2021年1月の紹介
Mother Holle
ホッレおばさん

2021年1月の紹介
Mother Holle
ホッレおばさん
“Margarete, get a move on, finish sweeping this room and then go and get some water.
「マルガレェテ,へやをはいてしまったら,水をくんでおいで。
There's the geese to feed too.”
それから,ガチョウにえさをやるんだよ」
“Yes, Mother.”
「はい,おかあさん」
“And when that's done, embroider your sister's bodice and be sharp about it.
「それがすんだら,ねえさんの胴着のししゅうをいそがなくちゃ。
Harvest-home will soon be here.”
もう秋祭りがちかいんだから」
“Yes, Mother; very well.”
「はい,わかりました」
まま母にいわれ,働きづめのマルガレェテ。あるひ井戸に糸まきを落としてしまい,まま母に取ってくるようにいわれたマルガレェテは,糸まきをめがけてとびこみました。目が覚めると,そこは緑のまきば。パンをかまどから出してやったり,木をゆすってリンゴを落としてやったりしながら行き,やがてみつけた家にはひとりのおばあさんが住んでいました。手伝いをするかわりにマルガレェテは,その家に住むことに。おばあさんの寝床をこしらえるために羽根ふとんを念入りにふると,羽根がとびちりました。おばあさんは雪をふらせるといわれている,ホッレおばさんだったのです。
主人公が日常とは異なる世界に行くおはなしは,イギリスの『ジャックと豆の木』『ふしぎの国のアリス』や,日本の『おむすびころころ』にもみられます。主人公は訪れた先で,なんらかの試練を乗り越えたり,これまでの行いを認められて歓待されたりして,そしてまた元の世界に戻っていきます。昔話を聞く子どもたちは,主人公といっしょに旅をし,最後には「めでたしめでたし」と終わって,安心します。物語にはそのことが重要で,子どもがストーリーを知っていても何度もお話を聞きたがるのは,ドキドキわくわくの冒険などをしたあとに,ホッとして安心したいからなのです。
マルガレェテはホッレおばさんの家で,一生懸命に働きました。それでもある日きゅうにさびしくなって家に帰ることになると,おばあさんは働いた分としてマルガレェテの全身を金でつつんでくれたのでした。マルガレェテが家に戻ると,姉のローザも同じようにホッレおばさんの元に行きますが,なまけてばかりだったので,全身まっ黒なものにおおわれて帰ってきました。このおはなしにはいい娘と悪い娘の対比が描かれますが,教訓話というよりは,むしろマルガレェテの意志とその成長の物語と感じられます。みなさんはどうでしょうか。
グリム物語は,グリム兄弟が各地に出向いて女性から聞き取ったものを集めた童話集です。女性が糸つむぎなどの家事をしながら子どもに語ってきたものが,昔話として継承されてきたのです。この物語は1811年にカッセルという町で,薬屋の娘さんによって語られたものです。後にその娘さんは,グリム兄弟の弟のヴィルヘルムと結婚したそうです。

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