2022年1月の紹介
THE DANCE TIGER
おどりトラ

2022年1月の紹介
THE DANCE TIGER
おどりトラ
Over the mountain,
やまを こえ,
over seven more mountains,
ななつの やまを こえた,
and still deeper into the mountains,
そのまた やまおくに,
lived many many tigers.
たくさんの トラたちが すんでいました。
Among them was one tiger that loved to dance.
そのなかに,とても おどりの すきな トラが いっぴき いました。
He danced and danced whenever he could,
ひまさえ あれば おどりばかり おどっているので,
so that by and by, the other tigers called him the “Dance Tiger”.
みんなは そのトラを,「おどりトラ」とよぶようになりました。
狩りにいったときに失敗して,仲間に山から追い出されたおどりトラは,おどりの腕をみがき,ふしぎな力を身につけました。そして人々が困っているときに,おどりトラがおどってお祈りをすると状況がよくなるので,人々は神様のおつかいだと,おどりトラをあちこちに招きました。あるとき仲間がなつかしくなり,山へと帰っていったときのことです。柳の木のうえに木こりを見つけたトラたちは,トラばしごを作って木こりを捉えようとします。すると木こりは殺されるまえにと,大好きな笛を吹きました。そのときトラばしごのいちばん下にいたのは,あのおどりトラでしたからたいへんです。
この物語は韓国の昔話で,原題は『巫女(ムダン)トラ』といいます。国土の4分の3が山である韓国には古くからトラが数多く住んでいて,「トラの国」と呼ばれていました。そのためでしょうか,トラは韓国の昔話にいちばんよく登場する動物で,まじめでユーモラスで,親しみのあるタイプが多いそうです。この物語のおどりトラも,人々に愛されていましたし,音が聞こえてくるとおどることを止められず,トラばしごの一番下で踊り出してしまいます。荒々しく乱暴な動物だけれども,まじめでユーモラスなところは,トラが韓国昔話のなかで時代をこえて人々に愛されてきた理由ではないでしょうか。
絵本は,麻の繊維をすいて作った麻紙の上に描かれ,素朴さを表現しています。トラばしごの場面は,その長さを強調するために絵本を縦にして見られるように描かれています。おどりトラが人々によばれて祈りのためにおどる場面では,現在の韓国の行事の際にも見られるようなごちそうが描かれています。いまでも厄除けやお店の新規開店,映画のクランクインなど,繁栄を祈る儀式(コサ)の際には「豚の頭」をお供えするそうで,それも見ることができます。絵本で外国の文化をいろいろと発見するのは楽しいものです。俳優の橋爪功さんの日本語の語りとともに,お楽しみください。

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