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今月のおはなしMonthly Labo Library Story

Snow Crossing 雪渡り

2018年1月の紹介

Snow Crossing

雪渡り

雪がすっかり凍って大理石よりも堅くなり,
The snow is frozen stiff,even more solid than marble
空も冷たい滑らかな青い意思の板で出来ているらしいのです。
And to all appearances the sky is a cold smooth blue sheet of stone.
「堅雪かんこ,しみ雪しんこ」
“Packed Snow, Cold Snow, Crunch and Slip.”
お日様がまっ白に燃えて百合の匂を撒きちらし
The sun burned a pure white, releasing the fragrance of lily everywhere,
又雪をぎらぎら照らしました。
Glittering the snow below.
「堅雪かんこ,しみ雪しんこ」
“Packed Snow, Cold Snow, Crunch and Slip.”


 四郎とかん子が雪の中を歩いて森の中へと入って行きます。するとふたりの唄に答えるように狐の子,紺三郎が現れました。紺三郎は四郎とかん子を幻燈会に招待します。雪の凍った月夜の晩,四郎とかん子は狐学校の幻燈会に参加するため,森を訪れました。幻燈会では教訓的な出来事,狐が人間に訴えたいことが語られるのです。狐たちは「私たちは人をだますとうそをいわれてきた」といいました。けれども四郎とかん子は「紺三郎さんが僕らをだますなんて思わないよ」といって紺三郎から出された団子を,口にします。それを見た狐たちは大喜びしたのでした。

 雪のつもった夜の森の中で繰り広げられる,日常ではふれ合うことのない人間と狐の交流の物語。宮澤賢治は舞台を凍った雪の上の森にしています。グリム童話のようにうっそうと樹が茂った森ではなく,月の光の差し込む明るく透明感あふれる森にしたのです。その森で人間の子どもと狐のコミュニケーションが描かれるファンタジー作品です。「堅雪かんこ,しみ雪しんこ」や「キック,キックトントン」「狐こんこん狐の子」などのリズムのいいことばが物語のなかにちりばめられ,歌物語のようになっていて,ことばとリズムによって,人間と狐との交流が引き出されている作品です。

 日本を代表する作家である宮澤賢治のこの作品は,賢治の自筆作品を研究された天沢退二郎氏が監修,ロジャー・パルバース氏によって英訳され,絵は司修氏が,音楽は林光氏が担当と,賢治を愛する人々によって作られています。また日本語の録音を担当したのは戸田恵子氏。ぜひ耳で聴いて楽しみたいラボ・ライブラリー作品です。

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