりました。

ミダス王は、耳のことを人に話すと命はないぞ、と床屋を脅して髪を切らせます。
ところが今度は、床屋が困ってしまいます。
話すなと言われれば、話したくなるもの。話したいのを我慢するうちに、床屋のおなかはふくれて、苦しくなってしまいます。

そこで、人に話せないなら穴の中に話そう、と床屋は穴を掘って王さまのヒミツを話します。
The king has donkey's ears.
「王さまの耳は、ロバの耳!」
床屋は穴を埋め、すっきりして帰るのですが、次の春、その穴のあったあたりからアシが生えてきて・・・。

友達に肩入れして、不正な判定をしたミダス王はよくないのですが、耳をロバにされてしまうというのはちょっとやりすぎな気もしますね。
ヨーロッパの文化では、ロバは愚鈍さの象徴とされることが多く、「知性がない」「馬鹿」「愚か者」といったイメージがあります。
ですから、耳をロバに変えられてしまったミダス王は、相当ひどい目にあっているのです。

ほかにもミダス王は、神からの褒美に「触れるものをすべて黄金に変える力」を望んだことでも有名です。
触れるものすべてが金になることを喜び得意になるミダス王ですが、食べ物が金の塊に変わって食べられなくなり、自分の娘さえ金の彫像に変わってしまったのを見て、この能力は破滅につながるものだと気づきます。
どうもミダス王は、口が災いして、大変な目にあってしまう人物のようです。

王様の耳のことは国中に広まってしまいますが、その後はどうなったのでしょう?
隠し続ける必要がなくなったので、帽子を取って堂々とロバの耳のまま生きていったというおはなしや、心を入れ替えてロバの耳を元に戻してもらったというおはなしなど、さまざまなバリエーションがあるようです。
ですが、このちょっとおっちょこちょいな王さまは、人々には愛されていたようですよ。
ラボ・ライブラリーでは、このおはなしは、こんな風に終わります。

“What about that, our king has donkey's ears.
「なんと,わしらの王さまの耳はロバの耳だぞ。
Now, that's really something, isn't it?” Isn't it?
たいしたものじゃないか!」ってね。

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