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ラボ・カレンダー3月 色の音、「ヒツジになるなヤギになれ」 03月01日 (木)
三澤制作書のラボ・カレンダー3月をめくる
The Sounds of Colors
Be a GOAT!
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弥生である。
日本の3月の空は「霞みか雲か」で
すっきりとは晴れない日が多い。
しかし、今月の絵の空はなんとも清々しい。
快晴ではなく雲がたなびいてはいるが、
全体にスカッと抜けた色合いがかっこいい。

描いてくれたのは
繁田真言くん(6歳/兵庫県・高島良子P)。
2015年に96歳で亡くなった
アメリカの絵本作家
Marcia Brownの
The Three Billy Goats Gruff
『三びきのやぎのがらがらどん』に
題材を求めて制作されたラボ・ライブラリーに
inspireされた作品。

この物語もラボ・カレンダーの題材に
とりあげるラボっ子は多く。
毎年かなりの点数が送られてくる。
したがって過去には名作、傑作が
綺羅、星の如く居並ぶので
それを超える作品となると
なかなかたいへんである。
もちろん、画風や画材の違い
年齢差などがあるから比較は困難だが
「すげえ」「渋い」「カッケー」
「負けたわ」「鳥肌」なんていう
感性直撃の絵が数多くでるのが
この『三びきのやぎのがらがらどん』だ。
それはやはり原作絵本、
そしてラボ・ライブラリーの力よるもので
題材のパワーが子どもたちの絵力を
引き出しているのだろう。

原作の話は後にして
繁田くんの絵を見ていこう。
ぼくが最も感じたのは、
個性、のびやかさ、とらわれのなさ、
楽しさといったところが
とびぬけてすばらしいということ。

フォルムも色もdetailも
絵本から距離をおいている。
構図や登場するキャラクーは
もちろん参考にしているが、
「画本の写し」ではなく、
十分な聴き込みによって
inputされた物語の
イメージ(ことば 色 音楽)が
彼の中で反芻され咀嚼され、
真言くん自信の色と形になって
それも楽しいリズムを伴って
溢れだしたのだと思う。

後で触れるが、
瀬田貞二先生は、
『三びきのやぎのがらがらどん』の
色には音楽とことばがあると
いわれているが、
真言くんの絵は、
そのブラウンの音楽とことばを
受けとって、
本歌取りのごとく
originalityに満ちた音楽とことばを
生みだした。

クリエイターにとって、
作品に感動してもらえるのは
とてもよろこばしいことだ。
しかし、さらにそこから
新しいものが生まれることは
最大の幸福である。
ブラウンもっと微笑んでいるだろう。

もうすこし細かく見よう。
フォルムはじつにのびやかで自由だ。
トロルもヤギも橋も山も
真言くんの闊達さがきもちがきもちよい。

しかし全体もちゃんと見ていて、
バランスが美しい。
空の面積と山の面積、
トロールの位置とヤギの位置などは
比率を計算してみたくなる関係だ。
また、中央に鳥、橋の下にも生き物を
描き込んでいるのは、
先ほどいったようにイメージがあふれた結果だが、
それがまたふしぎな印象を作ったている。

輪郭を色鉛筆(たぶん)でとっているが、
その線に迷いが無いのと、
彩色した色と同系色の線なので、
世界が分断された感や「ぬりえ感」がない。
要するに自由闊達なんだけど、
揺るぎないイメージにる独自の造型がある。
そして、橋の湾曲した感じと
緑のヤギの少し前のめり(これ大事)の姿勢、
トロルのひろげた手からは、
速度感、躍動感が伝わってくる。
これもすごいぞ。
mim
それからこれも見逃せないのは
トロルにもヤギたちにも
皆表情があること。
物語がvividに響いてくるのだ。

そして色は、まさに真言くんの
独自ののメロディとリズムを奏でている。
まず、橋がtwo-toneのだんだらなのがおしゃれで
これが強烈なimpactだ。
北欧の岩山が緑なの? とか
野暮ををいう奴は前に出なさい。
ヤギの色がなんで全部ちがうの? とか
センスのないことをいう輩は
はだしで逃げなさい。

北欧の民話とか自然とかは
真言くんには関係なくて、
小さな頭ではなくでっかいハートで
物語をたっぷり感じているから
これだけ独自の世界が描けるんだろう。
だからこそ、
彼がこのお話をどんな聴き方をしたのか
また、どんな活動をしたのか知りたいものだ。

