幼児教育・英語教室のラボ・パーティ
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ロシアの昔話5『かぶ』その参 12月11日 ()
わし ごしき しおやぐら
 写真は裏磐梯、五色沼。最も大きい毘沙門沼でえらそうな態度。
撮影は10月なかば。その下もおなじく五色沼のひとつ。
 五色沼は1888年7月の磐梯山噴火の際におこった
岩屑(がんせつ)なだれにより生じた湖沼群だ。
磐梯朝日国立公園の名所だが、今のような美しい景観
になるにはひとりの男の壮絶な物語があった。
 1914年、醸造業を営む遠藤現夢は、噴火で荒れ果てていた土地を、
命豊かな森に復活させようと決意、私財をなげうち1300ha以上
もの植林をなしとげた。磐梯高原緑化の父である。
 最下段は五色沼への玄関、磐越西線猪苗代駅近くにある
「しおやぐら」。ここのそばは絶品。もりそばを1枚たのんで、
小さな皿のそばを好きなだけおかわりする皿そばが名物だ。
 五色沼もこのそば屋も、22年ぶりの訪問である。
1988年秋、『プロメテウスの火』(ロシア昔話の次に刊行)
完成の打ち上げで、制作・広報のスタッフで2泊3日の旅行を
したが、1日めの昼食をとったのがここだ。
 この店は、当時東北支部の代表をされていた斎藤テューター(元)
のご紹介だった。そのころ斎藤テューターは、
ご主人が猪苗代湖の研究施設に勤務されている関係で
猪苗代でもパーティをひらかれていた。
 ふところの広いお人柄と、見識の高さ、そしてラボとラボっ子を
愛してやまないお心に、何度も蒙を啓かれたものだ。
後に猪苗代に美しいセカンドハウスを建てられ、
そこを事務局員の結婚パーティに解放されたこともあった。
この旅行の際も、「素通りしてはいけません。まず、しおやぐらで
そばをお食べなさい」とご指示をいただいた。
その後は、五色沼から天元台を経て白布温泉(ここもいい!)
に1泊、翌日は斎藤テューターが大内宿や塔のへつりなどを
案内してくださった。
 残念なことにその10年後くらいに、ご主人の体調が思わしくなくなり、斎藤テューターはラボから勇退された。
ぼくはそのことをかなり後に、北日本支局の責任者からきき、
しばらく無音であった自分を恥じた。
 この秋、しおやぐらの味はかわっておらず、同行者に当時の思い出
を紹介していると、店のご亭主とおかみさんが登場。いきさつを
話すと斎藤テューターをよくご記憶されていて感動した。
 
 さても、ようよう『かぶ』の続きである。
 前回は小野かおる先生がラボのために『かぶ』の絵を描きおろし
された話まで書いた。だから絵について。
カトリーヌさんが前回の感想で「かぶ」が赤いことを書きこまれて
いるが、この物語のかぶは、まさに小野先生が描く
オレンジがかった赤いものだ。ロシアのかぶはこの種が多い。
ごぞんじのビーツの仲間のようだ。
するどい子どもは表紙の絵だけで「あれっ?」と思う。それもよし。
 かぶの色だけでも、ロシアのふんいきを伝えているのだが、
ほんわかした絵のなかには小野先生の綿密な考証があふれている。
 遠くに描かれる小屋はイズバーとよばれる素朴な丸太小屋だ。
なんといってもロシアは木の文化。木は鈍な感じがあたたかい。
第一、厳寒時に外で金属にふれることはきわめて危険。
石の文化になるのはずいぶん後だ。
教会も「シフカ・プールカ」のお城も木造である。
 登場する3名の衣装も典型的なロシアを含めて
スラブ全体に見られる装飾がほどこされている。袖口や裾に注目。
じっちゃのわらじ(ラーポチ)も伝統的なかたち。
とくにじっちゃの衣装は、貧しい農民がよく身につけていたものだ。

