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THE SONG OF THE SALMON 03月16日 (木)
 火曜日、THE SONG OF THE SALMON『鮭、はるかな旅の詩』の日本語と英語の収録があった。日本語は劇団四季、というより日本演劇界の至宝、日下武史氏、そして英語はC・Wニコル氏自身である。
 物語、というより壮大な叙事詩というべきこの作品は、ニコル氏が数年にわたってあたためてきたものだ。そのベースには氏がカナダの川をカヌーで下っているときにふと思いついた歌が流れている。卵からかえり、天敵からのがれ、ひたすら海をめざす鮭たち、そしてまた故郷の川をさかのぼり子孫をのこし、死んでゆく鮭たち。その大いなる旅はまさに命の循環だ。しかもその循環は水のなかだけのことではない。鮭を食べる熊たちによって、森の成長にもかかわっているのだ。
 ニコル氏の歌は、Canadian First Nation すなわちカナダ先住民のあいだで大ヒットソングになったそうだ。この歌をニコル氏の友人であるバンクーバー在住の音楽家エイドリアン・ダンカン氏が編曲。ダンカン氏自身のバンド、THE SKY
STONEが演奏したCDがでている。歌のタイトルはSwim Away=どこまでも泳げ、
いうまでもなく鮭たちへの応援歌だ。
 この歌をモティーフにした物語のアイディアがある、という話をニコル氏からきいたのは2004年の12月のはじめごろだった。ニコル氏がそろそろラボのために書きたいといっている、という話がでてから半年くらいたっていたと思う。
 吹雪の舞う黒姫駅前は心ぼそくなるほど人かげがなく、タクシーで仁之倉のニコル氏のお宅にむかう道中はやたら緊張したものだ。そのとき、ぼくはニコル氏ときちんとむきあって仕事の話をするのははじめてだった。青き日に、なにかでごいっしょしたことはあったが、面識を得るという出会いではなかった。幸運にもこれまで、いろいろな作家や画家や作曲家や俳優と出会い、たくさんのすてきな仕事をさせていただいてきた。そのたびに感じるのは、すばらしい仕事をしている人ほど、おごらないし、たかぶらないし、ほこらないし、さげすまないし、くじけないということだ。そう信じているし、事実そうなので、この間は、どんな有名な人でも大御所に会うときも特別な緊張はおぼえたことはない(それだけずうずうしく鈍感に年を重ねただけかもしれぬ)。
 でも、この日、ニコル氏に会いにいくときに感じた緊張はなんだったのだろう。わすが10分ほどの車中で、ぼくの頭のなかにはいろいろなことがぐるぐる廻った。
思い出の桜吹雪のなかにたちつくしているような気がした。
 ニコル氏と谷川雁氏の出会いと交流、きびしいがラボの成長にはかかせなかった谷川氏とラボの別離、その結果としてのニコル氏とラボのあいだに生じた距離。
そしてニコル氏と谷川氏の別離。また、ニコル氏にはおよびつもつかないが、ぼく自身の谷川氏の詩や言説との出会い、そして氏との関係(告白するが氏との出会いがなければ、ぼくはいまここにいないだろう)。いまでこそ、ぼくのなかでは谷川氏の詩人、文筆家としての評価、行動者、組織者としての評価、さらにラボの経営者としての評価はそれなりに整理をつけているが、その整理の仕方のぜい弱さゆえの緊張だったやもしれぬ。
 しかし緊張の理由はもっと深いところにあった。というのは、じつに僭越しごくだが、ぼくは氏の作家としての想像力、エネルギー、モティベイションを肌で感じたかったのだ。どんなに有名な作家でも、過去にすばらしいラボ・ライブラリー作品をのこしていようとも、現在から未来へつづくラボ・ライブラリーのことばをつむぐ者には、それらのパワーがもとめられる。なんという傲慢。なんという無礼。でも、それがぼくの仕事だといいきかせた。
 それらの緊張は杞憂だった。あたたかいお部屋で5分も話すと、氏の強力な想像力とあふれる創作えのエネルギーのがオーラとなってとんできた。
なまいきにいえば"This guy is real."やつはほんものだぜ(これはあるアメリカの野球評論家がイチローがまだ活躍する前に一目みていったことば)。
 その日、ニコル氏と話がはずみ、ぜひラボ・ライブラリーのために書きおろしていただこうという空気がただよったとき、軽いきもちで「いま具体的にお書きになりたいテーマかモティーフはありますか」とうかがったとき、氏が「あるんです」と目を輝かせながら見せてくれたのが、この歌の歌詞だった。そして、その8か月後には、さいしょの物語原稿をいただくことになるのだ。
 もしかすると、THE SONG OF THE SALMONはニコル氏の後期の最高傑作になるかもしれない。いや、たぶんそうなるだろう。
 絵はカナダ先住民の画家スーザン・ポイントさんのすばらしい作品がまもなくとどく。データでおくられてきたサンプルをデザイナーにおくるとすぐに興奮した電話がかかってきた。音楽はバンクーバーにあるエイドリアンのスタジオで、ニコル氏も先住民のアーティストも参加してなかなかすごいものになりそうだ。カナダには3/27の夜のカナダ航空でむかう。4/1にもどってくる弾丸ツアー(そのあいだに事務所のひっこしが!)またきっとおもしろい報告ができるかも。ダルシンの台本も完成が近い。ラボつ子の録音がたのしみだ。きのうも一日、三輪さんと鈴木さんと打ち合わせ。夜中の2時にはバンクーバーにいるニコル氏の長女の美和子さんに電話。ついに、仕事以外のことができない毎日になった。 
 たいしたことはしていないが、仕事ばかりの人生かもしれない。でも、それよりよい人生って、よく考えるとそんなにたくさんはない。
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