TDとMA? なんのこっちや |
04月02日 (土) |
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毎日がものすごい回転力でやってくる。April come we willなのだ。
SK30いよいよ佳境にはいってきて,音楽どりがはじまった。
前にも書いたが、ラボ・ライブラリーの絵は空間的で、音楽は時間的だ。じつはテキストはそのどちらでもない。シンプルにみえるテキストほどその背後にはいろいろな情報がつまっている。
しかし、ときとして先にいそぎすぎたり、あともどりしたりする「ことば」を音楽はブレーキをかけたり、正しい方向をむかせたりすることができる。だからこそ音楽は「説明する」ものではない。
先週の火曜日に『ジョン。ギルビンのこつけいなできごと』の音楽録音が行なわれた。場所は昨年、ラボっ子たちが「ひとつしかない地球」を吹き込んだ麹町のSOUND INNという日テレの別館にあるスタジオだ。作曲は牟岐礼先生,演出はご存じラボOGの三輪えり花さんだ。
曲の細かいことはリリース前なので書けないが、バロック調のしぶい曲だ。ハープシコードが活躍する。ハープシコードはチェンバロ(イタリア語)ともいい、ピアノが成立する前の鍵盤楽器だ。大きさはグランドピアノをひとまわりくらい小さくした感じだが、ピアノとの決定的なちがいはピアは弦をハンマーでたたく打楽器て要素があるのに対し、ハープシコードは弦をひっかく「撥弦楽器」であることだ。ちなみにハープシコード弦には鳥の羽の根本のかたい部分がつかわれたそうな。
今回も打楽器には世界的パーカッショニストである高田みどりさんが参加。ティンパニ,スネアドラム,タンバリン,フレクサトーンなどと大活躍。バイオリンには篠崎さん。「西遊記」などでも弾いていただいている。
Westward Odysseyの歌の間奏のソロなどは彼だ。
録音は11時にスタートして19時くらいにおわったが、1日おいた31日にTDが行なわれた。TDは東京ディズニーランドのことではなく,楽器ごちとに異なるトラックに録音した演奏のバランスをとって2つのトラック,すなわちステレオにまとめる作業だ。トラックの数が16くらいから2つになるのでトラック・ダウンというわけ。
これが時間がかかる。ていねいに、楽器ひとひとつの音の大きさ、音色、音のかたさやわらかさ、艶、さらにはリバーブ=残響感、さらには楽器の位置(奥にいるのか手前か右か……)や音のひろがりなどを決定していく。したがって、またそうした作業をするなかで発見するこまかいノイズ。たとえばバイオリンの弓が演奏のあいまにかすかに服にふれた音のように本番のときにはきづかなかった音なども、このときに削除していく。また、演奏ミス(ほとんど本番のときに作曲家がきづくが)なども見つければ、別のテイクからその小説だけさしかえたりもする。したがって1曲に2時間くらいかかることはざらである。また、すべての曲は指定した長さで録音されているがその確認もする。まあ、じつに長時間の作業なのだが、これが音楽の命であり、ここでこだわらなければ意味がない。
それでも、この日のTDは牟岐先生の指示のもと、朝から準備して12時からはじめて夜9時には終わった。
このTDより時間がかかるのは、MAである。これはMulti Audioのことで映像と音楽をあわせる作業のことだ。ラボでもセリフに音楽を重ねるこの作業をかつてはダビングとよんでいたが、最近ではMAというようになった。
金曜日の正午からスタジオエコーでスタート。もちろん、音楽の出方のタイミング,大きさ,セリフとの位置関係などを決めるのは演出の三輪さんの仕事だ。もちろん、ぼくも意見をいうし、三輪さんからそう゛んされることもある。でも、なるべくぼくは演出家の完成を尊重するようにしている。
プロデューサーがいちいちこまかいことをいっていると、ほんとにNOといわなければならないときに説得力をなくすからだ。
英日版がほぼできたのが、夜9時、英語版が終わったのは午前2時30だった。音楽とナレイションのタイミング,大きさはじつに微妙な関係にある。ちょっとずれてもきもちわるいし、意味がかわってくる。
演出というとかっこよくきこえるが、じつにじつに根気と感性をすりへらす作業なのだ。映画の編集もそうだけど……。
「こなす」仕事、「やらされている」認識での仕事しかしていなければ、とてもこんなことはできない。執拗に編集をやりなおす映像監督にアシスタントの若者が「いいかんげんにしてください。何回やりなおせばいいんですか。ぼくは、もうがまんできません。やめます!」とぶちきれて、帰ってしまつたとき、その監督は「がまんできないって、あいつなにをがまんしてたんだ?」だといったそうだ。
仕事。仕事。仕事。でもそうわるい人生ではない。
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こんぺいとうさん (2005年05月03日 20時25分)
音楽の完成度を高める作業というのは、気が遠くなるほど時間と集中
力が要るんですね。バイオリンの篠原さんのフルネーム‥よかったら教
えてください。(「メッセージを送る」へ)西遊記の中でのソロの音色
を味わいながら聴きました。力強い、でも繊細なバイオリンの音から、
弾いているときの姿、表情が目に浮かびます。
ライブラリーの制作に携わる船長さんの感性‥すばらしいです。
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Re:Re:TDとMA? なんのこっちや
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SENCHOさん (2005年05月04日 14時04分)
こんぺいとうさん
> バイオリンの篠原さんのフルネーム‥
すいません
正しくは篠崎正嗣(しのざきまさつぐ)さんです。
http://www.linkclub.or.jp/~makoto/masatugu.html
『西遊記』のときは
作曲の中冨雅之氏ひきいる風雅頌のメンバーとして
参加していました。
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