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ロシアの昔話2 『かぶ』から『エメリヤン』 11月29日 (月)
かむり
 写真はウェールズの首都カーディフ。撮影は2006年1月3日。『妖精のめうし』の英語収録で訪れたときのもの。またもタイトルと関係ない写真で始まったなと思うかも知れないが、じつはちゃんと「なぜロシアには昔話がいっぱいあるのか」という話とつながっているのだ。
 このどこの街角にもありそうな案内標識はバイリンガル表記になっている。上段が英語、下がWelsh(ウェールズ語)だ。侵略され、かつては禁じられたことばをウェールズの人びとは守り抜いた。戦争の最大不条理、最悪の犯罪性は多数の死をもたらすことにあるが、ことばをうばうことも許されざる行為だ。母語を剥奪されることは魂を無くすことであり、ことばで成り立つ文化も破壊される。もちろん物語も例外ではない。悲しいことに第2次大戦で日本もまた隣国でこの過ちを犯した(このことはロシア編の次くらいに予定しているアジア編でふれる)。

 さても前回、ロシアにおもしろい昔話がいっぱいある(アファナーシエフの編纂した昔話はおよそ600編で世界一)背景に「文字の発達が比較的遅かったことや、きびしい自然ときびしい政治」があると書いて寝てしまった。
 ロシア語はキリル文字(スラブ諸語で多く用いられている)で表されるが、この文字はギリシア文字をもとにつくられた。記録に見られる最も古いキリル文字は10世紀なかばくらいなので、けっこうあたらしい文字だ(漢字とかヒエログリフとかとんでもない昔だもんね)。
 ロシアでは多くの人びと(約8割)が農民であり教育の機会も少なかったことから長く素朴なくらしが続いた。さらに、ナポレオンも撃退した厳冬は文字伝播のスピードを鈍らせた。
 人は文字を得ることで記録を可能にし、ついには心のなかのことまで書き表すようになった。文学の誕生である。しかし、ご承知のように文字を知る以前から人間は物語をつくりだし、語りついでいた。それは生きる知恵であり、祈りであり、風であり光であった。ロシアにおいても、むしろ文字という記録の装置、記号がないがゆえに、記憶と想像力がきてたえられた可能性は高い。
 むろん文字文化を否定するものではない。ただ文字をもたない民族に、文字だらけのぼくたちにはない、みずみずしい詩情、しなやかな感性、乾いてたくましい抒情に満ちた詩や物語がたくさんあることは確かだ。アイヌしかり、ネイティヴ・アメリカンしかり。
 20年前、日本語・中国語版のK3Sの収録に北京に赴いたとき、北京放送テレビ劇団の皆さんにたいへんお世話になった。連続テレビ小説「おしん」は、中国でも大ヒットしたが、SK3の中国語音声吹き込みはこの「おしん」の吹き替えをした役者さんたちである。
 このとき、当時の北京放送日本語部部長、李順然氏とお話しする好機を得、いかに中国の人が物語好きかというエピソートをたっぷりうかがった。その最後に氏は「でも、ほんとうにおもしろいのは昔話です。それも文字をもたない少数民族の伝承話がいいですよ。漢民族の漢字文化はすごいですが、漢字は表意文字でもあるのでいろいろなが概念もひっぱってきます。文学にはそれも有効ですが、物語性の自由さや骨太の美しさでいったらかれらにはかないません。ラボもぜひそうした少数民族の昔話にトライしてみてください」とおっしゃった。
 このことばは、中華料理で満腹の胃と脳にもがっちりと埋め込まれ、イ族の『不死身の九人きょうだい』への第一歩となった。
 と、ここまで書いて、文字を使っている自分の矛盾にぼう然としつつ、話をロシアにもどす。
 
