Helga was the loveliest Troll in three parishes.
ヘルガは，このあたりじゃ　だれよりもきりょうのよいトロールのむすめでした。
But, alas, having been orphaned as a Troll Child,
でも　かわいそうに，子どものころにみよりをなくしていたので
she was also the poorest.
まずしいことにかけても　だれにもまけないというわけでした。
So when Handsome Lars asked for her hand in marriage,
だから，ハンサムなラースが　ヘルガの手をとって　結婚をもうしこんだとき，
Helga said,
ヘルガは　こういったのです。
“But, Lars, I don't have a dowry.
「でもね　ラース，あたし　持参金がないのよ。
How can we marry without one?
持参金なしで　あたしたち，どうやって結婚できて？
It is the law.”
だって花よめが持参金をもっていくのは，トロールのきまりですもの」
“Don't worry,”
「気にすることはないさ」
said Lars, with moonstruck eyes.
ラースは，うわのそらでこたえます。
“I'll ask old Rich Sven.
「金持ちのスヴェンじいさんに　そうだんしてみよう」
He might have an idea.
なにか　ちえをかしてくれるはずさ」



　相談にいったラースにスヴェンじいさんは，自分の娘のインジと結婚することをすすめ，インジの持参金に目がくらんだラースはヘルガとの結婚を断ります。そしてヘルガは「自分で持参金くらいかせいでみせるわ」と出かけていきます。山と積まれた洗濯物を片づけ，若返りクリームをうり，知恵を使って持参金を稼いでいくヘルガ。するとインジが邪魔をしにやってきて，明日がインジの結婚式と知ることに。自分を待っていてくれなかったラースにヘルガはおこり，持参金を稼いだことを知って寄ってきたラースに，「あたしはね，あたしじしんを愛してほしいのよ，あたしの持参金じゃなくて」というのでした。そしてヘルガは王様にプロポーズされ，結婚します。

　副題にもあるように，「トロールの愛の物語」です。北欧の妖精であるトロールのむすめのヘルガですが，不思議な力を発揮し，持参金を稼いでいきます。結婚の条件として男がなんらかの財産を用意するという『なよたけのかぐやひめ』のような話はありますが，この作品は娘が自分で稼ぎます。

　自分の人生は自分の力で切り抜くというヘルガの姿に，子どもはひかれるのではないでしょうか。そして，必要なのは財産ではなく愛なのだと，ヘルガの活躍を通しこの絵本は語っています。

　作者のトミー・デ・パオラは多くの作品を描いたアメリカの絵本作家ですが，この作品では，コミカルにトロルの娘であるヘルガの活躍を描いています。淡いタッチで，流れるようなイラストで物語はすすんでいきますが，細かいところまで描かれていて，何度も見なおしたくなる絵本です。ヘルガの奮闘をずっと見守っていた人がいるのに，気づきましたか。