ラボ・パーティで育つ
「これからの社会で求められる力:社会力」
門脇 厚司
筑波大学名誉教授,
教育社会学
ラボ言語教育総合研究所前代表
ラボ・パーティで育つ
「これからの社会で求められる力:社会力」
門脇 厚司
筑波大学名誉教授,
教育社会学
ラボ言語教育総合研究所前代表
私がラボ・パーティを知ったのは,岩波新書の一冊として『子どもの社会力』という本を出版して半年くらい経ってからのことでした(2000年の夏)。ラボ教育センター発行の『おかあさんへのてがみ』に載せるインタビュー記事に協力したのが最初でした。その後,いろいろなかたちでかかわりをもってきましたが,ラボ・パーティがやっている教育を深く知るようになるにつれ,その内容が,子どもの人間形成にとっていかに大事なことであり,価値のあることかがわかってきました。
ラボ・テューターのもとに集まった乳幼児から大学生までのラボっ子(ラボ・パーティの会員)たちがともに,英語と日本語で収録されたラボ・ライブラリー(テキストとCD)を使って,テーマ活動という演劇をみんないっしょになってやる,ということを長くやり続けることで,英語や日本語に強くなるだけでなく,私が言い続けてきた「社会力(Social Competence)」という,これからの社会でもっとも必要とされる能力を,ごく自然に,しかもしっかりと身につけていることがわかってきたのです。
ラボ・パーティとおつき合いをするようになってほぼ15年,私は2冊めの岩波新書を書くように勧められ(『社会力を育てる』として刊行),その本を書くためにあることを調べることになりました。あることというのは,OECD(経済協力開発機構)が2000 年から始めた「学習到達度調査」(PISA)で調べようとした「学力」がどんな力なのかということです。調べてみると,OECDが調べようとした学力(「PISA型の学力」といわれています)は「コンピテンシー(Competency)」というもので,学校で教わった知識をただ暗記しているだけでなく,社会にでてから,他の人たちと協力しながら,困難な問題を解決するとか,理想を実現するとか,学んだ知識をさまざまなことに応用できる力のことであることがわかりました。地球の温暖化とか,食糧不足や資源不足,あるいは世界各地での紛争だとか,人類社会は,いま,解決困難な多くの問題をかかえています。そこで,OECDが考えた末にたどり着いたのが,これからの社会をささえていく子どもたちに必要な力はコンピテンシーで,これこそ,子どもたち一人ひとりが幸せになるために,また社会がこれからも永続的に発展していくためにも欠かせない力だということでした。
よく考えてみると,PISA型の学力とは,何のことはない,私が言ってきた「人が人とつながり社会をつくる力」としての社会力と同じことだったのです。そして,他の人といい関係をつくり仲良く活動することができる能力や,誰とでもコミュニケーションできる力,そして何事にも臆せず前向きに取りくむ態度などは,ラボっ子たちがラボ・パーティに参加し,テューターや他のラボっ子たちと活動を共にすることで培い育てていた能力でもあったのです。
わが子が社会で活躍し幸せな生涯を送るよう望む親御さんたちには,お子さんをラボ・パーティに参加させ,外国の人たちを含め,多くの人たちと交流する機会を増やすようお勧めします。