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今月のおはなしMonthly Labo Library Story

December's Room of Mustn't Look みるなのはなざしき

2025年12月の紹介

December's Room of Mustn't Look

みるなのはなざしき

A very long time ago, a certain man went to the mountains early in the morning to cut grass.
とんと むかし,あるおとこが あさのうちに,山へくさかりに いったと。
As he walked along, he found a wild bush warbler fluttering about by the side of the road with a wounded leg.
すると,みちばたで 山のうぐいすが,あしをけがして,バタバタしておったと。
The man felt sorry for the bird. He picked it up and carried it back home with him and tended its wound with care.
かわいそうにおもった おとこは,うぐいすをつかまえて うちへつれてかえって,ねんごろに けがのてあてを してやったと。
In three days the wound was completely healed,
そうしたら,3日のうちに けがは すっかりよくなったので,
so the man took the bush warbler back to the same mountain and let it go, they say.
おとこは また うぐいすを もとの山に つれていって,はなしてやったと。
Three days later when the man went to the mountain to cut grass again, a beautiful young girl came up to him and said,
それからまた 3日たって,おとこが 山へ くさかりにいくと,きれいないむすめが あらわれて,
"You are a kind man.
「おまえさまは よいお人らしい。
Let me take you now to a wonderful place.
これから いいところへ あんないしましょ。
Keep your eyes closed until I say it's all right."
『いい』というまで 目を つぶっていてくだされ」と,いうので,
So the man kept his eyes closed till her voice said, "It's all right now."
おとこが 目を つぶっていると,「さて,もういいぞ」と,声がした。

ある日、娘は男に、この屋敷の奥の12の座敷のうち11までは見てもよいが、12番目の座敷だけは見てはいけない、と言い置いて出かけます。
男が1番目の座敷を開けると、そこにはお正月の松かざりがあって、追羽根(羽付き)の音が聞こえていました。
2番目の座敷を開けると、梅の花。3番目の座敷は、満開の桜。
こうして、11番目の座敷まであけてしまった男は、見てはいけないと言われていた12番目の座敷がどうしても見たくなり、そーっと戸を開けてしまいます。

よく知られた昔ばなしですね。
動物を助けて恩返しをされたり、不思議なユートピアに連れて行ってもらったり、してはいけないという約束を破って罰を受けたり元通りになったりする物語は、「鶴の恩返し」や「おむすびころころ」「浦島太郎」などたくさんあります。
あらためて考えてみると、不思議なお話ですね。

山で出会った娘に、男が目をつぶったまま案内されたのは、うまいごちそうやお酒が満ち溢れた立派なお屋敷。
昔の人々にとって、高い山や深い森、海のかなたは、なかなかたどり着くことができない場所だったのではないかと思います。
人がたどり着けない場所だからこそ、そこは自分たちが住むこの世とは違う、不思議な異世界を想像したのかもしれません。

「見るな」という禁止も、人との約束や共同体のルールは必ず守らなければならないということを、聴く人に教えているのかもしれません。
ですが、「見るな」と言われれば、見たくなってしまうのも人の心理です。
それに、12番目の座敷を見なければ、男はいつまでも山の立派な屋敷にとどまって、現実の世界には帰ってこれないのですから、それも困ってしまいます。

そして12番目の座敷には何があったのでしょう?
このお話では、最後の座敷の中では、あっちのすみでぽとり、こっちのすみでぽとりと、うぐいすがおかねを落としながら飛び歩いています。

このとても不思議で美しいイメージの異世界物語は、野村万作氏(現人間国宝)の味わい深い語りで紡がれます。
この語りにひたりながら、この世ならざる不思議な世界のことを、いろいろ想像してみるのも面白いですね。

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