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『長ぐつをはいたネコ』の絵 11月22日 (月)
あおもりけん
 写真の巨大な犬は、青森県立美術館に展示されている「あおもり犬(けん)」。作者は弘前市出身の奈良美智(なら・よしとも1959-)氏。世界的評価の高いポップアーティストであるのだよ。この人はかつてニューヨークの地下鉄に落書きをして逮捕されてしまったという剛の者。
 撮影したは昨年の夏。退院してから1か月後にふらふらの身体ででかけた。美術誌でこの犬と出会い、どうしても会いに行きたくなったのだ(マジで見ずに死ねるかと思ってた)。ちょうど太宰の生誕100年特別展もやっていてお得。さらに、寺山修司と棟方志功のルームもある。すごいぞ青森! 
 さて先日。ある人が「『長ぐつをはいたネコ』の絵はどうしてあんな絵なのか」という。うーむ、そう素直に問われると当惑してしまうが無理もないか。
 絵の作者は中西夏之氏(1935-)。前衛芸術といういい方は好きでないが(芸術はいつも前衛。どんな古典もその時代のニューウェーブ。ミケランジェロもベート
ーベンも、当時の批評家がぶっ飛ぶような造形や和音をつくりだした)、20世紀の日本を代表し、現在も精力的に活動されている前衛アーティストだ。
 『長ぐつをはいたネコ』が収録されているSK13の絵は、『アリ・ババと40人の盗賊』以外は、当時のジャパンアートのトップ3といっていいゴージャスなメンバ
ーが描いている(ことわっておくが『アリ・ババ』のウラディーミル・タマリ氏もすごいのよ)。高松次郎、赤瀬川原平、中西夏之。ああ、なんという奇跡! そのころこの3氏は、それぞれの名前から「ハイ・レッド・センター」(高・赤・中)というアートグループを結成、日常への懐疑をモティーフに破壊力ある(『きてれつ』の破壊力もすごいね)活動を展開していた。
 各氏の作品の魅力について、ここでぐだぐた書くことはしないが、『長ぐつをはいたネコ『グリーシュ』『きてれつ六勇士』の絵本を目の前に置いてみてほしい。いずれも薄いペーパーバックだが、なんという迫力だろう。ゆるぎない個性。自由闊達にして造形のたしかさ(ここ大事)。そして大胆で繊細。こうした作品に幼いときから出会えることは本当に幸せだ。
 ちょっと生意気にいうと中西氏の作品は美術界では「思考性が高い」と評価されている。それは、氏の主たるテーマが氏と現実空間との緊張関係にあり、日々変化する氏の思考の流れが作品に鮮やかに反映しているからだ。

  しかし、例によってこれでは当初の疑問のこたえにはなっていないので、少し冷静に書いてみたい。たしかにこの絵は、わけがわらないかもしれない。でも、すぐに底が見えてしまうのもつまらなくないだろうか。
 絵はよく抽象、具象という分け方をされるが、そもそも紙に書いた表現というとではいっしょ。また、残念なことに抽象ということばは日本ではあまりプラスの意味でつかわれない。「きみの意見は抽象的なんだよ」なんていわれてしまう。抽象と具象を往復する力がほんとうはたいせつなのに。
 さらに…、「抽象画はわからん」というけれど、逆にアートを「わかった」「理解した」なんてことがあるのだろうか。絵でも音楽でも文学でも、出会う年齢や人生の時期によって受けとめ方は変化するし、日が変わっただけでも異なる。「わか
った」なんてとんでもなく傲慢だと思う。
 理解しようとすると絵は逃げていく。色や形が、カッコいい、すごい、きれい、気持ちわるいといった感じ方がだいじなんだと思う。
ピカソがいったことだが「山にいって、朝、鳥の声で目覚めた時、あの鳥はなんていってるんだろうとは考えないだろう。ああ、きもちよい。山に来てよかったと思うはずだ。絵もそれでいい」。わかるより感じる心をそだてたい。
蛇足だが、こどもがあの絵をいろいろ想像して、これは猫、とかいうのをとめる必要はないと思う。「ふーん、そう感じるの」とまず認めてあげればいいと思う。
 だが、先生これどうしてメチャクチャなのと訊かれて困ったときは、「これは絵を書いた人の心のなかなんだよきっと」というのもいいかな。
 ぼくも、あるときラボっ子に「みんなも、夢とか、悔しかったこととか、心のなかを描いてといわれたら、丸とか三角とかわかりやすいかたちでは描けないでしょう」といったことがある。すると、『ひとうちななつ』の絵本(野見山先生=この絵もすごい!)を手にした男の子が「じゃあ、この絵も心の風景画なんだね」とい
ったのを思い出す。
 繰り返すが、いわゆる抽象画は「わかりにくい」かもしれない。でも、めちゃくちゃではない。たしかな造形がそこにはある。美しいものは、確実にこどもの心をゆさぶる。まちがいない。
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