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ロシアの昔話3 『かぶ』その壱 12月03日 (金)
つがる しらかみ
 写真は五能線「リゾートしらかみ」車内。この路線は青森県川辺から秋田県東能代をむすび、鯵ヶ沢から東能代までは日本海沿いをひた走る。途中には十二湖、白神山地などの美しい自然がまっている。「リゾートしらかみ」は、青森から五能線を経由して秋田までいく快速で、「一度はのりたいローカル線」で常に上位にランクされる人気列車だ。写真の車両は青池編成(十二湖のひとつ青池のイメージ)。ほかにもクマゲラ(白神山地の鳥)、ぶな編成がある。青森をでて弘前を過ぎて五所川原。ここから鯵ヶ沢までの約15分、津軽三味線のライブがある。ゆれる車内にもかかわらず力強い演奏にびっくり。さらに右の女性の歌がすばらしかった。演奏が終わると日本海が見えてくる。なかなかの演出。やるなJR東日本。

 さて、ロシア昔話。まずは『かぶ』をめぐるあれこれ。
 このおはなしを「素がたり」デビューの題材にするラボっ子はとっても多い。短いからという弱気な理由でもよいではないか。リズムを味わって一人語りの快感を体験できるならグー。ひとつの物語を語りきれたということは、けっこうな自信になるよね。「詩とナーサリー・ライム」の監修と日本語を担当された百々祐利子先生も「2行で終わるライムもありますが、それでも一編です。最初から最後までぜんぶいえた! という達成感はたいせつです」とおっしゃっている。

 『かぶ』は確かにリズムが楽しい。それもそのはずで、もともと『かぶ』と『わらじをひろったきつね』は、ことばのお尻をそろえた語り(ロシア語の原典ではきれいな脚韻を踏んでいる)として伝承されていたからだ。これほど伝えやすいかたちはない。
 私見だが、自然を崇拝し、そのなかに精霊を見ていたロシアの人びとは、ことば(音声)にも言霊あるいは「もの」のようなふしぎな力を感じていたのだと思う。「ジャックのたてた家」がその昔、「しゃっくりどめ」のおまじない(息をとめて3回唱える!)だったように、『かぶ』もなにか呪術的な役割をもっていたのではないだろうか。
 それと、楽しいことばの積み重ねは言語遊戯として側面もあったはずだ。ことばの遊びは日本でも世界でも、しゃれ、地口、はやくちことば、回文、なぞなぞなどじつに多様。その宝庫のひとつはナーサリー・ライムだ。
 しかし、おやじギャグもふくめて、言語遊戯にはそれ自体に意味はないことが多い。ほとんどがナンセンスである。でも、それらは生きる力であり、ストレスをとりはらう秘薬だ。
 そのいい例がララバイだ。子育ては、惜しみなく体力と愛情をうばう美しくも凄まじい行為であるのは皆様よくご存じの通り。子もり歌には、子への無限の愛と背中あわせにストレス昇華のパワーがある。Hush-a-bye, baby, on the tree top はメロディもきれいだが、ラストは赤ちゃんがとんでもないことになっている。ナンセンスかつびっくりだ。
 前述の百々先生によると、日本の「眠らせ歌」にも「寝ないとネズミがとって食う」という歌詞とおなじくらいの数の「寝たならネズミがとって食う」というバリアントがあるという(余談だが根の国の住人でネズミという説も不気味)。その逆説、ナンセンスから子育てのパワーを得ているのだ。
 ロシアの人びともまた、きびしい冬にとじこめられるストレスをとりはらう力を
『かぶ』のような楽しいリズムとオチに求めたのだろう。

 第一回でちらっと紹介したウラジーミル・プロップという研究者は、『かぶ』やわらじをひろったきつね』を「累積昔話」という名称で分類した。その特徴は、ことばの積み重ねとともに、ある行為をなんども次第にエスカレートしていくかたちで繰り返し、突然に意外なかたちで終わる構造にあると述べている。その構造についてふれるとたいへんなので、興味のある方は『ロシア昔話』(プロップ著・斎藤君子訳・せりか書房。たぶん3900円!)を読みましょう。

 ライブラリーの『かぶ』の日本語は上記の斎藤君子先生(今やたいへんな昔話翻訳・研究の大御所!)。ロシア語原典のように脚韻をふむかたちは日本語では困難だが、原典のもつリズムのよさを見事に表してくださった。「じっちゃ」「ぱっちゃ」は最高! このことばで全体のリズム、とくにテンポがびしっとした。
 英語のテキストはサラ・アン・ニシエ(西江)さん。これまたすばらしいリズムだ。この人のこだわり方はハンパではないので、いずれ書かねぱならぬ。
 語りはドリーン・シモンズさん(大の相撲ファンで相撲部屋の二階に住んでいたことがある)。そして『国生み』以来、ひさしぶりにラボっ子が日本語音声吹き込みに参加した(歌ではその前に『西遊記』のテーマ曲がある)。とっても楽しい録音だったことを今でも鮮明に記憶している。
 
 ここまで来れば、『かぶ』が単純で短いおはなしなどと軽くかたずけらけれないのは明白になった。それどころか、まだまだ奥がある。日記に書く長さではないなあと、いやな予感がしてきた。
 とりあえず、今日はここまで。次回は英語のこと絵のこと、『大きなかぶ』とのちがい(タイトルも原題のままの『かぶ』"The Turnip"。「おおきなかぶ」でも"A BIg Turnip"でもない!)などについてふれたいと思う。
 
 さても津軽三味線といえば先代の高橋竹山先生。よく、渋谷の「ジァンジァン」に聴きにいった。
 光を失った音楽家の演奏はなぜ心をうつのだろう。レイ・チャールズ、ステーィビー・ワンダー、長谷川きよし,辻井伸行…。そして、芳一!
 
Re:ロシアの昔話3 『かぶ』その壱(12月03日)
けいこさんさん (2010年12月04日 19時33分)

プロップ、書棚を見たら、私のは初版でした♪3,800円。
物価が上がっていないのにびっくり!
久しぶりに読み返したくなりました。覚悟が必要ですが・・・
Re:Re:ロシアの昔話3 『かぶ』その壱(12月03日)
SENCHOさん (2010年12月04日 21時28分)

Kさん
お持ちとはさすがですね。『魔法昔話の起源』も所蔵されてそう。確かに分厚
い本ですが斎藤先生の日本語はとても明晰なのので読みやすいですね。
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