幼児教育・英語教室のラボ・パーティ
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まれびときたりて幸を 来年こそおだやかな年に  11月30日 (金)
してはて
とりあえず更新中
三澤製作所のラボ・カレンダーをめくる。
とうとう師走になった。
毎月、好き勝手なコメントを書いてきて汗顔のいたりだ。
でも、もともとこのカレンダーの活動は、
ラボっ子の描画、絵を書くという表現行動を激励しようぜ! 
ということではじまった。
だから「ぼくはなんでこの絵が好きか」を書くことで、
ちょっとでもラボっ子への励ましになったり、
子どもの絵にあまりなにも感じない人に
「へぇーっ」といって少しでもあたたかい関心
をもってもらえたらと思って、
あえてへんなコメントを「読みたい人だけ読めや」
というえらそうな態度で綴ることにしたのだ。

前置きが長くなったが、12月は「やっぱり」
と思ったが予想とおりThe March of Jizo『かさじぞう』である。
作者は栗原百花さん(小6・松山市/標葉P)。
とってもとっても有名なむかしばなしだが、
それゆえにバリアント(物語の変化形)がいっぱいある。
地蔵の数も六地蔵(六道衆生の救済)が多いが、五体や七体のもある。
さらに御礼に来る地蔵もふつうは全員で豪華にやってくるが、
代表一体だけというのもあるし、
食べ物やお宝のかわりにおじいさんとおばあさんを
極楽に連れていってしまうという
ちがうだろう! というエンディングもある。

さても絵の話。
まずは夜の青がすてきだ! 原作の本多豊國先生の青もすばらしいが、
百花さんにも独特の透明感がある。
青は日本人にとってはとってもたいせつな色だ。
昔からその種類も多いしね。青、藍、群青、浅葱、浅縹(あさはなだ)、
瓶覗き(かめのぞき・手ぬぐいにつかわれる。
「瓶覗きの手ぬぐいそれっときって」などと
樋口一葉の「われから」にある)など、
これらはほんの一部だが、
日本人は青の微細なちがいにそれぞれ名称をあたえて
ちゃんと生活のなかで区別していたのだ。すごいなあ。

もちろん、地蔵のフォルムや全体の色味などは
原作絵本を参考にはしているが
模写ではなく百花さんの作品になっている。
六体の地蔵の御礼まいりはじつにいいかんじだが、
全体パランスと奥行き感がすんばらしい。
これは単に「真似して描いた」のではできることではない。
とにかく、いい意味でのつっこみどころが
満載の作品で楽しくてしかたない。
以下に続けてみる。

たくまずして背景の青と地面の面積の比率が
1対ルート2に近いのもすごい。
黄金比というやつである。
地蔵の配置と大きさもよく、
舞台でいえば「隙間の無い演出」といったところだ。
かつての劇団スコット(旧早稲田小劇場)の
鈴木忠志氏の演出のようだといったら
OBの山本俊介びっくりかな。

地蔵それぞれのキャラが想像できるのもうれしいし。
最後尾の地蔵がけっこう強い印象をつくっている。
もちろん「もっこふんどし」の地蔵も
さすがのセンターを張るだけのことはある。
そしてなにより、この絵が雪の夜を描いているのにあたたかい。
それは百花さんの心の温度そのままなのだろう。
シェアする精神、わかちあう心が
きっとたっぷりあるお子さんなのだと断定する。
そしてぜひ尋ねたいのは「雪」の体験だ。
松山といえば愛媛の大都市。
温暖な土地だ。
ぼくも昨年、道後温泉を堪能し、
その際には標葉テューターにとてもお世話になった。

百花さんは雪の体験があるのだろうか。
とにかくふしぎな雪のリアリティも感じるのだ。
ぐうぜんとは思えない。
想像だけでこの質感がでているのならそれまたすごいことだ。

地蔵は本来は末法の世(まさに今)、
56億7000万年後にあらわれる弥勒が登場するまでの間、
前に人びとを救う菩薩である。
この物語に悪人が登場しないことも含めて仏教的な要素はある。

だが、この物語の地蔵は、前述の地蔵菩薩の進行譚というより
「なまはげ」などのように
年の暮れなどに遠くから幸をとどける
折口信夫がいうところの「まれびと」(客人・稀人)なのだと思う。

世界も日本も、残念ながら血と涙を忘れることはできなかった。
その年もまもなく終る。
地蔵様、来年こそおだやかな凪を世界に。
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