 衣装に興味がある方には、イワン・ビリービンの絵本がお薦め。
ピリービンは19世紀末から20世紀にかけて活躍したロシアの
アーティストだ。画家という範疇にはおさまらない天才といえる。
絵はもちろん、イラスト、デザイン、さらにはストラビンスキーの
舞台美術も担当した。
 紹介したいのは『ロシア民話集・カエルの王女』(新読書社・
佐藤靖彦訳)だ。アファナーシエフが編纂した昔話が
ビリービンの大胆な構図、精密なフォルム、そしてなにより
息をのむ美しい色彩て描かれている。
衣装のパターンなどは文化資料としての価値があるとさえいわれる。
 人物を立体的に描きながら、わざと衣装は平面的に描き、それでも
違和感を感じさせない技法などは「ビリービン式」と呼ばれている。
この絵本は、残念ながら書店で見つけることは困難かも。
アマゾンのUsedで24000円などというふざけた値段でているから、
ぜひ図書館で見つけてほしい。
 といっていたら、日販のboople.comで3300円のくらいで
取り寄せ可能なようだ。
 話をもどして、この絵本には、表題の『カエルの王女』を
はじめ5編の昔話がおさめられている。
そのなかの『うるわしのワシリーサ』にはバーバ・ヤガーも登場。
えらいリアルでこわく、そして美しい。
ビリービンはほんとにお薦めだ。
 この絵本のなかの『イワン王子と火の鳥と灰色オオカミ』に
登場する火の鳥は、手塚治虫氏の火の鳥のデザインに大きな影響
をあたえていると思われる。
 誤解してほしくないのは、手塚氏がまねをしたといった
しょぼい批判をしているわけではない。むしろ、ビリーピン
まで勉強している氏のすごさに震える。
 というのは、じつはロシア昔話の制作が進んでいた
1987年、池袋で「ロシア・アニメ・フェスティバル」があり、
前衛的なアニメ作家の短編が数本上映された。
その解説を当時「ことば宇宙」に「ロシアへの招待」を連載されていた
早稲田大学の伊東一郎先生がなさるので、ぼくもほいほいと参加した。
上映が終わり、解説のために会場が明るくなったときだ。
だれもが知っているベレー帽の紳士を会場の下手すみに発見した。
手塚氏である。マンガの神様は。こんなところまで、情報をもとめて作品の糧にしているのかと思うと鳥肌がたった。

 ここで、もういちど『かぶ』の絵にもどる。ヘアスタイルのこと。
まごむすめは、かぶりものをせずに後ろで髪をひとつに編んでいる。
これは独身であることのしるしだと伊東先生からうかがった。
結婚すると髪をふたつにわけて、ココシーニクとよばれるかぶりもので
髪をかくす。ばっちゃがそうである。
 ロシア民謡の「赤いサラファン」に、「わたしの髪わけるには
まだはやい」という歌詞があるが、ようするに「お嫁にいくのはまだ
はやい」ということなのだ。
 衣装や髪の毛のことも含めて絵については「制作資料集」に詳しいのでそちらを参照してほしい。ただ、もってない。あるいは、
どこにしまったかわからへん、という方のために少しふれた。
なお、「制作資料集」はすべてのバックNo.があるはずだから、
ほしい人は支部にリクエストすれば購入できる。

 さても、「ラボ・ライブラリー制作資料集」は新刊が出るたびに
作成されているが、その第一号がこのロシアの昔話についてだ。
それまでのライブラリーに「資料集」はない。
もちろん「制作資料集」がなければテーマ活動ができない
なんてのは幻想だ。子どもたちは、大きな心と耳で物語を
自分のものにしていくからね。
 「制作資料集」の役割はふたつ。ひとつは制作の記録を残すこと、
もうひとつは新刊紹介時の講演や関連資料をまとめておくことだ。
いずれも後年のためである。
 その中身はご存じのように、記念講演要旨や連載の再録、
そして「制作ノート」だ。しかし、この「制作ノート」は、
はじめのうちはなにか「ネタばらし」あるいは「苦労話」
のような感じがして、とっても書くのがいやだった。
ただ、それをまとめることで次の作品へのたいせつな
ふりかえりになると自覚できてからはそうでもなくなった。
 また、より深く知りたいテューターのために、また、子どもか
ら質問されてたときにたくさんの資料にあたらなくても
「資料集」1冊でだいたいのことがわかるというのも
たいせつだなとも今は思う。
 
 「資料集」は「指導の手引き」や「アンチョコ」ではない。
物語のテーマにしても、キャラクターにしても、これが正解なんて
ものはもちろんない。ないからおもしろいのが物語ともいえる。
物語の背景や作者のことを調べたりするのは悪いことじゃないけど
自分の心とことばだけで物語に近づいていくのが
テーマ活動の本質であると信じたい。
 で、あるからこそ、ライブラリーを造る側としては逆に
徹底的に背景やテーマやキャラクターやことばひとつひとつに
こだわりまくらねばならない。
 そうすることで自然に子どもたちは物語の本質をより深く感じとる
ことができる。そんな関係にあるような気がする。
 ライブラリーにかぎらず、芝居でも小説でも映画でも、ていねいに
つくりこまれたテキストは、キャラクターひとつとっても
百人百色の多様なイメージをひきだす。しかし、その多様な
イメージをならべてみると、同じではないが、
まったく異なってもいないことに気づく。
 そう、パーティで物語のある場面について話し合うとき、
子どもたちが物語を聴いていればいるほどたくさんの意見がでる。
でも、それはけっこう調和していないだろうか。
よいテキストとはそうしたものだ。

