リズムとライムが楽しい ~河合祥一郎先生の講演会~ |
06月18日 (土) |
|
『リズムとライムがたのしい! 河合先生の謎解きシェークスピア』
この夏発刊されたラボ・ライブラリーには「ハムレット」と「夏の夜の夢」がおさめられています。
監修、演出を手がけた河合祥一郎先生の講演を、中国支部ラボ・テューターの研修会でお聞きしました。
(河合先生は東京大学教授。東京大学とケンブリッジ大学の両方から博士号を取得。坪内逍遥の次兄の玄孫。)
5月21日。待ちに待った河合先生の講演会。
「上演時間3時間の『ハムッレット』を1時間に、1時間の『夏の夜の夢』を20分にできた、ラボ・ライブラリーの謎解きを今日はします。」
という先生のお言葉にぐっと興味をひかれ、あっという間に過ぎた2時間でした。
前半は演劇についてのお話。
「シェークスピア・マジックで、想像力によって時間と場所をワ―プできる。ラボっ子にやってもらうためにはシェークスピアほどふさわしい物はない。」とのこと。
新刊への期待が一層増しました。
後半はシェークスピアのことばの響きがナーサリーライムと同じであるというお話。
☆ナーサリーライムの“ Jack and Jill ”の例
(休符)Jack and Jill リズム:弱強、弱強
Went up the hill, 弱強 弱強
To fetch a pail of water; 弱強 弱強 弱強
(休符)Jack fell down, 弱強 弱強
And broke his crown, 弱強 弱強
And Jill came tumbling after. 弱強 弱強 弱強
rhythm(韻律)は 弱強 のくり返し
文尾は、ジルとヒル、ダウンとクラウン、ウォタ―とアフターで rhyme(押韻)している
☆シェークスピアの台詞もリズムをキープ(弱強) ただし ライムはない。(blank verseという)
ラボ・ライブラリーの“ Romeo and Juliet ” のテキストを見てみました。
第3幕 トラック4、朝になり、ひばりの鳴き声が聞こえるという有名なくだりです。
Romeo: I hear the lark, my love. 弱強(×3回)3歩格
Juliet: That cry is not the lark. 弱強3歩格
It is the nightingale. 弱強3歩格
Those streaks of light are not the daylight either. 弱強(×5回)5歩格
弱強5歩格(iambic pentameter) シェークスピアの多くの台詞がこのリズムで書かれている。
だからナーサリーライムもシェークスピアも耳できいて、流れるようなリズムが心地良いのですね。
ただすべてが規則通りなのではないそうです。
“To be, or not to be, that is the question.”
弱強 弱強 弱強 強弱弱 強弱
弱で終わる女性行末。うたがいや不安な気持ちを表わす。
もし“question”でなく“point”という単語を使っていたら、強で言いきって不安な気持ちは表わせません。
シェークスピアが「ことばの魔術師」と言われる所以ですね。
リズムとライム、難しいお話なのに、先生はパワーポイントを効果的に使って分かりやすく解説してくださいました。
一方「夏の夜の夢」の台詞を先生が言ってみせてくださいましたが、全く英語の調子が違う感じがしました。
強弱4歩格だからテンポよく、ことば遊びをしている感じ。
文章の最後は2行ずつライムしているとのこと。
先生の日本語翻訳も「・・・王さまに。」「・・・いままさに。」と文尾の音を合わせているとは。
「おやじギャグ」と笑っておっしゃいましたが、先生の日本語のセンスにも驚かされました。
あまりにもピッタリくるので、むしろなぜ今まで誰もこのような翻訳を試みなかったのだろうと不思議に思ったほどです。
「夏の夜の夢」もライブラリーを聞くのが楽しみになりました。
ラボではテューター自身が新しいことを学べるところが大きな喜びです。
次はこの喜びをどのようにラボっ子達と分かち合うか「それが問題だ。」(こちらは“point”がふさわしいかも)
とにかく音の面白さを楽しみたい。
そして先生が言われた「人は一人では生きていない。目に見えない “spirit”が人を守ってくれている。」それをラボっ子達と感じたいと思います。
|
|
|