おすすめ音楽CD 外伝 |
01月14日 (水) |
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琵琶のはなし
すみてぃーさんから,『耳なし芳一』の琵琶のはなしというリクエストがあったので,例によって思いつくまま書くのだ。
琵琶は東アジアでつかわれているリュート属の「撥弦楽器」なのら。ナス形の胴に4本か5本の弦。頸の上部の糸巻き部分は後ろに折れ曲がっているっす。右手で撥(バチ)ではじいて音をだす。左手で弦をおさえるのだが,おさえる場所は柱(ギターでいえばフレット)の上か柱と柱のあいだ(あたりまえか!)。
琵琶には日本の琵琶だけでも楽琵琶(がくびわ),盲僧琵琶,平家琵琶,薩摩琵琶,筑前琵琶といった種類があり,それぞれ持ち方や演奏のし方がすこしずつちがうのら。ちなみに芳一の平家琵琶は,楽琵琶をちょっと小型にした2尺(60.60センチ)くらいがふつう。でも,規格はなく,芳一はたぶん自分の身体サイスにあわせたオリジナルをつかつてたんじゃないかしら。弦は4本。柱は5柱。撥の両端はとがっていますです。プレイヤーはあぐらをかいて座り,琵琶を水平より少し上にあげてかまえ(薩摩琵琶などは45度以上に高くかまえるっす),語りの前奏や間奏として,またブレスのときに弾くのだ。語りと平行しては弾かないのだよ。
芳一は盲目の琵琶法師。平家は壇ノ浦で全滅,あれほどパワーのあった一族がほろぶとその恨みやたたりはたいへん恐ろしい。人びとは天変地異やはやり病など,
よくないことはだいたいその「たたり」のせいにした。「たたり」を恐れるのは日本の得意技で,菅原道真もただの官僚なのに,左遷して亡くなったら,そのたたりがこわくて神様にされてしまった。逆をいえば,それほど優秀な人だったのだろう。天皇でも歴代たたりのこわいのがいっぱいいて,死後に法皇とか上皇とかついている人はだいたいやばくて,ほとんど祟っている。どんな人がいるかわかるね。はっきりかくとこわいもん。徳川家康などはあれほどメチャクチャな日本の統一したのだから,よっぽとパワーがあったのだろう。東照神君として神にまつりあげられてはるか日光にドハデな神殿にいれられてしまった。家康以外の将軍は,上野の寛永寺と芝の増上寺に葬られた(ひとつの寺にするとその寺の権力が公式菩提寺として強くなりすぎるし,江戸の北と南の玄関をオカルディックにディフェンスしたんだろう)のにね。ただし,ラスト将軍の慶喜のお墓は東京の青山墓地にある。彼は人気があって,お花がたえない。
話をもどして,平家の亡霊をしずめたいというの一般ピープルも思ったのだ。はっきりいって「たたり」は迷信で,迷信はそれ自体が文化だけれど,迷信はもっと大きな文化をうみだすのら。さっきの天神さまや東照宮はその典型だし,そういった日本の慰霊文化というかシステムはいろいろ問題となっている靖国神社にまで受け継がれている。もっとも,靖国のように国家的な神社での鎮魂は明治以降。
芳一のいた江戸のころは,そうした鎮魂は盲目の琵琶法師のような非定住の弱者の仕事だった。彼らはさけすまれ,常に不安定な生活をしいられたのだが,音楽と語りという特殊な才能でなんとかバランスをとっていたのだ。こうした特殊技能もった中世の非定住民といえば……,そうハメルンの笛ふきだ。ヨーロッパの中世にもこうした笛ふきやバードといった特殊技能者がいた。人びとの団欒からは遠ざけられつつも,いざというときだけたのまれる。そして,ときには報酬もねぎられる。
『ハメルン』のさいごに「さあウィリーよ」ではじまる詩があるが,
あそこで,「ねずみはらった笛ふきたちの かなしみさえもふきはらうため やくそくだけは つねにはたそう」というくだりがある。ここで注目は「笛ふきたち」ということば。物語の笛ふきは一人しかでてこないが,ここではPipersという複数になっている。つまり,そういったかなしきさすらい人は,たくさんいたのだ。現在刊行されている日本語の絵本ではこの詩は別の訳になっている。ラボでは初版の訳のほうがぜんぜんいいのでそっちを採用。訳者の矢川さんがなぜ訳をかえたのだろう。それも彼女が異界へいってはしまったいまでは……。
また話をもどして……。うーむつかれた。芳一はじつは三角関係になやむ,それは寺と平家の亡霊たちとのいたばさみになるのだが,つづきはつかれたのでまたね。
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Re:おすすめ音楽CD 外伝(01月14日)
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スミティさん (2004年01月14日 23時35分)
さっそく、知恵袋からいっぱい紹介してくださってありがとうございま
す。
以前、テュータ研修で耳なし芳一をしたとき、下関赤間神宮、平家のお
墓にみんなで行きました。宮司さんに説明してもらって。平家の怨念は
今も続いていて、霊能力者はみんなお墓に怖くて近づけないそうです。
私の実家の近くには平家岳という山があります。
琵琶法師の話、なーるほどと思いました。「はなれゴゼおりん」などゴ
ゼ(漢字が出ない!)もそうなのでしょうね。
三角関係といえば別な連想も私の中にずっとあるのですが。そういえば
あの時、小泉凡さんの話も聞きました。ラフカディオハーン自身、霊的
なものに敏感だったようで見えていたのかもしれませんね。
怨霊といえば、ここ3年ぐらい「陰陽師」にこってます。漫画の方。原
作を越える漫画や映画はないのですが、高野さんの「陰陽師」は越えて
ます。研究の仕方が半端じゃない。日本古来の考え方、神道の祝詞に最
近興味が出てきたりしてます。
またよろしくお願いします。
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Re:おすすめ音楽CD 外伝(01月14日)
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Rinさん (2004年01月14日 23時54分)
琵琶のお話に釣られて出てきました~。
かれこれ20年位前になりますか、琵琶のライブを聞いたことがあるのです。
九州は福岡の瀬高という町で泊まったとあるユースホステルで、
同宿したホステラーさんに「明日、肥後琵琶を聞きに行こうよ」と誘われたの
です。しかもそのホステラーさん、「明日は聞けてもあさっては聞けないか
も・・・」などとおっしゃいまして(琵琶法師さんがご高齢のため―――考え
たらとっても失礼な話なんですが)それならと出かけて行ったことがあるので
す。
熊本の山鹿温泉の近くだったと思うのですが、
のんびりとした農村の中の一軒にお住まいの山鹿良之さんという方が法師さん
でした。片目はお見えにならず、もう片方もほとんど視力がないとのことでし
たが、語りをお聞きしている私たちの様子はお分かりになるようでした。
お礼は日本酒一升で、平家物語の敦盛の段や、一の谷の段などを聞かせていた
だきました。敦盛の段では涙を流しながら語っておられました。
その後再びご訪問する機会があって、ライブテープも録音させていただいたん
ですよ。
掲示板には写真が貼り付けられないので、私のHPの中に山鹿さんの写真をu
pしてみます。よろしければご覧下さい。
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