幼児教育・英語教室のラボ・パーティ
■■■ 運営事務局より ■■■
ひろば@LABOは,ラボ教育センターが展開する
「ラボ・パーティ」に関わる皆さんのコミュニティ・ネットワークです。
「ラボ・パーティ」については 公式サイト  をご覧ください。
ラボ公式HPTOP新着一覧そのほかランダム新規登録戻る 0357882
  
Home
Diary
Profile
BBS
Bookmarks
Schedule
メール
・メッセージを送る
・友達に教える
ページ一覧
Welcome!
[一覧] << 前の日記 | 次の日記 >>
弥生の夜の夢 Early Spring’s Dream 小さい頭を捨てて大きな心で 03月03日 (金)
三澤制作所のラボ・カレンダーをめくる
いきなり3月をとばして4月の絵の感想をアップしてしまい
混乱をよんでしまった。
あらためておわびする。
hyryh
で、仕事部屋であらためて3月の絵をみたら、
がーんとやられてしまった。
カレンダーの入選内規には
「基本は1物語1点だが、新刊に関しては
最大2点まで」というのがあるから、
「今年は『夏の夜の夢』は2点入るだろう」と予測していた。
そして早々2月に掲載されたので
次はまあ5月か6月の夏至のころがオシャレだべと
勝手に想像していた。
そうしたら、なんと連チャンである。
これは不意打ちだ。

夏の絵はまだ見ていないが、
(その月まではめくらない。
初見で、でもじっくり見て
感想を書いている)
多分「夏! 夏ーっ」という絵が来ているのだろう。
楽しみだ。

描いてくれたのは鄭裕里さん(小2/郡山市・山崎P)。
1年前に新刊の告知パンフで
蟹江杏さんの絵を見たとき、
ネット住民的にいうなら「キターッ!!」という
声を心で発したが
今回は「キタキタキター」だ。

これは前にも書いたのだが、
作品について触れる前に
誤解のないように前置きを少し。

裕里さんの所属する郡山市の山崎智子パーティは
「カレンダーの絵の活動」開始以来、
ほぼ毎年、入選、佳作入選を続けている。
ぼくは現役のときから
ひそかに「山崎流」とよんできた。
もうここまで続くとひとつの伝統、あるいは文化といっていい。
本来ならHall of Fame入りといいたいところだが
ラボっこは常に新しいのでそうはいかない。

山崎テューターご自身は
たしかに絵の素養がある方なのだが、
特別な絵画指導をパーティで
しているわけではない。

そのことは山崎テューターご自身が
「子どもたちの絵は、
あくまでライブラリーと深くむきあい
テーマ活動に心から取り組んだことが
もたらす結晶のひとつです。
ライブラリーの聴き込みと
テーマ活動ありきなのです」
と、きっぱりとぼくにむかって
おっしゃられたことがある。

しかし、それだけではない。
パーティ内で描画活動を
プログラムとして位置付けてきた
パーティ全体の組織体験の蓄積も
無視できないとぼくは思う。

歴代のラボっ子が
ラボ・カレンダーの絵の活動をテーマ活動の
しめくくりのひとつとして
毎年取り組んできたことが
確実にうけつがれているのだと思う。

ここの成長が全体の成長になり
全体の成長が新しい個々を育てる。
その循環。
これは教育論というより組織論である。

さあ絵に戻ろう。
一見すると、絵本の模写のように見える。
でもそうじゃない。
全然違う。
ラボ・ライブラリーの音声と
蟹江さんの絵にインスパイアされて。
いやそれらをすべて
裕里さんが耳と心と眼で
身体の中に取り込んでから、
それを心の底の方で咀嚼してから
ギュッと絞り出された新鮮な果汁だ。

ご存じのように杏さんの絵は
ドライポイントという版画の一種だ。
それに対して裕里さんはクレパスと水彩。
画材も技法も違うが、
おそらくたぶん、もしかするときっと、
お二方に共通するのは、
「ストーリィや物語のテーマを
頭でこねくり回すのではなく
大きな心で自由闊達に思い切り描いた」ことではないだろうか。
y6u76i
『夏の夜の夢』は、貴族・妖精・職人という
三種の存在がキイであり、
その間に唯一自由に介在するパックが
まさにtricksterとして機能する。

そして、
物語のほとんどが都市や宮殿ではなく
森のなかで展開するが、
それらを分析するのではなく、
物語や登場人物から感じる
「ふしぎさ」「あやしさ」「うつくしさ」「せつなさ」
「いとしさ」「もどかしさ」「きらめき」
なんかを心のままに表したのだろうと
勝手に妄想する。

ピカソは「この頭をどこかに飛ばせば
自由に描けるのだが」といい、
晩年には子どものいたずらがきに見える
素朴な線の作品を描いて
「やっとこういうふうにできるようになった。
70年かかった」ともいっている。