 文字のゆっくりとした発達に加え、前述した冬の苛烈な自然、そして皇帝による圧政は、人びとのくらしをきびしいものにした。冬も権力も常に人からなにもかもうばいとったのだ。しかし、どうして人間からはぎとることができないものがあった。それが「想像力」である。ロシアの人びとは、タフでラフな環境のなかで人間存在の最終兵器的である想像力を育んだのだ。
 今、皮相的には満ち足りた時代に生きるぼくたちは、この力を失う危機に貧している。物語は人間の想像力の美しい結晶体だ。そこから学ぶというその一点だけと
ってもラボの存在意義は明白だ。
※だからといって貧困と飢餓を推奨するものではない。世界の生産物の七割を三割の人口が消費する不公平は是正されねばならない(日本人もその三割の属する)。
 
 ロシアの昔話を考えるとき、もうひとつ無視できないのは信仰と宗教である。多くの地域がそうであったように、ロシアの人びとも厳しいながらも自分たちを生かしてくれる自然を崇拝し、森にも動物にも命を感じた。そして、多くの精霊や妖精を生み出し、対話したり祈ったりした。森の魔女バーバ・ヤガーもそのひとりだ。
 ところが、10世紀の終わりにキエフのウラジーミル1世によりグリーク・オーソドツクス(すなわち正教)への国教化、集団改宗が行なわれる。一神教がやってきたのだ。これについて書き出すとたいへんなので後日にまわすが、『森の魔女バーバ・ヤガー』で少女がイコン(聖像)に祈るのもその影響だ。
 小難しい話がづ着いたので、コネタをひとつふたつ。ロシア正教の特徴のひとつにキューポラ(タマネギの屋根)がある。「シフカ・プールカ」のお姫さまのいる城にもついている。てっぺんには十字架があるが、それをとってはまえばイスラムのモスクだ。じつはイスラムが後でこりゃいいデザインだと用いたのだ。
 その2。ロシア玩具にマトリョーシカがあるが、これは日本の入れ子コケシをまねしたんだと故金本源之助先生(先生からは「ことばの宇宙」用に貴重な資料をたくさんお借りした)からおききした。
 
 さすがに疲れたので、今日はここまでにするが、最後に冒頭のウェールズ。  
 ウェールズ語は英語とは似て非なるという言語だ。写真の看板の右のほうに城をしめすCsatleとCastellなどはまだわかりやすいほう。首都のCardiffはCaeardyddで、むりやりカタカナで書くとカエアディス(ddはthに近い発音らしい)。
 『妖精のめうし』はニコル氏の提案でこの物語の故郷であり、氏の故郷でもあるウェールズで行なわれた。英語の語りは、カーディフ出身でウェールズ・アクセントとクィーンズ・イングリッシュを使い分けるBBCの現役アナウンサーが担当している。故森繁久彌氏は、「セリフは歌え、歌は語れ」という名言をのこしたが、彼女の語りはまさにその通り。ぜひ英語のこみでも聴いてほしい。

 地球にとって、生命の多様性は貴重であり重要である。人間にとって言語の多様性もまた重要である。常に母語とすくなくとももうひとつの言語に触れること、そのことが豊かな精神を育む。これもまたラボの存在意義の大義だ。
 組織から距離をおくと、またいろいろなことがみえてくる。
Re:ロシアの昔話2 『かぶ』から『エメリヤン』(11月29日)
ラボやすながパーティさん (2010年11月30日 10時37分)

こんにちは!(^^)!
こうして、またsenchoさんの文が読めること、うれしく思っています~

今回は、ロシア!!
ちょうど1か月前、夫が2年半のロシア・ハバロフスクでの単身赴任を終
え帰国しました。なので、この数年、ロシアとはちょっと関係が深かっ
たので・・・うれしくなりました。
春にわたしたち母子3人もロシアに遊びに行ってきました・・・。

ロシアの若い世代のひとたちは、ロシアの昔話を知らない人も多くびっ
くりしました~もったいないなあと思いました。

続きを楽しみにしています~
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