 話がまたまた長くなって恐縮だが、
一昨年の冬から昨年春にかけて、茨城県の市立小学校で
ラボの『かぷ』をつかった英語のワークショップ授業(その学校の
教員がラボの助言で)を行なった。
 対象は5年生。週1時間(45分)で10週。
児童一人ひとりはライブラリーがないから
学校で聴くだげだが、市内の教員を公開授業も行ない
10週めには英日をかけて発表もした。
 そのなかで、おどろかされたのは子どもたちの物語を
感じ取る力だ。第1回の授業で、絵本もみせず、なんの説明もせず
まず「英語だけ」でCDを聴かせたが、子どもたちは
みごとに『おおきなかぶ』だといった。
 みんな、この物語は小2のときに国語で出会っているから、
当然そういうこたえになるが。すごいと思った。
 授業では「はい正解」とはいわず、「では、どんなお話か
日本語でも聴いてみましょう」と英日版を流した。
子どもたちのうれしいそうな顔。「わかった!」という喜び。
 続いて「ふしぎたなと思ったことば」をノートに書いて、
次に班で同じような意見をとめた。ここでは紹介しきれない
ほど新鮮な意見がいっぱいでた。
 多かったのは動物のセリフ、すなわち鳴き声が
おもしろいという感想だ。しかし、ぼくがもっともたまげた
(おどろ木には、びっクリという実がなり、たまゲタという
履物ができる)のは、ひとりの女の子の感想だ。
 それは「世界じゅうどこで聴いても、犬の鳴き声は
だいたいおなじようにきこえるはずなのに、
どうして英語と日本語ではこんなにちがうんだろう」というもの。
 もう、ぼくはその子の家におしかけて両親に
「おじょうさんをラボにください」といいたくなった。
 こうした子どもの気づきを発見できる教員がほしい。
 また、「じっちゃとばっちゃだけで、なぜ父さんやお母さん
がてでこないのか」ということで話し合う班もあった。
 もちろん、こたえはでない。でも、異なる意見がとびかう
ことが重要であることはまちがいない。

 ラボ・パーティのなかでもそうした話し合いはよくおきると思う。
たとえば(昔の日記に書いたが)、「かいだんこぞうは夜
どうなっているか」という問いには、きっと多様なこたえがある。
「夜にとけて大きくなってる」「ちいさくかたくなってる」
「ぎゃくに白くひかってる」などなど。どれも個性的だが、
調和している。
 さっきも書いたが。よいテキストとはそういうものだ。
 重要なのは、こたえが単一ではない問いが存在することを知り、
さらに「あっ、そういう考えもすてきだね」という他者の自分と
は異なる想いを認める力を学ぶということだ。
 それもまた、ラボ・パーティの存在理由だなと改めて思うのだ。

 猪苗代は野口英世博士の故郷でもある(記念館がある)。放蕩と
超人的研究力という矛盾のなかで生きた野口の物語は
ひとつのサスペンスともいえる。
 帝大出ではない野口は、ついに日本で居場所を見いだせず
ロックフェラー研究所のエースとして活躍する。
野口は細菌時代の最後に位置した、いわば職人的医学者だ。
彼を死にいたらしめた黄熱病の病原体はウイルス。
それは通常の顕微鏡では目視できない世界の住人だった。
野口の墓は、ニューヨーク市ブロンクスのウッドローンにある。
Re:ロシアの昔話5『かぶ』その参(12月11日)
けいこさんさん (2010年12月13日 22時46分)

ビリービンは本当にすばらしい!
「うるわしのワシリーサ」は世界中の絵本の中で一番好きな絵本です。

復刻された時に、慌てて買いました♪

Russian fairy taleという、小さな本がイギリスの出版社から出ていま
す。
Children’s Classics Everyman’s Library
「エルマーとりゅう」位の大きさの本です。

コンパクトなサイズなので、大判の絵本とは比ぶべきもありませんが、
11篇のビリービンのロシアの昔話が、載っています。

ワシリーサも、かえるの王女、イワン王子と~も載っています。

とりあえず見たい方は、お手軽かと思います。1,200円くらいです。
でも、大きいのがいいですねえ。
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