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今月のおはなしMonthly Labo Library Story

Johnny-Cake クルリンぼうず

2021年2月の紹介

Johnny-Cake

クルリンぼうず

Once upon a time there was an old man, and an old woman, and a little boy.
むかし,あるところに,おとっつあんとおっかさんと,ちっちゃい男の子がおったんだ。
One morning the old woman made a Johnny-cake, and put it in the oven to bake.
ある朝,おっかさんがとうもろこしのパンをひとつこねて,かまどで焼きはじめた。
“You watch the Johnny-cake while your father and I go out to work in the garden.”
「おとっつあんとあたしが裏の畑で仕事をしてるあいだ,このもろこしパンをおまえ,見といておくれ」。
So the old man and the old woman went out and began to hoe potatoes,
そういって,おとっつあんとおっかさんは出ていき,じゃがいも畑の手入れをやりだしたから,
and left the little boy to tend the oven.
男の子はひとりでかまどの番をしておった。
But he didn’t watch it all the time,
だけど,男の子はあんまりよくは見ていなかったんだ。
and all of a sudden he heard a noise, and he looked up
ふいに物音がしたので,ひょいと見ると,
and the oven door popped open, and out of the oven jumped Johnny-cake,
かまどの戸がいせいよくあいて,なかからポオンと,もろこしパンがとび出し,
and went rolling along end over end towards the open door of the house.
たまごがたてにころがるように,あいている戸口のほうへ,クルリン,クルリン。



 クルリンぼうずはころがっていき,おとっつあんもおっかさんも,井戸掘りも,溝掘りも,クマも,オオカミも追いかけようとするが,いずれも負かしていった。そして出会ったのはキツネ。クルリンぼうずのいうことがよく聞こえないと,「もうすこしこっちへ寄ってくれないか」と言います。キツネに近づいていったクルリンぼうずの運命はいかに。

 これは,イギリスのジョセフ・ジェイコブスが採話した『English Fairy Tales(イギリス昔話集)』のなかのお話です。ロシア民話には『おだんごぱん』,アメリカにはジンジャーブレッドが逃げだす『The Gingerbread』という似たお話があり,欧米各地に類似したお話があります。文化や風習が異なっても,人びとが語り継いできた物語には,同じようなおはなしがあるのですね。

 Johnny-Cakeはトウモロコシの粉(Cornmeal/コーンミル)でつくったパンケーキのようなものです。小麦粉の値段が高かった時代には,人びとはトウモロコシの粉でパンを作っていたそうです。貴重なパンに逃げられたらたいへんですから,おとっつあんとおっかさんは,必死にクルリンぼうずを追いかけたのでしょうね。

 黒井健氏のイラストには,イギリスの農村のゆったりとした風景の中を,クルリンぼうすが駆けていく様子が描かれています。「おいらかけっこで,おとっつあんもおっかさんも,ちっちゃい男の子も……」とリズムのいいセリフを繰り返しながら,周りの人びとを負かしてかけていくクルリンぼうず。そのリズミカルで勢いのある英語を,絵本とともにお楽しみください。

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