幼児教育・英語教室のラボ・パーティ
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PANICパニック!? 04月25日 (金)
 まもなく五月である。どうでもいいことだが,サツキの語源は
いろいろあって,サは接頭語だという説もあるし,サは田で
田月の変化したものという論もある。サが田だとすると
早乙女は田乙女,五月雨は田みだれで,まことにつごうがいいが……。
 早苗は田苗というわけだ。
 さても,新宿のラボ・センター16階から窓外をながめると
日々,緑のグラデーションが明度と彩度と濃度をあげて息苦しい。
しかし,目と鼻の先に59階の高層が3棟も建つらしいので
とってもゆううつだ。
 しかし,ほんとうにあたたかくなり,午後は思わず昼寝をしたくなる。
ドビッュッシーの『牧神の午後への前奏曲』がきこえてきそう。
 ここでいう牧神はいうまでもなく,ギリシア神話にでてくる。
牧神パン=Panだ。ラボ・ライブラリーでは『王さまの耳はロバの耳』
に登場する。
 上半身は男性,しかも残念なことに美少年ではなくオッサンで
下半身はヤギというミュータント。しかし,牧神であることから
ヒツジやヤギや牛,そして牧童の守り神であり,
ちゃんとおまつりもされている。
 このPanは,いたずらずきのこまったちゃんで,なまけものでもある。
昼間はおおむね,牧場のしげみのかけで昼寝をしており,
夕方などにのそのそおきてきて,美しい少女や少年が通りかかると,
へっへっへとおそいかかるとんでもない性癖をもっている。
しかも,彼が寝ているところに旅人などがあやまって踏み込んで
目ざめさせてしまうと(牧童たちはけしてじゃまをしない),
パンはとってもおこって,その夜,自分をじゃました人間に
恐ろしい悪夢をおくりこむ。
そうすると,安眠していたはずの人物は,まさにおおあわて。
これがPanicというわけだ。
 Panにはほかにもいろいろな物語があり,興味がつきない。
牧場と昼寝というイメージからだろうか,彼は笛の名手であり,
その音色には誘眠効果があるといわれる。
この笛にもアウロスあるいはシュリンクス,またパンフルートと
いろいろな呼称がある。
 アウロスはラボ・ラボライブラリーの佐野洋子氏の絵本で
パンがもっている笛である。これは楽器としては後述の
パンフルートよりも複雑で
オーボエとおなじダブルリードの木管楽器だ。
絵本のように共鳴管が二またにわかれているので,
主旋律と伴奏を同時にふくことができた。
 アウロスはギリシア時代はプロの演奏家がおり,
そのあやしい音色がいかがわしいと(事実いかがわしい商売
もしていた)禁止になったこともある。
 佐野洋子氏の絵はまさにこのアウロス。
佐野氏はクラフト紙にパステルと緑のカラーインクでこの絵を書き,
さらにその上から水だけつけた筆でなぞり「にじみ」をだしている。
いい絵だ。
 一方,よくしられるパンフルートは,葦笛であり,長さの異なる管
がニ列で配列されている。その透明な音色はファンが多い。
ルーマニアや南米にまで同種の楽器がひろまっている。
 この笛はシュリンクスともいわれるが,
これにはパンの悲しい物語がある。
 パンは水のニンフ,シュリンクスにまじめに恋心をいだき,
彼女をおいかけまわす。しかしシュリンクスはパンはキモイので
いやでしかたがない。
彼女もニンフだからすばしこいが,牧場をかけまわって
毎日クロスカントリーてきたえているパンにはかなわない。
第一,ニンフと神様じやニンフに勝ち目はない。
とうとう,川辺にシュリンクスはおいつめられてしまう。
もうだめと悟ったシュリンクスは必死にゼウスに祈る。
そしてパンがその腕をつかんでと思った瞬間,
パンが握っていたのは風にそよぐ葦の茎と葉だった。
 「ああ,そんなにいやだったのか……」とパンはへこみまくり,
