MISSING HOOK |
12月06日 (水) |
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ファイナルがおわり、ずいぶん寒くなってしまった。シンポジウムでは、午前中のニコルさん鈴木先生のお話から、ラボっ子たちの自然の中での経験、交流の中で育つ人間性が描き出されていた。午後は、各先生方がラボの教育力に迫ろうとしていたが、いわば、美味しい畑の作物をみて、部屋の中からその作り方を考えているような感じがした。その作物には、言葉と物語と交流、そこに経験と惜しみない愛情が注がれている。そだてているのは、子どもたちと共に成長を遂げてきた達人たちだ。パネルディスカッションに、なぜ、テューターとラボっ子あるいは学者でないOBがいなかったのか、と思う。そして、テーマ活動の発表があれば、一目瞭然でよかったのに、と思う。
子どもを産んで育てるとき、はじめから、やり方がわかっていたわけではない。教育理論の論者が育てているのでなくても、子どもの成長を見ながら、自分も育てられているのだし。
ラボのはじめの頃、60年代に、小さな子どもに英語をさせようなんて親はインテリが多かった。ラボも英語教室だった。それで行詰まって物語が導入されたが、まだ、教科書のように行うところが多く、「ラボのおはなしをマンガを読むように(勉強ではなく)楽しみたかったのに」といってやめていく例もあった。こうした中で、お話のすばらしさと子どもたちの元来の性質がラボの活動を変えていく。はじめは劇を一生懸命やるという形だった。主な役やセリフが長ければ、名誉に感じ、大道具小道具衣装も大変な物で、大きな発表会となると大型トラックで搬入したほど。それがやはり、必要に迫られて、身体で表現することにかわっていった。事務局が、行き当たりばったりに導入したというより、全国のラボっ子の活動がラボ全体を成長させていったのだ。
テーマ活動が実現できているパーティは、発表会・交流会などでそうでないパーティや地区を啓発した。高校生大学生のラボっ子が誕生し、ダイナミックな活動が展開されていった。ラボっ子の数も増え、テューターも増え、英語教室という殻を脱皮したのが10周年の頃。インテリ層だけではなくなったかわりに人間育成というラボの醍醐味が生まれたのだと思う。国際交流・国内交流、同世代、異年齢で行うテーマ活動のおもしろさ、だんだんに物語の精神性が蓄積されてくる実感、ことばのせかいそのもののおもしろさ。
テューターたちは、見守ってくれていた。全国に話せる、有名な、あるいはおもしろい先生たちがいっぱいいて、事務局員も若くて、新しいことを作り上げていくんだという実感に湧いていたと思う。ラボっ子たちは、自由に、自分たちの目標を語り、実現に向けて努力したし、非常な達成感があった。パーティ内外のいろいろな交流をとおして、自分の力の使い方も覚えたし、本当に出来ないことはないと思っていた。「地区のラボっ子が仲良くならなきゃ」「合宿をしよう」であっというまに100人もの中高生が一軒のテューター宅にあつまり、玄関までごろ寝。
あるいは、3週間でスペイン語のワフ家をパーティ全員で発表した。夏休みにピーターパン全幕をそれぞれ4ーHをいれて発表したり、テューターが国際交流で留守の間に40人連れて黒姫に行ったり、会員を増やして「100人パーティ」にしたり。
それでも、感じ方はいろいろ違うので、ラボのことを理解しない人に出会うたび、残念な思いをしたし、それがラボ内部であったりすると、本当にがっかりした。触発するために各地をキャラバンして回ったりし、まあ、元祖キャラバン隊だね。「ラボまじめ」ゆえに悩んだり。
あまりにもラボを一生懸命にやったので、ちょっと疲れたが、長男が生まれて、「やはりこの子もことばと物語と交流のラボで育てたい」と思った。私が経験したこともそうでないことも、彼が彼なりに経験していくだろう。
広場とコンサートの前後、フックに会った?私の長男。かのジェイムズ・フックは、母親からパブリックスクールにいれられたんだよね。母親の強い影響力があるあたりも、似てるでしょう?彼もこれから、彼なりに羽ばたいて欲しいんだけど、ね。
そうそう、OBOGといういい方、アメリカではしません。卒業生という意味では、アラムナイalumniといいます。私はこのいい方が好き。4-Hアラムナイとか、どこどこハイスクールのアラムナイとかいう。そのスピリットをしっかり受け継いでいる者をさすことはいうまでもないが。ついでにいうと、「ベテラン」は退役軍人、つまりもうその専門職にはないリタイヤした人のこと。だから「ベテランテューター」というのは、テューターを勇退した人のことになってしまいます。日本でいう「経験のある」という意味ならexperienced あるいは with a lot of experience をつかう。
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Re:MISSING HOOK(12月06日)
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古ギャルさん (2006年12月08日 20時44分)
ふむ、フム、なるほど…
楽しく読ませていただきました。
カトリーヌさんだから書けることですね。
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Re:MISSING HOOK(12月06日)
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ちこらんたんさん (2006年12月09日 10時06分)
40周年イベント、お疲れ様でした。
とても有意義でしたが、カトリーヌさんの日記を拝読して、ふむふむと
