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木の根っこをけとばすトム 気が早いけど夏がくる! 04月30日 ()
とむいち
とむに
 先日、春は静かに通り過ぎていくなどと書いたものだから、
勢いで「夏がくる!」となってしまった。
 でも、ぼやぼやしてるとんとに夏はすぐくる。
沖縄は、もう梅雨入りしてたけんね。
 写真は昨日、神奈川支部の川村パーティの31周年記念の会で。
『わんぱく大将トム・ソーヤ』より。
 今は母のことなどもあり、基本的には中野で寝起きしているが、
家は川崎にもあり、現役時代は私鉄とJRでラボセンに通っていた。
およそ1時間の通勤だが、
「せめて渋谷発22時の急行で帰りたいなあ」と
まじめに考えていたから恐ろしい。
 川村パーティとは国道246号線をはさんで隣町のご近所どおし、
また、「テューター通信」編集委員会などでごいっしょしたこともある。
そんなご縁でお声をかけていただいので、
のこのこでかけた。
 そうしたら、あろうことか、
第二部のお茶会で乾杯の発声をたのまれ、しどろもどろの
意味不明なスピーチをして恥をかいてしまった。
 
 それはともかく、『トム・ソーヤ』を
1話~4話通しという、ありそうであまりない企画と
冒頭では『フレデリック』の発表もあるというので
連休初日のお日様がふりそそぎBBQ人であふれる多摩川をこえて
いそいそとおでかけした。

 1話から4話までの一気発表だから、いろいろなトムが登場する。
小学生から高校生(たぶん)まで、どれも楽しい。
 等身大という点からだけいえば、小6か中1くらいの男子が
いちばんぴったしだと思う。
だけど、高校生でも、女子でも、それぞれのトムが感じられた。

もちろん、聴き込みや物語への突っ込みには、
個人差があり、それは声や身体の表現ではっきりとわかった。
(本当は恐ろしいテーマ活動なんちゃって)
でも、そんなことは本人たちがいちばんわかっていることで、
とにかくトムたちがいたことはまちがいない。
 
 それは、きっとラボっ子の本質のひとつである「少年性」が
小学生にも高校生にも、そして女子にも素直に表れるのが
この『トム・ソーヤ』という物語だということなんだなあ。
 あぶなっかしくて、もろくて、好奇心いっぱいで、
空気がいっぱいはいっていて、やさしくて、
大胆で、繊細で、そして男前。

 『白雪姫』が少女の物語であるように、
『トム』は少年の物語だ。
 原作はいうまでもなくトゥエイン(1835~1910)
の『トム・ソーヤの冒険』。
アメリカの片田舎の一時期を描いた、
ある意味きわめて狭い世界をとりあげたこの物語が
世界じゅうで支持されているのは、
まさに、「少年の本質」がミシシッピィに反射する光のように
あざやかに描かれているからにほかならぬ。
 
 トゥエインは、人気作家になってからも、いろいろお金や
家族のことで苦労がたえなかった人である。
 生まれはトムと同様にミズーリ州の
フロリダ(ホントだよ)という町である。
 彼は地方と都会をいったりきたりする人生を送る。
※いいとこのお嬢さんと結婚して、なかなかたいへんだったり、
年をとってからもうけ話にのってだまされて財産をへらし、
講演(口演)行脚をしてかせいだりもした。 

 『トム・ソーヤーの冒険』"The Adventures of Tom Sawyer",
は 1876年、41歳のときの作品。
 当初、トゥエインは「子どもむけ」というより、
自分が育った古きよき、地方の、それこそミツバチがブーンというような
おだやかな暮らしへのノスタルジー的小説として
おとなの読者をターゲットにして書こうとしていた。
 それを知り合いの編集者に見せたところ、
「これは子どもにむけて書いたほうがいい」という助言をうけ、
書き直すことにしたという。
そういえば、
 15年前に、当時は東京女子大学におられた亀井俊介先生と
お会いしたとき、
「そうです。たとえばポリーおばさんが、トムの髪が
あまりにぐしやぐしゃなので、いやがるトムをおさえつけて
櫛を入れる場面で、穝所の原稿では
『おばさんは地獄のようにとかすんだ』"comb to hell"としていたのを
hellは、子どもむけとしてはいかがなものかということで、
"comb to thunder"と書きかえているんですよ」
とおっしゃったのを思い出す。
※そのとき、財団理事の能登路雅子先生ら紹介していただいた。