その葦をあつめて笛をつくりシュリンクスとなづけたというわけ。
 そんなことがあり,パンはトラウマをしょいこみ,
あかるい牧場から森にでかけては,動物たち,森の精を相手に
コンサートをするようになった。
そんなときに出会ったのが,例のミダス王(Midas)。
 この王さまはっこうでっかい国の王でリッチなのだが,
金持ちはケチという鉄則にやけに従順で,欲深いことこのうえなし。
そんな王の国にある日,バッカス(ディオニュソス=酒とぶどうの神)
の一行がとおりかかる。
 ごぞんじのアポロンは音楽の神であり,予言の神でもあり,
ヘルメスととともに知性派代表だが,
バッカスは「ぶっとんだ神」で,いつも熱狂的信者をひきつれ,
音楽を流しながらライオンにひかせた車にのって
ワインをのみつつ巡行するというとんでもない神だ。
 やけになったあまりに「神は死んだ」とさけんだ哲学者のニーチェは,
アポロン的,ディオニュソス的とニ元的分類をしたが
 そういう意味では,ラボの活動はきわめてアポロン的な要素と
ファナティックかつ狂乱怒濤のディオニュソス的要素がみごとに同居
しているといえる。やはりラボえらい。
 そのバッカスの弟子のひとりにシレノスという神さまがいる。
なかなかえらい神だが,見た目はただのよっぱらいの老人だ。
この神が酔ってへたりこんでいるところを,
城の兵隊がひったててミダス王のもとに連れてきた。
 ミダス王はケチだが,どこかの国の政治家とちがって
教養はある人だったので,
一目で「この人はバッカス様の一番弟子のシレノス様」
とわかった。そこで,王は老人を丁重にもてなした。
 するとシレノスは帰りぎわに
「わしをきたない年よりとじゃけんにするのがふつうだが,
おまえはなかなかえらい。なんでものぞみをかなえてやる」
という。そこで欲張りのミダスは,
「さわるものなんでも金にして」とオバカなリクエスト。
「ほんとにいいんだな」といって去るシレノス。
 最初はイスやテーブルを金キラにしてよろこんでいたミダスだが
すぐに気づいた。パンをたべようとした瞬間にカチン。
ワインもたちまち金のかたまり。これでは飢え死にしてしまう。
 へこみまくっているミダスのところに,娘があらわれ
「お父さまどうなさったの」,よせばいいのに
「ああ娘よ」と肩に手をおくと……。
 反省しきりのミダスに
シレノスは森の湖てみそぎをしなさいと指示。
以後,その泉からは砂金がとれるようになり,
ミダスの国はさかえたそうな。
 その後,ミダスはもろに厭世的になり,城をでては森でぶらぶら。
そんななかで,パンど出会い,なかよくなった。
まあきらわれものどうしのキズのなめあい。
だから,ミダスは音楽勝負でパンの勝ちといったのだ。
 あとはご存じの通り。
 さてもパンのエピソードはかように広いのだが,
かのPeter PanのPanももちろん,このパンと無関係ではない。
 Peterは代表的な男の子の名であり,またApostlesのひとり
ペテロでもある。Panは,そのいたずらっぽさと,
PとPの頭韻(ex.Tom Tit Tot)のきもちよさなどからだろう。
だからピーターが吹くのは葦笛である。
 バリのセンスがひかる。というより,ギリシア神話,ギリシア悲劇は。ヨーロッパ知識人の基礎教養だったのである。
 つまりヘレニズムっつうことです。その一方でキリスト教,
すなわちヘブライイズムもまたヨーロッパ人文主義の根底にある。
しかし,そこでは補完できない世界を象徴するのがケルト……。
 いやきりがないので,ここまで。
なお,この日記は,別の原稿のために書きとめたものなので
あまりきにしないでください。コメントは自由ですが。
知識の切り売りしてるみたいでいやなのですが。
メモがわりには便利なので。
 
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