歌のCDのつくりかた その1 |
05月01日 (土) |
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ゴールデンウィーク。新宿は静かでけっこう。仕事するのにはよい環境。
さてさて,新版「ひとつしかない地球」は前回も書いたとおり、4月25日に音が完パケ(完全パッケージ)になり,いよいよ絵本と「パーティ活動の友」の編集おいこみでありんす。
こんな日記を書いてる余裕ははっきりいってないのだけれど、あんまり煮詰まって仕事して、また胃壁がけずられてもいやなので、ストレス解消がわりにちらちらと書いてみるのだ。
というわけで、今回は歌の収録をふりかえってみることにした。
この企画は去年の秋にスタートしたのだけれど、選曲にはかなり時間をかけた。編曲は牟岐氏ということは,けっこうはやくにきめていた。ふりかえれば『十五少年漂流記』以降,ラボ・ライブラリーのいわば「かくし共通テーマ」は,たくまずして未来への希望だったと思う。『十五少年漂流記』のテーマ曲,「海へ」の歌詞ができあがったのはまさにSeptember 11だった。ついでに書いてしまうけれど,「サザンクロス・ララパイ」はけっこうはやくできていたのだけれど,このテーマ曲はけつこうぎりぎりまであたためようと思っていた。物語のかたちができるまでは考えないうにしていたのだ。テキストは難航し,8月のはじめまで悶絶していた。とくにエピソード4をどこでどういうふうに終わらせるかで2週間かかり,ラストのボートが3枚の帆をあげて島をはなれ,やがてチェアマン島が小さくなり水平線のむこうに消えて,あとにのこつた金色の海を少年たちがだまってみているというくだりは,日本語も英語も10回書き換えた(日本語をかえたから英語もかえざるを得ない、つきあわされた鈴木小百合氏はいいめいわく)。
ナレイションは初挑戦の中村俊介という大抜てきだったが,これが大正解だった(変な色がついていないから,じつにすなおで紙ねんどのようにやわらかい)。これがちょうどお盆の8月15日だった。
それで,いよいよテーマ曲だということで,コンセプトをかためはじめた。そんな作業をするより先に,日本語で詞を書いてしまえば楽なのだけれど,ラボ・ライブラリーは英語がだいじ。英語の歌として自然に歌えなければなりませぬ。そこで,コンセプトを詞にならないように(そのリ図家にひっぱられてしまうから)箇条書きにして,鈴木小百合氏にメールした。その箇条書きは以下のような感じ(初公開だぜ)!
十五少年のメインテーマ
・海=新しい世界へのあこがれ 出会い 冒険 危険だけれどひきつけてやま
ないもの
・海=あらあらしさ やすらぎ 平和
・少年のたましい 困難をこえて成長
なんてことをずらずらとおくった。すると鈴木氏からたぶん2日ぐらいで英語の詞がやってきた。タイトルはAcross the Sea いいじゃないか。
このとき日本語タイトルは「海へ」しかないと決めた。そしてこの英語の詞を作曲の坂田氏におくった。坂田氏から「いい曲ににりそうと」との返事。
それから何日かの間,この詞のことは忘れておいた。曲ができなければかってに日本語の詞をイメージしてもすべってしまうからだ。
そして,9月11日,坂田氏から譜面がとどいた。頭は例の事件で混乱している。しかし曲は,まったくイメージどおりのメロディだった。日本語の詞はそれから1時間でできた。
話をもどそう。そして2003年期春,ギルカメシュの音楽録音の初日がアメリカのイラク空爆開始の日だった。間宮氏は「朝,指揮棒が見つからなくてね。うろたえちゃった」と冗談をいいながら,スタジオに入ってこられた。でも、目はちっとも笑っていなかった。場所は赤坂のコロムビア第1スタジオ。美空ひばりの「河の流れのように」などを収録した名スタジオだ(今度移転しちゃうけど)。休憩のとき,間宮氏は「ぼくはおこっています。そしてあきれています」とひとこと。氏の怒りはたんにアメリカに対してのことだけではない,有史以来,血と汗のめぐりつづける地球の岸辺にいまもたちつかさざるを得ない芸術家の悲しみと怒り,そしてそうした状況をいっこうに改善できない人類への深い慟哭。
その日の夜,マドリッドからFAXがとどいた。『ノアのはこぶね』の絵を担当する画家の堀越千秋さんからである。絵のとりあつかいとデザインについての細かい指示のあとのメモ。「ぼくはおこっています。パルバース兄貴もおこつているでしょう。でも、こんなときだから,子どもたちには明るい希望をしめさねばいけません」――これがこたえだった。『ノアのはこぶね』も『バベルの塔』も、「ギルガメシュ」も絶望の物語ではない,希望の物語なのだ。『ノアのはこぶね』のエンディングの歌はまさにそのひとつのあかしとなった。
そして,今新たに,歌という人間の最も明るくて力強い表現方法で子どもたちに激励していく作業に取り組むとき,『ノアのはこぶね』の続きとして牟岐氏にぜひ編曲をたのみたかったのだ。
つづく。
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Re:歌のCDのつくりかた その1 (05月01日)
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もんろおさん (2004年05月02日 01時08分)
復活草々にも関わらず、意欲的なお仕事ぶり、お気をつけあそばせ。
製作のこんな裏話が聞けるなんて、ラッキー!!(^_^)v
ますます新版が楽しみになってきました。
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Re:歌のCDのつくりかた その1 (05月01日)
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ハニーさん (2004年05月02日 18時31分)
せんちょうさんのコメントで、なぜ牟岐さんに編曲をお願いすることになった
のかわかりました。
牟岐さんもラボ側の期待にこたえるべくほぼ徹夜の毎日で今回とり組んで下さ
ったようですね。
せんちょうさんが入院中だった17日にたちあい、せんちょうさんのカメラで
写してきましたよ。ちゃんと撮れているといいのですが。
私がとった分はW次長にお渡ししてあります。
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