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今月のおはなしMonthly Labo Library Story

THE STORY OF MIMI-NASHI-HŌÏCHI 耳なし芳一

2026年1月の紹介

THE STORY OF MIMI-NASHI-HŌÏCHI

耳なし芳一

Some centuries ago there lived at Akamagaséki a blind man named Hōïchi, who was famed for his skill in recitation and in playing upon the biwa.
何百年も前、この赤間関に、芳一という盲人が住んでいたが、琵琶の上手として知られていた。
From childhood he had been trained to recite and to play; and while yet a lad he had surpassed his teachers.
いとけないころより琵琶の弾き語りを教え込まれ、若年にしてすでに師匠たちをしのぐものがあった。
As a professional biwa-hōshi he became famous chiefly by his recitations of the history of the Heiké and the Genji;
琵琶法師として身をたてた芳一は、平家と源氏にまつわる物語を語ることでもっぱら聞こえていたが、
and it is said that when he sang the song of the battle of Dan-no-ura "even the goblins (kijin) could not refrain from tears."
わけても壇ノ浦合戦の段を吟ずると、「鬼神をして哭かしむる」ほどだったという。

下関の阿弥陀寺に身を寄せている芳一のもとに、ある夜、一人の居丈高な侍が現れて、自分のつかえている高貴な身分の方のところで琵琶を演奏するように命じます。
侍に手を引かれた芳一は、途方もなく大きな館の奥に通され、そこで『平家物語』の「壇ノ浦合戦の段」を弾くように求められました。
居並ぶ人々は、芳一の演奏に感銘を受け、これより六夜続けて琵琶を弾きに来るように、そしてこのことは誰にも言わないように申し付けます。
次の夜、芳一が寺を抜け出すことに気づいた和尚は、どこへ行っていたのかと聞くが、芳一は答えない。
心配した和尚は、寺の男衆に芳一の後をつけさせました。
すると、意外なところから芳一のかき鳴らす琵琶の音が聞こえてきます。

芳一は一晩中、平家の墓の並んでいるところで、琵琶を弾いていたのです。
芳一の琵琶は、風を切る矢音や振り下ろす太刀の音、合戦の模様や平家一門の最後のありさまをありありと映し出しました。
居並ぶ人々は「なかなかの名手じゃ」「天下広しといえども、芳一ほどの語り手はないとみた」とほめそやし、クライマックスでは聞き入る人から悲鳴が上がり、むせび泣きと慟哭があがるのですから、芳一は相当な名手だったのでしょう。
それとも、『平家物語』がまさに、芳一の琵琶を聴いている者たち自身の物語だからでしょうか。

一芸に秀でた人が、魔に魅入られるという話は、たくさん存在します。
芸能の力には、この世ならざるものを引き寄せる力があるのかもしれません。
特に『平家物語』は、滅亡した平家一門の鎮魂をもとに成立したといわれているので、なおさらかもしれません。

このお話を書いたラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は、ギリシャ生まれアイルランド育ちで、日本文化に影響を受けて来日し、日本に帰化した文学者です。
彼は幼少期に左目の視力を失っており、晩年には右目の視力も衰えていました。
そのため、盲人の芳一に深い共感を持っていたといわれています。
芳一が「鬼神をして哭かしむる」ほどに琵琶を弾いたように、自身も文学で表現をしようとしたのかもしれません。

ハーンがひきつけられたこの物語は、怪談としてだけではなく、とても力強く、美しく、洗練された文学として描かれています。
物語中に流れる、迫力満点の琵琶の音も、物語を盛り上げます。
ハーンは「耳なし芳一」のほかにも、「雪女」や「むじな」「ろくろ首」などのお話をまとめ、『怪談』として出版しました。
目に見えない世界に対する日本人の感性について、ハーンはどのように感じたのでしょう?
ハーンが文学として再構成したこのお話の美しさを、ぜひ聞いてみてください。

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