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自分らしさをたいせつにすることは、他者のその人らしさを認めることなのだ! 03月01日 (火)
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2月27日の土曜日、東京大学駒場キャンパス内の
フレンチレストラン、ルヴェ・ソン・ヴェールで
ラボ西日本系OBOG諸氏といい時間を過ごした。
スペシャルゲストはボストンから帰国中のえっちゃんと、
ただいま大活躍中の『デフレの正体』の
藻谷浩介氏(日本総研主席研究員・元中国支部)。

おおいに盛り上がったが、
会話の内容をほとんど書くことができないのが残念だ。

元々この会は、後列中央の「ノーチャン」こと
中條拓伯工学博士(東京農工大教授・元関西支部)と
藻谷氏のとなりの「なし」こと小野眞司氏(大成建設でかなり自由に
町おこしや若者を組織したりしてる・元中国支部)とぼくで
飯でも食べて昔話をしようと吉祥寺や武蔵小金井で
のそのそやってた会が次第に人数が増えたものだ。
それが前列右端の「えっちゃん」こと
八代悦子さん(ボストン在住、ナンタケットバスケット制作の相伝者)と
藻谷氏がボストンに講演いった際に、
なぜかぼくに会いたいという話になり、
(というかえっちゃんは帰国するとこの会に出ていた)
それが最近、藻谷氏とタッグを組んで仕事を
している小野氏に伝わり、
小野氏がメール幹事として
ぼく以外超多忙な諸姉兄を調整してくれて
このつどいになったのだ。
まあ、この会の話はエンディングでまた。

さても本題。
三澤制作所のラボ・カレンダーをめくる。
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弥生。頬を切っていた風も
撫でるようにやわらかくなってきた。
南からは花の便りもはきこえそうだ。
願わくば今春の桜は、空までも薫るほどに満開し
諍いと血と汗と欺瞞と不公平の黒雲を浄化して欲しい。

作品はアーノルド・ローベルの絵本、
『ふたりはともだち』”Frog and Toad Are Friends”に題材をも求めたもの。
描いてくれたのは杉本怜奈さん(5歳/御殿場市・長谷川P)。

めくった瞬間、「ああ春が来るんだ!」と泣きそうになった。
このところ、おもしろいこともたくさんあるのだが、
辛くせつないことも、それはほとんど仕方のないことなのだけど
それ以上にたくさんあって、このイケイケおじさんであるぼくが
なかなか前に進むきもちを削がれていた。
そこに飛び込んできたこの絵から
「もう春だ! さあ前を向かって歩くんだ」
という声が聞こえてきた。
まるでがまくんをおこすかえるくんの声のようだ。

ご存じのようにローベルの原作は全体に抑制された色調だ。
しかし怜奈さんの色彩は、じつにあざやかだ。
もうこの時点で物語が自分のものになっているのだなあ。

かえるくんのグリーンのからだにプラウンのジャケット
がまくんのブラウンのボディにグリーンのバャケット
というコーディネートは原作の設定通りだが
まあ、ふたりのジャケットのプリントが、
なんともおしゃれでポツプじゃないか。
おじさんは好きだね。

バックに広く使っている薄いベージュも気持ちがいい。
これがけっこう、というよりかなり効果を出している。
肌色はなんといって安心感や温もりがあって
この物語にぴったりだ。
もしここが最上部にわずかに覗く空色だったら
(このわずかな空もいい! 小さく雲も描いてあり、
春気分をアップさせてくれる)
ふたりはもっと引っ込んでしまうし、
全体に涼しい絵になっていただろう。
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もちろん虹も鳥もお気に入りである。
描きながら楽しんでいるのが伝わってくる。

だけど、びっくりするのは、
全体におおらかにのびのびと描いているのに
色のにごりがないことはぴっくりぽんだ。
筆は8号か10号程度を1本かせいぜい2本を使用したと思うのだが
(本人に聞いてみたい)
毎回、筆をきちんと洗い、
さらに筆の柄の部分も拭いているのではないだろうか。
毎回のように書くことだが、怜奈さんの年齢で
カレンダーサイズの描画をすることはかなり力技だ。
多分、用紙は彼女の肩幅より大きいだろう。
その用紙を隙間なく埋めるだけでもたいへんなのに、
色が濁らないように筆にまで気を配っているのはすごい。

その集中力はどこからくるのだろう。
勝手な推測だが、怜奈さんは眼がいいのた。
それは単に視力がよいという意味ではなく、
よく見る力、持続して見る力がすばらしいということ。
さらに心の眼、見たものから感じとる力も強いのだろう。
そして、物語もよく聴いていると思う。