しかし自由とめちゃくちゃは異なる。
蟹江さんの絵にはプロとしての
揺るぎない造形の確かさがある。

そうしてみると裕里さんの絵は
中心にどんと描かれた鋳掛屋Stoutが
三頭身にデフオルメされ、
さらに広げた両手もかなり長い。
バランスがくずれているように感じるとしたら、
それはリアルな人体のフォルムにとらわれているからだ。

逆に考えて、
絵本と同じようなプロポーションで描かれていたら、
これほどの迫力は出なかった。
この大きな顔が作品として成り立たせているのだ。

おそらく裕里さんはStoutの顔から描いていったのだろう。
そしてどうしてもこの大きさが必要だったのだ。
だからクレパスの線に迷いがなく力強い。
顔に合わせて手も長くなったのは自然な成りゆき。
帽子を後から描きたしているのもおもしろい。

フォルムにとらわれて
コミックのような輪郭線を細かく描くと
(コミックを否定しているわけではない)
どうしても世界が区切られてしまい、
さらに「はみ出さない」意識がはたらいて
「ぬり絵」になってうごきが止まってしまいがちだが、
裕里さんの場合は、
ブラウン(に見える)のクレバスでのびのびと引かれ、
しかもタッチの強弱や太さの変化もあるので楽しい。
さらに、線にこだわらずに彩色していて力がある。
(結果してほとんどはみ出していないのもすごい)

で、ぼくはなによりStoutのBlue eyesの水色が好きだ。
さみしそうであり、遠くを見ているようでもある。
チークと大きな口の赤の濃淡差もおもしろい。
芝居掛かったセリフが聞こえてきそうだ。
顔色に微妙な変化が付いているのもニクい。
とにかく
これから1か月、毎朝、この顔にあいさつするのが楽しみだ。
まだまだ発見できることがありそうだから。

シャツのボーダーもただの縞ではなく、
クレバスと水彩で重ねている。
1本ずつ意思を持って描いているのだ。
それが掲載された機械性ではなく、
あるリズムを感じさせる。
最初から、この作品全体に音楽を感じていたが。
こうしたポーダーにもそれがあるんだと途中で気づいた。
イタリアンレッドっぽいズボンもかっこいい。

そして、この絵も描き込みの「しつこさ」がすばらしい。
これでもかというくらいに色位なものが描かれ。
さらにそのひとつひとつが、
小さな蝶でさえ、色変化がつけられているように、
すべてが可能な限り細部まで描き込まれている。
「やりすぎ」一歩手前まで描いたパトスがすごい。

でも、「まあいいや」で止めるより
やりすぎくらいでちょうどいい。
描き込みすぎて変になっても、
さらに描き込むくらいでちょうどいい。
音楽でも文学でも学問でも探検でも
「やりすぎ」過度、too muchが
栄光への道だとウイリアム・ブレイクという人も
いってるけんね
探検でやりすぎは命が危ないが
絵でやりすぎはどんどんGOだ。

裕里さんの溢れる物語果汁は濃厚だ。
パックもいたずらっぽい顔でのぞいているし、
ロバの頭を被せられたボトムスも
なかなか情けにい顔つきだ。

背景のの抑えめの水色にも変化がある。
そして三色すみれの描き込みは特にすごい。
みているぼくらもおかしくなるかも。
裕里さんもクラクラしたかもしれない。

この作品は一見、絵本の15ページを
もとにしたようではあるが、
最初に書いたように、
裕里さんのなかで醸成された物語が
ギュッと抽出されたものが
Stoutに集約されているのだと思う。
だから「との場面」といういい方はしにくいと思う。

このあたりはご本人にきいてみないとわからないが。
たぶん、これだけ描ける裕里さんは
「ないしょ」というだろうし、
そんな説明ができるならこんな絵は描かない。

はっきりしているのは、
裕里さんとこの物語の音声と杏さんの絵が
激しくであい、裕里さんが強烈にinputした結果なのだということ。
その過程にどんなパーティ活動、言語体験があったか!

イメージは言語の充実のなかから生まれる。
心のままに描くためには、
十分な言語のinputが必要なのだ。

テーマ活動でも、あまり聴き込みが進んでいない段階で
「発表会まで日にちがないから
今日はこの場面を考えよう」
なんて話し合いをすると、けっこう空疎だったりする。
しかしことばがメンバーのなかに入り
音楽CDで活動するようになると、
みんなが「それいい!」と感動するアイディアが続出するのも
イメージと言語の関係をよく表す経験則だ。

先日の「わかもの」でも、
そうして生まれただろう瞬間がいくつもあった。

最後にStoutは「鋳掛屋」Tinkerであるが、
tinkerは動詞では「いじくりまわす」という意味もある。
また鋳掛屋は定住した職人の前は漂白する旅の仕事師で
蔑称でもあった。

技術を持った漂泊者は笛吹きやバードだけではなかったのだ。
<< 前の日記 | 次の日記 >>
Copyright(C)2002 Labo Teaching Information Center.All rights reserved.