 トムは自由そのもので、彼をとりまく
小市民的だが愛すべき、しかしけっこう自分本位かつ見栄っ張りな
おとなたちを睥睨(へいげい)している。
 トムのまわりのおとなたちは
つい「おれが、わたしが」と自分をShow-off、
すなわち見せびらかす。
 しかし、トムにもそうした部分がないわけではない。
そして、『帰ってきた海賊』でもわかるように、
馬鹿にしている、そしとびでたいとおもっている
そのおとなたちのいる場所に結局はもどってくる。
 Show-offは、アメリカ的なるもののひとつの本質といわれる。
トムは、アメリカというでっかい
木の枝の下からは飛びだすことはなく
その大木によりかかりつつ、
根っこを「ちぇっ、ちぇっ」とかいいながら
けっとばしているガキだともいえる。

 だからに自由さだけでいえば、ハックのほうがはるかに上だ。
『ハックルベリー・フィン』になると
ご存じのように、もうハックはぶっとびだして、
どこまでもぃってしまう。
 また、文学作品として見ると『ハックルベリー・フィン』は
トゥエインの作家としてのより高い熟成度が見られ、
児童文学の域をこえている。
 ノーベル文学賞をとったウィリアム・フォークナーは、
トゥエインを真のアメリカ最初の作家であり、
われわれはすべてトゥエインのsuccessors(相続人)であるといったし、
ヘミングウェイは、すべてのアメリカ文学は
『ハックルベリー・フィン』に由来するとさえいっている。
 
 もちろん、トムがあってこそハックが生まれたのであるが、
ラボっ子には、ぜひハックまで読み進んでほしいなあ。
※でも、ライブラリーのトムは、絶対原作より魅力的だぜ!
やはり、らくだ・こぶにおそるべし。
※この作品は1977年1月の発刊だが、その半年前の夏のある日、
ラボに入社したばかりのとき、
 ふらりと氏があらわれて、ぼくも含めて何人かいた事務局員に
「こんどのテープ(※注 懐かしい!)はトム・ソーヤ」と
ぽつりといって、みんなが「ほーっ」といったのを思い出す。
 そのころはライブラリー委員会なんてなく、事務局員ですら
新刊の内容や題はぎりぎりまでわからなかった

 ともあれ、アメリカを考えるうえできわめて重要な作家であるトゥエインに
幼いときから出会うことは、とってもたいせつなのだと改めて思った。

 トムは、今も、アメリカの正面玄関で、それこそ
自由の女神の肩にすわって足をぶらぶらさせて口笛をふいている。 
ふれで
 この写真は、やはり川村パーティの『フレデリック』。
じつは、この物語がおさめられたライブラリーSK31は、
ぼくがプロデュースした最後の作品である。
 そして、さらにこの『フレデリック』の発表を見るのははじめてである。
どきどき。
 しかし、いつも書くことだが、ライブラリーであろうが
小説であろうが、絵であろうが、音楽だろうが、
作品は、世に出た瞬間、読み手、聴き手、鑑賞者のものである。
 作り手が「そういう意図じゃない」と泣こうがわめこうが、
もう一人で歩いていく。
 ただ、ライブラリーがめぐまれているのが、
ラボっ子やテューターの皆さんが、いっしょうけんめい
愛して育ててくれることだ。
うるうる。

 今だから、書くが、ナレーションの市原悦子さんは、
演出の西村先生が「ぜひに」とこだわった人選である。
そこで、NHKエデュケーショナルを通してオファーをだしたが、
所属事務所からは「物語の内容も企画もよいが、
子どもの声とからむと、市原独自の語りの世界観が…」
というNGに近いものだった。
 では、他にという話になったが、西村先生は、
「いや、ほぐの演出イメージは彼女なんです」ときっぱり。
 うーん、とうなっていたら、どういうわけか
本人がやるといっているからOKだという返事がきた。

 その経緯も理由も不明だが、文句をいうすじあいはなしと
本番にのぞんだ。
 収録当日、市原さんは赤いスカートに白いブラウスという
かわいらしいコーデイネイトで登場。
 つきそいはマネージャーさんと事務所の社長さんも!
ウーム、ハードルあがるなあ。
 しというのも杞憂で、じつに収録は順調にすすんだ。
もちろん、例によって無茶な注文や、英語とニュアンスを
あわせるための、めんどうな別パターン撮りなどもお願いしたが、
にこにこと全部つきあってくださった。

 最後のOKがでて、おつかれさまの声が響き、
ブースから市原さんがでてきてごあいさつ。
お茶をさしあげると、おいしそうに飲まれてこうおっしゃった。
「先日、江守徹さんがおっしゃってた。
とっても、おもしろくてすてきだけど、
たいへんなお仕事って、意味がわかったわ」

 家政婦ならぬ船長は見た!
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