また考えさせられました。
今「ピーター・パン」に取り組んでいますが、フックのことが気になっ
ていたので、ちょっと教えていただきたいのですが・・・
「あのジェイムズ・フック船長?」ってジョンが聞きますが、「どのフ
ック船長?」って私は思ってしまうんですね。
私が無知なのかもしれないですが、イギリスでは子どもでも知っていて
有名なのでしょうか・・・
「ウッ、どんなやつ?」
でもしるこサンドは知っています。
中部限定品だったんですね。
次回どこかでホームステイする時はお土産に持っていこうっと。
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Re:MISSING HOOK(12月06日)
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keikoさん (2006年12月09日 13時17分)
激動の毎日をすごしていらっしゃるカトリーヌさんだからこそ、こうい
った感想をもてる余裕があるのかもしれませんね。
「合同練習」ではなく「合同パーティ」でしょ、と言葉にうるさい方た
ちが平気でOB,OGという言葉を使うのに抵抗感がありました。摩擦
をさける身にとっては、MY HPで、OB、OGと使っておりますが、さっ
そくOB,OGはやめようと思います。
しるこサンドは、あんこ系が苦手ですので、あまり食べたことがないの
ですが、さすがにその存在は知っています。(三重県人ですが。)
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Re:Re:MISSING HOOK(12月06日)
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カトリーヌさん (2006年12月09日 17時56分)
ちこらんたんさん
「かのジェイムズ・フック」「あのジェイムズ・フック船長?」と言わせ
ているのは、「おなじみの」という感を出すためでしょうね。フックとは
もちろん大航海時代、オーストラリア大陸発見で有名なクックのパロディ
です。イギリスの権益のために働く、つまりクックの主な仕事は、スペイ
ンやポルトガルの船を襲って、新大陸からの戦利品をぶんどることでし
た。エリザベス1世こそが、当時の海賊の親玉です。
それとバリは、ピーター・パンのストーリーを一気にかきあげたのでは
ないのです。そこら辺を研究していくと面白いですよ。まず、ピーターと
いう赤ん坊の男の子がなぜ出現したのか、「小さな白い小鳥」「ケンジン
トン公園のピーターパン」を読んでみてください。それから、劇作家であ
るバリは、ピーターの年齢を海賊と決闘させるために少し引き揚げて
「ピーターパンとウエンディ」を登場させるのですが、これが、毎年のク
リスマス公演の度に書き換えられていったものなのです。日本で児童文学
として出ているのは、「ピーターパンとウエンディ」ですね。「悪者」で
あるはずの海賊、その船長フックがなぜあんなに魅力的なのか、そこが成
功の秘訣でしょう。いうまでもなく、ラボっ子たちの心を捉えて放さない
でしょう?
フックが魅力的なのは、悩める存在だから、私は思っています。フック
は「花を愛していた」し、母親の重圧?から未だに解放されないのです。
手下たちには理解も共感もされないフックの孤独。なのに、ピーターが小
気味よくその悩みをけとばし、超越していくから、余計にはらがたつので
すよね。ピーター・パンのお話が、大人にも子どもにも魅力的なのは、
ピーターとフックがひとつの円環的存在として対峙しているその永遠性で
すね。
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Re:Re:Re:MISSING HOOK(12月06日)
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ちこらんたんさん (2006年12月09日 23時38分)
カトリーヌさん
丁寧な解説をありがとうございます。
フックがクックのパロディとは、知りませんでした!
>エリザベス1世こそが、当時の海賊の親玉です。
すると、4話で出てくる「この船ではそうはいかん(国王くたばれという
ことになっている)」というのも、そのあたりを意識しているのでしょ
うか。
「ケンジントン公園のピーターパン」は、先日ラボママが見せてくれま
した。
「ピーターパンとウエンディ」は、なんとこの前図書館の不要図書コー
ナー(市民が、自分の要らなくなった本を置いていくところ)にあった
ので、ウッソー!いいのぉ?と思いながら持ち帰りました。
「小さな白い小鳥」は知りませんでした。探してみます。
>劇作家であるバリは、ピーターの年齢を海賊と決闘させるために少し
引き揚げてを登場させるのですが、これが、毎年のクリスマス公演の度
に書き換えられていったものなのです。
だから、歯が生え変わっていない??いったい何歳なの?と違和感を持
つのですね。
>「悪者」であるはずの海賊、その船長フックがなぜあんなに魅力的な
のか、そこが成功の秘訣でしょう。いうまでもなく、ラボっ子たちの心
を捉えて放さないでしょう?
本当に、フックには強烈に引き寄せられますね。
切なくさえ感じてしまいます。
>ピーター・パンのお話が、大人にも子どもにも魅力的なのは、
ピーターとフックがひとつの円環的存在として対峙しているその永遠性
ですね。
本当にそうですね。
最近、続編が出版されましたね。読んではみたいけど、どうなんだろ
う?とちょっと心配でもあります。
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