色彩は見ての通り個性的だが
色に濁りがなく、
また同系色の濃淡の使い分けが巧みだ。
白い雲もひぼんで、
普通だったら「ポッカリ浮かんだ」ように
固まりの雲を描くのだが、
空の上から大胆に使ったwhiteは
ことばを失ってしまった。

なんどもいうが
自由でのびやかだが
全体にも細部にも心が届いている。
そして何より楽しんでいるが、
この描き込みから想像するに
相当疲れたのではないだろうか。

ヒツジは群れたがるが
ヤギは群れないし付和雷同しない。
いたずら者のパンもヤギの身体だ。
真言くん。
Be A Goat!

The Three Billy Goats Gruff
はノルウェーの民話作家であり、
民俗学者、動物学者でもある
アスビョルンセン、Peter Christen Asbjørnsen
と友人のヨルゲン・モーJørgen Engebretsen Mo
が編んだ『ノルウェー民話集』1841-
に収録された民話をもとに
マーシォ・ブラウンが絵本にしたものだ。
ノルウェー語の原題は
De tre bukkene Bruse
でBruseがヤギの名前だが、
これは「うなり声」「咆哮」の意であり、
それをブラウンは英語で
「しわがれ声」「どら声」の意のGruffとした。
それを瀬田先生は「がらがらどん」と邦訳された。
「どん」は殿が変化したもので
「かにどん」とか「西郷どん」、
「おたけどん」のように愛称、尊称、
ときしに蔑称にも使われる。
なお性別は問わない。

ラボ・ライブリー
『三びきのやぎのがらがらどん』の
英語音声を担当されているのは
Elizabeth Handoverさんという
英国人女性だ。
当時は広尾のインターナショナルスクールで
教員をされていた。
英語でも日本語でも職業由来の姓は多いが、
Handoverさんの由来はわからなかった。
いまは亡き「鉄の女」Thatcherさんは
「屋根葺き職人」である。

Handoverさんの
語りがすばらしいのは
ライブリーを聴いた方には
説明の必要はない。
感情を抑制し、かといって冷たくならず
昔話の温かみをたいせつにした語りは
何回でも聴ける。
そしてきもちよいリズムがありながら、
単語ひとつひとつの発音、
とくに母音が明るく
きれいに出るように
心がけられている。
いわゆる曖昧母音を
明るくきれいにというのは
なかなかできることではない。
でもHandoverさんによると
女王陛下の英語なら当然とのことだそうだ。
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最後に瀬田貞二先生は、
「ブラウンの色の使い方は
そこからメロディがきこえるような
音楽的であり、かつ象徴的である。
主に空に使われているコバルトは勇気、
トロルや山などに用いられている
ブラウンは脅威、
そしてイエローは平和と安らを歌っている。
読み手は茶色でドキドキし、
コバルトで激励され、
ラストで黄色で安心する」とおっしゃっている。
真言くんは、もちろんこのことは知らないだろう。
ただ、ブラウンの音楽性を受け取り
新たなる自分のメロディとリズムを
奏でたのだ!

ラボ・ライブリーの音声録音は
基本的には英語も日本語も
スクリプト、すなわち
台本を用意して
それを読んでもらうのだが
絵本作品の場合は、
テストでは直接絵本を読んでもらう。
やはり絵本の絵がもつ意味や
温度や音楽性などを
感じとった身体から出てくる声で
録音したいのだ。
声は「喉」から出てくるが
「ことば」は身体と心から
生まれてくるのだ。

このアスビョルンセンは元々は
自然科学が専門だったが
グリム童話を読んで、
ノルウェーのけわしくも美しい自然が生み出した
妖精たちが活躍する物語、
そこに生きる人びとの心と知恵の話を
ノルウェーのことばで
子どもたちに伝えようと考えた。
そして、その仕事はノルウェーの国語の
純化という大きな役割を果たした。

アスビョルンセンは1885年、
73歳で、故郷であるクリスチャニアで亡くなった。
このクリスチャニアは
現在では「parallel turn」と呼ばれる
スキーを平行に揃えて回転する技術の
名前でもあり、
ノルウェーの首都、オスロの古名である。
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