2019年8月の紹介
The Ocean-Going Orchestra
うみのがくたい

2019年8月の紹介
The Ocean-Going Orchestra
うみのがくたい
A certain ship traveled far and wide over the broad, wide ocean.
いっそうの船が,大海原をひろびろとかけめぐって航海をしていた。
The men who worked on this ship liked music and had an orchestra.
この船の乗組員はみんな音楽が好きで,がくたいができていた。
In the evenings, the ones who had finished work would line up on the deck and play.
夕方になると,手のあいた人たちは甲板にならんで合奏した。
The evening sun shone on the sea.
ゆうひが海に照りはえ,
The music floated out over the ocean.
音楽が海にただよう。
It was wonderful.
それはとてもすてきだった。
And then, after a while the crew noticed something odd.
ところが,そのうち船の人たちはちょっとおもしろいことに気がついた。
Whenever the music started, three whales would come up out of the waves.
音楽が始まるといつも,3頭のクジラが波間に姿をあらわすのだ。
クジラだけでなく多くの魚たちが船に寄ってきて乗組員の演奏を楽しみました。ある日,船は嵐にあい,修理をするあいだ魚たちは船の下にもぐって沈まないように助けてくれたのです。お礼に乗組員は演奏をしますが,魚たちも演奏したそうだったので,楽器をわけてあげました。すると乗組員が聞きほれるほどの魚たちの大合奏が始まったのでした。
大海原で繰り広げられる物語。作者の大塚勇三氏は,各国の物語を日本の子どもたちに紹介してきた翻訳家ですが,この作品はドビュッシーの「海」を聞きながら自身が書きあげたと言われています。丸木俊氏が担当されたイラストは,赤やピンクを基調に色彩豊かに,登場する乗組員や魚たちがていねいに描かれています。丸木氏はこの作品に2年間を費やしたとのことです。
そしてラボ・ライブラリーでは,間宮芳生氏が担当された音楽が全編に渡って流れ,穏やかな海,嵐,大合奏,そしてエンディングとそれぞれの場面をダイナミックに表現しています。嵐の場面は間宮氏も苦心されたそうで,さまざまな楽器が断片的に演奏するといったような工夫がなされています。このようにていねいに作られた音楽も,この物語を表現しているといえるでしょう。ぜひ物語,イラスト,音楽の揃ったこの作品をお楽しみください。

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