見る、聴く、触る(おそらく)といったinputの力が
これだけの集中力を支えていることは確かだろう。

この物語の原作絵本は1972年11月刊行だ。
以来、世界中で愛されているが、
ともすれば気持ち悪いといわれがちな
かえるとがまえるのコンビのふしぎで暖かい友情の
ゆる~いエピソードのそれぞれが
子どももおとなも捉えて離さない。
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原作者のアーノルド・ローベルは幼少時は病弱で
そのことが作品にも影響を与えているといわれる。
彼の作品に登場する生物は、
みな個性的でキャラクターが立っている。
そしてこの『ふたりはともだち』でもそうだが、
それぞれがときに心がすれちがったりしながらも、
自分らしさからぶれることがない。
だけど、深いところで互いを認め合っている。

自分らしさをたいせつにすることは、
とりもなおさず他者の個性を認めることだ。

冒頭に原作絵本は抑制された色彩だと書いたが、
がまくんとかえるくんのシリーズは
基本的にグリーンとブラウンで描かれている。
ローベルの原画はペン画であり、
印刷段階で指定した、しかも限られた色を乗せるという
方法でつくられた絵本なのだが、
それが独特なのだ雰囲気をつくりだしている。

ローベルは惜しくも54歳の若さで他界するが
作品は刊行以来40年以上を経た今も
世界じゅうで愛されている。

がまくんとかえるくんの関係は、
ときには漫才師のボケとツッコミのようでもあり、
幼い無邪気なおともだちどうしのようでもあり、
やんちゃな悪ガキどうしのようでもあり、
また、男女のようでもあり、
さらに、白秋から玄冬にむかう
人生をかみしめる老齢期の友情のようにも思える。
ローベルの絵本のひとつひとつのストーリーは
きわめて短いのに、こうした深みがあるからこそ
ほのぼの感とともに心に刻まれるものが
読後に生まれるのだろう。

それにしても、怜奈さんの描く
がまくんとかえるくんの
自分らしさに自信をもった表情のさわやかさはなんだろう。

怜奈さんは子どもである。
しかし個性ある世界にひとりだけの人格である。
子どもの敵はは「子どもあつかいすることばやおとな」だ。

でもやっぱり子どもだから、ピーター・パンの双子が
双子とはどういうものかよくわかっていないように
怜奈さんもまだ、人生とか人格なんていうtermの
存在すら知らないだろう。

だが、怜奈さんは、
今、見ているもの、感じているものが
自分にとってどれほどみずみずしく、
自分のたいせつな栄養になっていくかということを
しっかりわかっている。
さらに、どんなものが本物で
より栄養価が高いかもちゃんとわかって選びとる力がある。
だから、子どもに与える作品に関わるおとなは
緊張して命がけが求められる。
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最後にこの絵本の日本語訳を担当している三木卓氏について
少しだけふれておく。
三木卓は、H氏賞、芥川賞をはじめとする多数の受賞歴をもつ
詩人、小説家、翻訳家だが、
これぞラボ! という1編を紹介したい。
『星のカンタータ』1969年理論社➡︎角川文庫

この作品はいわゆるSF風の物語だが
ことばと表現、コミニュケーションという問題を
詩情豊かに語っているのだ。
しかもこの物語は『星雲の声』というタイトルで
「ことばの宇宙」に連載されたものだ。

といっても、この「ことばの宇宙」は、
今のような機関誌になる前の言語学の雑誌だけどね。
でも、いまの「ことばの宇宙」も
そんな高い志を持っているのだぞ!
がんばれ現役船長!

さて、冒頭の写真に戻る。

このなかでいちばん若いのは
じつは52歳藻谷浩介氏だ。
皆、ラボよりも長い人生を歩んできた。
藻谷氏いわく「みんなと恐れ多い先輩」とのこと。
彼らとは今やレジェンドとなりつつある
「ラボランド高梁」「高島海の学校」などでの同志だが、

有名であろうとなんだろうと、
みんなそれぞれに自分らしさをたいせつにして
ぶれずに社会にむきあっているのがうれしい。
いつも書くことだが、
なんどでも書くが、
教育の成果は社会に出てからわかる。
そして社会に出でると、
ここからが日々が勉強だとわかる。

藻谷氏によると、昔彼らの活動を見たぼくは、
「じつにばらばらで美しい」といったそうで、
それがすごいインパクトだったらしい。
恐ろしいことである。

でも、それはこの日の結論、
「競争をしか生まず、思いやりを失う画一化を否定し、
自分らしさ、その人らしさをたいせつに」と奇しくも一致する。

しかし、わしは偉そうな態度だな。
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